忘れん坊の外部記憶域

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日本人論の否定~理系の屁理屈

 以前の記事でも書きましたが、「日本人は○○だから」という日本人論を私はあまり好んでいません。

 別に人種云々みたいな政治的・イデオロギー的な話ではないです。私は日本が好きなので多少の贔屓目があるのは否定しがたいところですが、どちらかというと根拠が無い論は好まない、という理系的な屁理屈が理由です。

 言語学や人類学、比較文化学のような学問的な比較であれば根拠があるので特に否定的には思わないのですが、ニュース記事で書かれているような根拠やデータの無い日本人論にはついツッコミを入れたくなってしまいます。

根拠が欲しい

 例えばYAHOOニュースで「日本人は」と検索すると、この記事を書いていた2021年7月7日に投稿された記事だけでも次のような「日本人は○○」が見つかります。

  • 日本人は真面目で、本当に働く。
  • 日本人は目的と手段をはき違えることがままある。
  • 現代の日本人は食事が西洋化し、カロリー過多になっているうえ、精製や加工された食品を食べることが多い。
  • 日本人は安価で良質な商品を買い求める傾向が強くなっている。
  • 日本人は直接的なネガティブフィードバックを世界で最も嫌う民族と言われている。

 これらのうち、実際に根拠があるデータを持った情報はどれだけあるのでしょうか。ほとんどはただのバーナム効果としか言えないようなものばかりです。ビジネスマン風に言えば、「エビデンスは?」という感じです。理系としては根拠となるデータが無いものを信用する気にはなれません。

実際はどうか

  • どこの国の人だって一定数は真面目で良く働きますし、当然サボる人もいます。
  • 目的と手段をはき違える人は世界中のどこにでもいます。
  • 食事が西洋化したからカロリー過多になっているわけではありません。そもそも現代人はおよそ一日2000kcal、身体活動レベルが高い場合は3000kcalあたりが摂取カロリーの目安と言われていますが、昭和以前は電化・機械化がされていなかったために人々の運動量は多くその分カロリー摂取量も多かったのです。30年以上前の論文から引用すると、例えば昭和の農家は農繁期には4000~5000kcalを摂取していました。現在は3000kcalほどです。平安時代の大工は4000kcal以上を摂取しており、ほとんど労働をしない貴族でも2500kcal以上を摂取していました。現代人のほうがよっぽどカロリー摂取量が少なくなっています。
  • 昔からどこの国の人だって安価で良質な製品が大好きです、高価なものを欲しがるのはバブル景気のような成長期のみだけであり、期間的にはそちらのほうが特殊な時期です。
  • ネガティブフィードバックを世界一嫌う民族、これには唯一根拠があります。世界一かは分からないですが、ビジネススクールINSEADの客員教授であるエリン・メイヤーが著者の「THE CULTURE MAP(邦題:異文化理解力)」において、各国の調査結果から日本人は他国と比較してネガティブなことを「間接的に伝えて欲しい、直接言わないで欲しい」と望むことが分かっています。

結論

  確かに「日本人は○○だから」という文章は共感を得やすくあります。しかしながらほとんどの場合それはバーナム効果に過ぎません。実際に日本人がそうであるということではなく、日本人の読者に向けて伝える場合に読者を引き込むための便利な言葉というだけです。「日本人は」のほとんどは「人間は」と置き換えてもまったく問題がありません。

 いや、分かってはいるのです。これはそんな堅苦しい話ではなく星座占いのようなものだということは。信じたい人が信じればいい話ではあるのです。これを否定するなんて所詮は理系の屁理屈であり、余計な話なんです。

 ただ、どうにも腑に落ちないのです・・・