忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

暑い!温暖化のせいだ!と叫びたいが・・・

 ここ最近、照りつける日差しが強くとにかく暑いです。こんなに暑いと地球温暖化のせいだ!と叫びたくなるのですが、まあせっかくなので気象庁のデータを見てみましょう。何がせっかくかは分かりませんが、暑くて脳があまり働いていませんのでこのまま続けます。

気象庁による測定データ

 気象庁のwebサイトにある知識・解説からグラフを引用します。

気象庁|ヒートアイランド現象と地球温暖化は違うのですか?

 グラフはここ100年ほどの【大都市】と【都市化の影響が比較的小さいとみられる15地点平均】の年平均気温が並んだものです。また比較として【日本近海で平均した年平均海面水温】の変化も載っています。

f:id:external-storage-area:20210727191526p:plain

 1901~1930年の30年平均値からの偏差が縦軸ですので、およそ100年前からどのくらい温度が上がったかが分かりやすくなっています。横軸は年を表しており1901~2014年までのデータです。

 全体的に右肩上がりになっていることがパッと見て分かります。ここ100年での平均気温の上昇は間違いないといえるでしょう。

都市部の平均気温とヒートアイランド現象

 東京はこの100年ほどで3℃も平均気温が上がっています。エアコンが必須になるわけです。気象庁では観測地点を中心とした半径7km円内における人工被覆率(建物用地や幹線交通用地などの占める割合)を都市化率として定義していますが、東京の都市化率はこの100年で92.9%となっています。90%以上がビルや家屋、アスファルトやコンクリートのような人工物に置き換わったということです。

 ビルには風を弱めたり地表面からの放射冷却を弱めて地表面に熱を籠らせる働きがあります。アスファルトは保水力が弱いため水の蒸発による熱吸収を阻害します。また人工被覆物は熱容量が大きいことから夜間の気温上昇を招きます。人口が増えればその分エアコンや車による排熱が増えます。これらのような都市化による気温上昇を総称してヒートアイランド現象と呼びます。

 大阪の都市化率は92.1%、名古屋の都市化率は89.3%と東京に近く、同様の傾向として両都市とも2℃前後平均気温が上昇しています。

都市化していない地点と海の温度

 都市部に対して、都市化の影響が比較的小さいと見られる15地点の平均気温はこの100年でおよそ1℃上昇しています。15地点の都市化率は平均で16.2%です。15地点は網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、宮崎、多度津、名瀬、石垣島と地域的な偏りが出ない様に選出されています。

 日本近海の海面水温もおよそ1℃上昇しています。この海面水温の変化は都市化の影響が比較的小さい15地点の平均気温と変化傾向がほぼ同様であることから、都市化の影響、つまりヒートアイランド現象を除いた地球温暖化による正味の気温上昇分と考えることができるでしょう。この値はIPCCの報告にも近似しています。

ヒートアイランド現象と地球温暖化に関する所感

 つまり東京においては3℃のうち2℃はヒートアイランド現象、1℃が地球温暖化による気温上昇です。大阪や名古屋では1℃がヒートアイランドで1℃が地球温暖化です。

 「暑い!温暖化のせいだ!」と言っていいのは都市化率が低い地域だけかもしれません。東京にお住いの方は「暑い!1:2の割合で温暖化とヒートアイランド現象のせいだ!」と言う方が正確な表現となります・・・どうでもいい話でした。

 地球温暖化については国際的な問題となっていますので世界中で対策が検討されていますが、ヒートアイランド現象については都市個別の問題として大きな議論になっていません。しかしながら日本の主要都市、札幌、仙台、新潟、名古屋、東京、横浜、京都、広島、大阪、福岡の平均都市化率は70.5%に達しており、もはや個別の問題ではなく全国的な課題となりつつあります。この100年で都市部の気温に大きな影響を与えているヒートアイランド現象について、対策にもっと予算を投入すべきだと暑さで茹った頭で愚考する次第です。