忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

会話のキャッチボールとその派生形

 会話のキャッチボールという表現は実に言い得て妙です。様々な例え話に広げることができます。私が職場で多用しているため、簡潔に紹介してみます。

会話のキャッチボール

 キャッチボールに求められるのは相手の受け取りやすいところにボールを投げることと、そして相手のボールを適切にキャッチすることです。必要な情報を必要な表現で必要なタイミングで投げて、それを相手が適切に受け取れていればキャッチボールと言えます。会話のキャッチボールが成立しているということは打てば響くような会話ということであり、大変に効率的かつ能率的な状態です。特にビジネスにおいては常にこの状態で会議や情報交換が為されることが望ましいものです。

 素っ頓狂でズレた回答はコントロールが悪い、必要な情報が不足している場合は肩が弱いなど、キャッチボールの例えは使い勝手が良いです。

会話のドッジボール

 明らかに野球ボールよりも大きいボールを互いに投げ合う状態です。必要な情報を取れる位置に投げてはいるのですが、目的は明らかに相手の取り損ねです。ボールには必要な情報以外の感情がこもっており、当たり所によってはダメージを受けることもあります。場合によっては殺意すらこもったボールを投げ合う様は殺伐としており、とても穏やかな状態とは言えません。ルールは状況によって定まるため顔面セーフとは限らないのが怖いところです。 利害の相反する関係者間のやり取りで頻出します。

会話のトスバッティング

 互いに投げ合う事を放棄し、片方がひたすらボールを打ち、もう片方はキャッチングだけをする状態です。打つ側は相手のボールをキャッチすることはなく、言いたいことを言いたいように打ち込むような一方通行のコミュニケーションです。優れたバットコントロールを持っているプレイヤーであれば相手のキャッチングの指導となるのですが、多くは好き放題言っているだけの場合が多いです。打つ側は気持ちよく会話しているつもりかもしれませんが受ける側は走り回ることになり徒労感を味わうことになります。上下関係があり、上側の人が無頓着で横柄な場合に発生しやすい状態です。

別の物を投げてくる

 キャッチボールをしていたつもりなのに想定外の物が返ってくることがあります。物の種類は多種多様で、ドッジボールやサッカーボール、果てはボウリング球や投げ槍など様々あります。思ってもみなかった物が飛んでくるため受ける側はキャッチするか回避するかを即座に決断する判断力が必要になります。新人や状況の分かっていない上役が意図せずに放り投げる場合がほとんどですが、受ける側としてはたまったものではありません。しかし悪気は無いので責めるわけにもいかないのが難しいところです。とりあえず命に関わるものを投げてきた場合はせめてボールを投げるように指摘してあげましょう。

 なお意図している場合はほぼ間違いなく悪意がこもっていますのでこちらも投げ返す物を考えなければいけません。まあ、穏便に済む程度の物にしておくのが無難です。

ボールをキャッチする気が無い

 投げたボールを取ってくれない、無視してサッカーを始めるなど、もはや会話のキャッチボールをする気が無い場合もあります。コミュニケーションの完全なる拒否です。こうなるともはやどれだけボールを投げても無駄で、決して意味のあるボールが返ってくることはありません。ひどい場合はサッカーに誘ってくる始末です。違うんだ、今やらなければいけないのは会話のキャッチボールであってサッカーじゃないんだ、と嘆くしかありません。このような状態に陥るのは相手が個性的な方である場合に多い印象です。(温和な表現)

余談

 企業が若者に求める能力一位が「コミュニケーション能力」であることを就職活動をしていた時は笑っていました。コミュニケーションなんて誰だって取れるじゃないか、それよりも技術力や知識、大学生活で何をしてきたかのほうが重要だよと。

 今、社会人として私が新人に求めるものは一つです。

【とにかくコミュニケーション能力さえあればいい】

 もう何を差し置いてもコミュニケーション能力を求めます。コントロールが悪かろうが肩が弱かろうが下手っぴであろうが、キャッチボールをしてくれればそれでいいです。別に勉強ができなくてもいいし、技術力なんて無くてもいいです、そんな程度のものは後で教えますから。敬語が下手でも記憶力が悪くても構いません、ゆっくり覚えていけばいいのですから。新人が不足しているのは当たり前だから気にしなくていいんですが、教え育てるには会話のキャッチボールが必須なんです。それさえできれば周りが補ってあげることができます。

 だから後生なので、ボールを投げられたら、ちゃんとキャッチして、"ボール"を投げ返してきてください。