忘れん坊の外部記憶域

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物事の始め方と継続~コンコルド効果を逆手に取る

コンコルド効果とは

 コンコルド効果とは、何かに対して金銭的・精神的・時間的な投資を続けることが損失に繋がると分かっているのにそれまで投資した分をモッタイナイと思い、投資を続けることが止められない状態を指します。コンコルドの誤謬やサンクコストバイアスとも呼ばれるものです。

 一般にコンコルド効果は悪い状況に使われます。大金を使って立ち上げた新商品がまったく売れずこれ以上事業を継続しても採算が取れないことは明確であるのに製造を止める判断をできなかったり、ギャンブルで大金を失ってそれを取り戻そうとさらにお金を突っ込むような状況、つまり撤退・縮小・中止をしても戻ってこない資金や労力(埋没費用、サンクコスト)を考慮に入れてしまい合理的な判断が下せなくなってさらなる失敗を招く場合に用いられます。

物事を始める時にまずは投資する

 コンコルド効果自体は典型的な認知バイアスの一種です。すでに失われたものは進もうが戻ろうが回収できません。進退を決める際は埋没費用を考慮から外して検討することが合理的です。

 しかしコンコルド効果を逆手に取ることも可能です。物事を始める際に大きな投資をしてしまえばいいのです。人にもよりますが認知バイアスによって開始することへの意欲を維持しやすくなるでしょう。つまり自身の内部から発動するモチベーションに頼るのではなく、認知バイアスを外部刺激のインセンティブとして働かせることで行動の開始を容易にすることが可能です。

 例えば運動、毎日ジョギングをしようと思っても継続するのは難しいかもしれません。しかしジムに年会費を払ってしまえば払った分は元を取らないといけないという気持ちが生まれて運動を始めやすくなるでしょう。語学や勉強なども同様です。最初に投資をすることで発生するモッタイナイという認知バイアスがモチベーションの後押しをしてくれます。

 もちろんコンコルド効果自体はただの認知バイアスですので、ふと我に返れば埋没費用は重要ではないことに気付きます。しかし重要なのは物事を始めることは継続することよりも難しいということです。物理現象と同じで、静止摩擦係数は動摩擦係数よりも大きいのです。よってまずは動き出すための補助力としてコンコルド効果を逆手に取るのは非常に効果的と言えます。

継続のコツ

 行動の継続も物理現象と同じで慣性力が働きます。習慣化さえできてしまえば等速度運動によって意志の力無しに続けられるものです。重要なのは習慣化ですがこれは比較的容易です。その物事に没頭してしまえばいいのです。

 人は面白い物事を得意になるのではなく、得意な物事を面白いと感じるようにできています。物事に没頭して延々と続けることでその物事を少しずつできるようになる、つまり得意になってくると次第に面白く感じるようになるのです。面白いことは誰もが好きですし、好きになってしまえば継続・習慣化は容易でしょう。何せ好きな物事なのですから強制しなくても率先して自らやるようになります。よって物事を始める時はまずとにかく熱中、没頭して取り組むことが大切です。楽しさや習慣化は後からついてきます。

 

雑学

 コンコルドはイギリスとフランスによって開発された超音速民間旅客機です。元々はそれぞれの国で独自開発されていたのですが、予算が厳しかったことと営業上の競合を避けるために共同開発されることになりました。そのためコンコルド(調和・協調)という洒落た名称が付けられています。

 開発当初は採算が取れる目論見があったものの、オイルショックによる燃料費高騰、ジャンボジェットの登場による大量輸送・低コストの主流化、開発期間の遅滞による価格高騰、騒音問題や環境問題と様々な問題により著しい低収益体質の機材となってしまいました。

 それでも開発・製造・運行を続けた結果、2000年の墜落事故、2001年のアメリカ同時多発テロによる航空需要の低迷を受けて収益性が改善されないままに営業飛行を終了する結末を迎えました。コンコルドの商業的失敗はコンコルド効果と名付けられるほどに代表的なものとして現在でも扱われています。また最高峰の技術であっても商業的に成功するというわけではないという事例として引用されることもあります。