忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

社会全般

敵であれば傷つけてよいのか?

「お前の敵は誰なんだ」 「よく聞けトルフィン お前に敵などいない 誰にも敵などいないんだ」 「傷つけてよい者など どこにもいない」 幸村誠『ヴィンランド・サガ(2)』 35歳を超えて敵がいないということは、人間的に見込みがないことである 野村克也 唐突…

悪いものを消し去れば良い世界になるわけではない

宗教・文化・風習・職業、その他様々ですが、社会で何かしらの問題が起きた際には必ずそれを禁止しようとする見解が広まります。 もちろん悪いものをそのまま維持することは不適切なことです。誰もがより良く生きることができるよう社会を発展させたいと思う…

複雑な物事を複雑なまま捉えるためには哲学が必要ではなかろうか

とても残念ながら、世の中はとても複雑なものです。無数の人間が様々な思惑を行使するこの世の中は表面をなぞって単純な方程式を組み上げたとしてもそれが現実を的確に写像できることはありません。現実は解の無い複雑なn元m次の連立方程式です。 例えばニ…

不満は逐次解消していくことが肝要である

生物は人生において満足を追い求めます。様々な欲求を満たし、足るものを得ることこそが多くの場合で幸福への道です。それは湧き上がる欲求を可能な限り満たし続ける加算式の方法でもいいでしょうし、あるいは湧き上がる欲求そのものを抑制して満たしやすく…

エリートこそ努力と献身を示す必要がある

政治家や活動家、学者や医者など一部のエリートは世間的な批判を強く受けることがあります。それは強固な社会的属性を持っている人へ対してのルサンチマンや反抗心で説明が可能かもしれませんが、時に批判の声が社会の大部分からあがることもある以上それだ…

悪人だとしても、悪しざまに罵ることは正義のすることではない

政治や思想などイデオロギーに関連する論争にて、対立する側にいる相手が過失や悪事をしでかした場合は暴力的な言葉をもって叩いてもいい、そういった傾向を持った人がSNS上などで観測することができます。政敵や論敵のやらかしを悪しざまに罵る人はあちらこ…

その犠牲者こそが少数派なのだ

「大義の為には犠牲はつきもの」 「目的の為には多少の犠牲は仕方がない」 物語に限らず現実でも稀に見掛ける定型句です。明白に言葉にしないまでも行動や態度で示していたり、自らの目的を達成するためには犠牲はやむを得ないと内心で考える人は居ます。 人…

格差はそれそのものが問題なのか

世間的に格差は問題だと言われることが多いでしょう。実際、格差は差別の温床であり、それが問題視されることは不自然なことではありません。 ただ、直接的に格差を否定してその是正を図るのであれば結果の完全な平等が必要になります。結果が平等でなければ…

実感と数値のどちらを重んじるか:悲観的な理想主義者と楽観的な現実主義者

「科学技術は著しく発展しているが、人々の精神の発展は遅れている。人類は過去から変わらず野蛮で愚かだ」とした言説を時々見かけます。特に世界のどこかで戦争が勃発すると散見するようになります。 そう言いたくなる気持ちも分かりますが、実際はそうとも…

敵と味方・正義と悪・白と黒の線引きは極めて自動的で、そして誤りである

何かしらの対立構造が生じている際、片一方の批判を行うと自動的にもう片一方の味方だと認識してしまうクセが人間には存在します。それは例えばAとBの対立構造において「Aを批判するということは、君はBに与するんだな」とするような認識です。 ただ、残念な…

他と比べて変化を促すことも、一種の同調圧力

先週はタイへ出張に行っていましたが、日本を出国する時よりもタイを出国する時のほうが手荷物の中身を精査されたことから、保安検査は日本よりもタイのほうが厳しいと感じました。過去にはインドネシアへ行った際にも同じ感想を持ったことがあります。 恐ら…

ニュースを見ることの価値と意味

どっと疲れが出たのか、体力も気力も尽きて思考が働かない休日を過ごしていました。常日頃であれば興味の有無を問わずに国内外のトップニュース程度は見ているのですが、それすら見ていません。そもそも海外出張中にニュースをほとんど追えていなかったこと…

本当に「安心」したいなら頭を使わなくちゃ

少し厳しいことを言う回。 「恐怖」も「安心」も売っている時代 このブログでも度々述べてきていますが、良い情報よりも悪い情報を選好してしまうのは動物の本能的なものです。死んでしまってはどれだけ好物があったとしても食べられないのですから、生物が…

デマ情報の対策として「あわてんぼうさん度合い」を採点するのはどうだろう?

昨今、世界中でデマ情報への対策が検討されています。 デマ情報はいつだってセンセーショナルで拡散されやすいものです。それに対してデマを訂正する正しい情報は平凡でつまらないことが多いためなかなか拡散しません。よって話題性の強いデマ情報だけが長い…

ハンマーの振いどころを見極めることと、ハンマーを持つこと

英語のことわざ 「If all you have is a hammer, Everything looks like a nail」 (ハンマーしか持っていなければ、全てが釘に見える) は様々なニュアンスを含意している至言だと思っています。 このことわざからはいくつもの教訓を導くことが可能です。 ◆特…

手段が目的を変容することへの懸念

物事を変革する場合に対して、当ブログでは時々、いえ、度々と言える頻度で「抵抗勢力を作るな」「対立意見と争うな」「攻撃をするな、協調を取れ」と述べてきています。 ざっとですが言及している記事を確認してみたところ、そこそこの数です。 敵を減らす…

社会運動は危機感によって駆動される:危機感の取り扱い方法

何に対して恐怖を抱き、危機感を感じるかは人それぞれです。 恐怖は遺伝的要素、すなわちセロトニントランスポーター遺伝子の型の影響が強く、たとえ同じ情報を得ていたとしてもその情報に対する恐怖の感度は人それぞれ異なります。 この感度差は優劣や善悪…

お金の話を無視してはいけない

社会問題や議論において、常に留意されるべきこと。 お金は大切 お金の話を露骨にすることはあまり上品ではないとする社会常識があるかと思います。 もちろん過度にお金に傾倒すると汚職や拝金主義の温床となりますので、お金を中心に物事を考える必要はあり…

穏やかなディベートは良い練習になる

日本人は討論(ディベート)が苦手と言われています。 学術的な数値データは存じませんが、確かに日本では欧米と比較して文化的に討論を避ける傾向があると考えられており、教育でも討論をあまり重視していないことは事実かと思います。 コンテクスト(背景・文…

社会問題への意見表明において「丁寧さ」を侮ってはいけない

どのような社会でも、少なくとも民主的かつ自由主義の集団であれば全員が一丸となって同一の意見を持つことはまず考えられず、必ず集団内での意見対立は生じます。紋切型の雑な切り口を援用すれば、例えばアメリカでは伝統的価値観を重視するコンサバと先進…

規範意識の変化とコミュニティとの関係性

ちょっとした思考実験として、道徳や倫理のアップデートに関する思索をしてみます。 「ポリティカル・コレクトネス」「文化盗用」「Woke」「ルッキズム」など様々な新しいアップデートされた規範が日本に限らず世界中のSNSで謳われています。「人々はこれら…

民主的な話し合いの心得と、闘技的思考の排除

話し合いは多義的なニュアンスを持つ日本語ですが、基本的には議論や会話を意味します。 そして議論や会話とは、言い争いや討論とは違って闘争的ではない言葉です。 ただ、残念ながら「話し合い」のことを「果し合い」だとでも誤解しているのではないかと、…

学ぶことによってなぜ心が柔らかくなるのか

このブログでは教養について時々取り上げています。 教養を意味する英語Culture(カルチャー)は多義的で、教養の他にも『土地の耕作』の意味を持っており、田畑の土を耕して柔らかくすることと同様に知識や教育によって心の畑を柔らかくすることが教養の意味…

信念に固執することは「ハンドルの無い車」に似ている

世間では強い意志や固い決意、言い換えれば信念を高価値のものとして取り扱うことが多々あるかと思います。学校では結果だけではなく意志や気持ちといった心の態度も評価の対象となるものですし、物語の主人公は多くの場合で強い意志と固い決意を持っている…

「お題」の持つ力と問題意識の差異

今世紀のお題「国家の統一、世界政府の実現は可能か」 ・・・いえ、その、はてなブログさんの「お題」的な感じで書き始めてみようかな、と。ちょっとした出来心のジョークです。 とりあえず今世紀中に世界政府を樹立することは無理だとは思います。経済・資源・…

「人様に迷惑をかけるな」について思うところ

日本で伝統的に善いとされる考え方の一つに「人様に迷惑をかけるな」があるかと思います。 昨今ではこれに対して否定的な見解も多く見られますが、個人的にはそこそこに妥当な考え方ではないかと考えています。 健康で余力のある人間の戯言ではありますが、…

自らの人生を生きる上での教養の必要性

教養とは知識や教育によって心を耕して柔らかくすることです。豊かで柔らかい心を育むことで「我」の枷を外して様々な視点を持つことができるようになります。 知識によって耕作地を広げて豊かな草木を育んでいない心は、寒々と荒廃したとても窮屈なものです…

ハラスメントの主張は度が過ぎない程度に

私は人とお酒を呑むことが好きなので職場の飲み会も好きなほうですが、お酒が嫌いであったり、公私をしっかり分けることを好んでいたり、雰囲気が好きではなかったりと、世の中には職場の飲み会を嫌いな人もいるかと思います。 誰にだって好き嫌いがあること…

ヘビィなテーマをなるべく軽く話してみる実験:入管法改正と特別在留許可

昨日の記事は軽い話をすると言いつつ結局はまったく軽くないどころか説教臭い話になってしまいました。どうにも無駄に生真面目で困ります。 記事を書くからには何かしら意味のあることやタメになりそうなことを一つは記事に盛り込みたい、そのためには事実や…

知識を活かすことは、何もビジネスには限らない

「知識は持っているだけでは駄目で、活用しなければならない」 このような言説を時々見かけるかと思います。 この言説自体はとても正論です。役立てていない知識は持っていない知識と同義とさえ言えます。 ただ、この正論の曲解とまでは言いませんが、「活用…