忘れん坊の外部記憶域

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人に教えることは難しい~発表・プレゼン・教育の違い

発表とプレゼンテーションの違い

 発表とプレゼンテーションは類似の扱いを受けることがありますが、実際は明確に異なる概念です。

 発表は表向きに情報を発信することであり、自分主体のものです。相手に情報が伝わったかは問わず、情報を発信することそのものが目的です。

 プレゼンテーションはプレゼント(Present)を語源とするように、[述べる/提示する/伝える]以外にも[贈呈する]という意味があります。プレゼンは発表とは異なり相手主体のもので、相手に情報を伝えることが目的であり、相手にどう情報が伝わったかが重要になります。相手に必要な情報が適切に伝わっていなければそれはプレゼンとは言えません。

教育の難易度

  教育は多義的な広い意味を持つ言葉ですが、読んで字の如く教え育むことであり、情報を伝えて相手を成長させることを目的としています。発表は情報の発信、プレゼンは情報の伝達であるのに対して、教育は情報が伝わるだけでは足りません。それによって相手に内在する素質の発展、技能や技術の向上が達成される必要があります。

 発表には特殊な技能は不要です。言いたいこと、伝えたいことを公に述べるのみであり、ツールも好みのものを使用することができます。

 プレゼンには巧緻なドキュメントの作成や表情、抑揚、声のトーンといったいくつかの技能やテクニックが必要ですがそこまで特殊なものではありません。もちろんAppleのスティーブ・ジョブズを代表例として天才的なプレゼンターが世の中には居ますが、そこまでの技能を一般的に求められることはまずありません。

 教育は相手のレベルや態度に合わせて指導方法を変える必要があることからその技法は千差万別となります。良く言えば教育者の個性を出して臨機応変に対応できると言えますが、悪く言えば鼎の沸くが如しであり最適解が存在しないとも言えるでしょう。数多の教材が巷に割拠していることからもそれが分かると思います。

 よって、いずれも情報を発信する行動ではありますが、教育は発表やプレゼンよりも遥かに難しいものとなります。

企業における教育

  家庭教育や学校教育と同様、企業で行われる教育は企業内教育と呼ばれます。過去に企業内教育の要であるOJTに関して記事を書いていますが、実効的なOJTを実施するのは大変に難しくあります。

  OJTが真っ当に機能しない最大の原因は前述してきた教育の難易度にあります。教育に関する専門教育を受けたことが無いそこらの社会人を連れてきて後輩に教育させるのは、ただ単純に効果に限界があるということです。

 例外はありますが学校の先生には基本的に教員免許が必要です。学童と成人で単純比較ができないことは承知していますが、教育に携わる者に必要なのは資格ではなく免許なのです。資格は技能を持っていることを証明するもので、免許は禁止・制限された行為をすることを許可するものです。すなわち医療や自動車の運転と同様に、本来的に教育は免じられ許された者が行うような難しい行為だということです。

 少子化や団塊世代の退職に伴い企業における知の継承は大きな社会問題となっています。企業はOJTと言う名の教育放棄に走らず、できる限りお金を掛けて教育の専門家を雇って知の継承を効率的に進めるべき、と現場で教育に苦労している下っ端の私は思います。

余談

 私は人に何かを教えるのがあまり得意ではありません。教えることが嫌いではないのですが下手なのです。何が分からないかが分からないですし、どこで躓いていてその場合はどう導けばいいのかという技術が無いため説明が理解されずに終わることがよくあります。その点学校や塾の先生は本当に凄いと思います。学生の頃には先生の大変さが分かりませんでしたが、卒業してから人に教育することの大変さと難しさに気付きました。

 ビジネスシーンにおいての教育であればまず前提として相手の関心を惹く努力がほぼ不要です。何せ相手は業務として受講する意思を持っていますし、前提知識やレベルもある程度は整っています。それに対して学校や塾の先生は一対多数、かつその多数のレベルや関心が非常にばらついている環境でも全員の関心を惹く努力をしており、できる限り全員に理解させようとあの手この手で工夫しています。教育にはそれ専用のスキルが必要なのだと実感するばかりです。