忘れん坊の外部記憶域

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仕事ができない若手社員に関するアンケート[コミュニケーション編]

 仕事ができない若手社員に関するアンケートの続きです。意外と書きたいことが多くて長くなっていますが、これで最後です。

 コミュニケーションに関する項目は以下です。

3:報連相がない、コミュニケーション力が低い

7:挨拶・礼儀・マナー、勤務態度(公私混同、遅刻等)

 

 報連相やコミュニケーションの量・質についての最大の原因は互いの認識違いにあります。若手は「自分は充分に報連相をしている」と考えていることがあります。自分なりに必要だと思ったことは伝えているし、相談しているということです。

 

 この認識違いは「説明」と「説得」の違いを学校では教えていないことにあります。

 学校では学生はお客様ですので、学生から何か発信をしなくても顧客満足度を上げるために学校側から様々なサービスが提供されます。不満や不平等についてなど学校からヒアリングされたことに対して、学生は自分の思いを「説明」するだけです。

 若手が報連相で行っているのはこの「説明」です。

 しかし社会人になると「説明」だけでは足りないのです。社会においてこちらはお客様でなく対等です、それどころか場合によっては相手がお客様です。社会や会社での判断基準や評価は相対的であり、周囲に依存します。若手がどう考えたかはまったく重要ではなく、それに対して周囲がどう考えたかが基準となります。

 ですので、

 「私はこう思っています。」

 「ふーん、だから?」

となるのは当たり前の話なのです。

 社会人に必要なコミュニケーションは「説明」だけでは不足で、「説得」が必要です。相手に利があることを理解してもらい、納得して、行動してもらうところまでいけば初めてビジネスコミュニケーションが取れているといえます。

 

 では、「説得」とは具体的になんでしょうか。

 これは「理解」「感情」「利得」の3つで表すことができます。

  • 理解:論理的に理解をしてもらうこと
  • 感情:相手の感情を害さないこと
  • 利得:利害計算がプラスになること

 

 「理解」に関しては当然のことで、説得は合理的かつ論理的である必要があります。

 子どもがお菓子売り場で駄々をこねればお菓子を手に入れることができることもあるでしょう。しかし社会ではただ欲しいとだけ言っても投資を承認する上司はいません。

 新しい設備を買って業務効率を改善することを例とすると、どのような設備か、それをどんな業務に用いるのか、なぜ新しい設備が必要なのか、といったことを相手が理解できるように伝える必要があります。

 ここで重要なのは相手が理解できることであり、どれだけ論理的であろうと相手に伝わらない説明では何の意味もありません。技術的に深い内容であれば噛み砕いて説明し、伝わっていない点については補足し、相手が理解できるまでフォローしなければいけません。

 新しい設備を買うことにどれだけ合理的かつ論理的な理由があっても相手に伝わらないとしたら、それは納得させることまでできていない自身のプレゼン力の不足です。度々となりますが仕事とは成果を出すことです。設備を購入して業務を効率化するという成果を出せなければ、それは相手ではなく貴方の評価が下がることとなります。

 

 次に「感情」です。相手も人間ですから嫌だと思ったことは積極的にやりたくありません。説得をする際は相手の感情を害さないように、可能であれば親近感を持たせて同じ方向性を持てるように話す必要があります。これは特に営業職の人間ならばよく分かっていることで、「感情」がこちらを向いていない相手にはどれだけ利益や必要性を訴えても相手の耳には入りません。

 それこそ、

 「この人は低血圧だから午前中は機嫌が悪いので相談事は午後にしよう」

 「あの人は資料での説明よりも口頭での説明を好むからそうしよう」

など相手に合わせた気配りも必要になります。自身の我儘放蕩に交渉事を進めても別に構いはしませんが、それでは成果を出しにくいことは重々承知しておきましょう。

 

 最後に「利得」で、これは説明するまでもなく利益にならないことには誰も動いてくれません。目先の損益のみでなく、将来的な利得や投資効果、目的への貢献度を具体的に説明し、総合的に利害がプラスになるよう調整する必要があります。

 

 つまり、説得とは政治です。政治とは様々な意味を持つ多義語ですが、その一つとして「利害関係者の価値を相対化し、利害を調整して意思決定をすること」ことが挙げられます。こちらにはこちらの利益が、あちらにはあちらの利益があるのは当然です。無限のエネルギーや無限の食糧などがあれば政治などは不要ですが、現実はそうではない以上、有限のリソースをどのように分配するかを調整する必要があるわけです。ビジネスでも同じで、何かを進めるために他者を説得する場合には、我々が民主主義の徒である以上政治を行わなければいけません。

 

 

 若手と会社のコミュニケーションで問題となりやすいことの一つが「評価」です。

 [私は頑張っている」VS「成果が出ていない」というやつです。

 仕事を完全に定量化して評価することは不可能です、仕事は複数人で進めたり難易度の差などもあります。利益という成果を出すことは明確な尺度ではありますが、それでは利益を出さない総務部門などはどうすればいいのかということが問題になってしまいます。

 そもそも正しい評価というもの自体が幻想です。評価が相対的である以上、万人が納得する評価というものは存在しません。自分の評価は他人がするものだということを若手はもっと理解する必要があります。

 つまり、社会人には「自分がやった成果を相手に伝えて理解してもらう」というスキルが必須です。自分はこれだけやっていると「説明」だけされても相手には伝わりません。客観的に相手に伝わるよう、やった成果を説明して「説得」することまでが社会人の仕事です。面倒ですが仕方がありません。

 

 

 新入社員の挨拶や礼儀、マナーが適切でない理由は簡単で、その意味を理解していないからです。

 確かに社会での評価基準は成果を出すことですが、その成果を出すために他者と協業しなければいけないことをまだ分かっていません。マナーは相手を説得する際の「感情」を円滑に行うためのツールであり、それができていなければ相手を「説得」することができず、ひいては成果の阻害要因になるということを上司や先輩が教育してあげなければいけません。

 しかしただやれと言っても意味を理解していなければ人はなかなか動きません、ここは上司や先輩が社会人として培ってきた「説得」の能力を見せるべきところです。若手を「説得」して礼儀作法を身につけさせましょう。