気候変動と脱炭素は昨今のトレンドです。予防原則に則った予防的措置には一言ありますが、費用対効果が現実的な範囲であれば充分に行うべきだということには同意します。
しかしながらいたずらに気候変動の恐怖を煽るようなマスメディアの報道はあまり好みではありません。やっていることがノストラダムスの大予言やY2K問題のときと同じです。正しく両論を併記した上で見解を述べて欲しいものです。
今回はそんなマスメディアの報道の内、よく話題に上る台風と気候変動の関係について少しまとめてみます。
台風は増えている?
メディアでは気候変動の影響によって台風が増加し、激甚化しているとよく報道されています。
しかし気象庁の発表している「日本の気候変動2020」では次のような見解です。
【観測事実】
➤台風の発生数、日本への接近数・上陸数に長期的な変化は見られない。
➤台風の強度に長期的な変化傾向は見られない。
気象庁 Japan Meteorological Agency
また国立環境研究所の研究者の方も科学者としての誠実な見解として、まだ不明瞭で研究中であることを説明してくれています。
温暖化の影響 Q2 台風やハリケーンによる被害の増加は温暖化の影響? - ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター
気象庁のデータ
台風の資料については気象庁が公式サイトに上げてくれています。
発生数と上陸数をグラフにしてみましょう。
発生数、上陸数ともに増加傾向は見られません。
次に台風の順位を見てみましょう。
これらのデータから見るに、1960年前後のほうが台風の発生数や上陸数は多い傾向にあり、強い台風が多かったことも分かります。年毎の変動が大きく、長期的な傾向は見られません。
データから分かること
つまり、今のところ「台風が増加し、激甚化している」という言説は適切ではありません。もちろん将来的に温暖化が進むことでそのような傾向となる可能性は高いと研究者は述べています。しかしそれであれば「台風が増加して激甚化する可能性がある」と言うべきで、まるですでに起きているかのような報道の仕方は正しくありません。そのような事実に基づかない報道で恐怖を煽るようなやり方は好みではないです。
台風については国立環境研究所の科学者の方が述べているように、人間活動の寄与はまだ意見が分かれており、観測は不十分で信頼性は低い状態です。さらに研究が進んで確信度が高まるまでこれについては政治から科学の世界に戻すべきです。
メディアの本音?
メディアやジャーナリストが過激な表現を用いるのは気候変動に人々の関心を向けるためであり、善意からやっているのだと期待してはいるのですが、2か月前にアメリカのジャーナリストがすっぱ抜いたCNNディレクターのコメントをつい思い出してしまいます。
(抄訳・意訳)
チェスター(CNNのディレクター)
「準備しておくといいよ、CNNにとって気候変動は次のCOVIDだ。」
ジャーナリスト
「気候への恐怖のような…そういったものになると思いますか?」
チェスター
「ああ、恐怖は売れる。」