忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

自らの思考を俯瞰してみることの意義

 思考のやり方そのものを模索するのが好きです。

 脳内ではニューロンがシナプスを介して繋がっていてネットワークを形成しています。このネットワークを信号が伝達することで人は思考をしていますが、結合は使えば使うほど太くなりそれだけ記憶や思考速度を高めることができます。つまり思考は筋トレと同じように訓練によって鍛えることができるということです。

 今自分がどういう風に物事を考えているのかを俯瞰的に考察することは自身の脳内ネットワーク構造を間接的に理解することとなります。また思考手順を変えて異なるニューロンを意識的に用いることは経路を太くすると共に複線化することにもなり、より効率的かつ高度な思考をすることに役立つでしょう。

思考回路のアナロジー

 とはいえ脳内のネットワークマップを描くのは難しいものです。そういう時はなにかに例えると整理しやすくなります。人それぞれやりやすいやり方があるでしょうが、私は思考のプロセスを【無くした物を探す時】とリンクして考えています。

 無くし物の探し方は色々あります。玄関から順次手あたり次第に探していったり、クローゼットに集中してがっつり探してみたり、過去の行動を振り返って探すべき場所を見定めたり、ちょうどいいから少し片づけなんかしてみたりといった感じです。

 探し物が得意な人は状況に応じて異なる手段を取るためすぐに見つけることが出来ますが、苦手な人はいつも同じやり方をするためなかなか見つけられず時間が掛かってしまいます。

 思考も同じで、いつも同じ経路を辿って考え事をしていても似たような結論にしか辿り着けず、求めているより良い答えを手に入れるには時間が掛かるでしょう。様々な結論に素早く行き着くためには異なる経路を用いる必要があります。今はタンスを漁るような考え方をしているな、一度落ち着いて部屋を見渡してみよう、そもそも汚いから見つからないんだ、まずは片付けよう、というように模式的に考えることで思考を整理しやすくなるのではないでしょうか。

思考の切り替え方

 自らの思考を俯瞰したり回路を切り替えるにはやはりきっかけが必要です。頭の中にスイッチを作るも良し、肉体の動作を連動させて切り替えるも良し、時間によってタイミングを取るのも良しです。

 これも私の考え方を事例として挙げてみましょう。前提として私の認知特性は言語映像タイプです。そのため言葉や情報を頭の中で映像化して考える習慣があります。情報を液体として思考する時があると以前に書きましたが、それもこれが理由です。自分の認知特性を把握しておくと思考を整理しやすくなったり適切な学習方法を選択できるようになるのでおススメです。私は思考の深さに応じて映像化の度合いと解像度を変えることでスイッチを切り替えています。

 通常の思考は五感で得た情報をそのままストレートに処理します。とはいえ都度物体が脳内の暗い空間に浮かんでは消えるようなイメージを持ってはいます。犬が庭を歩いていると聞けばレトリバーとアメリカにあるような広い庭を頭に映像化して、頭の中で芝生の上を犬が歩いているわけです。レトリバーなのは趣味です。

 具体的な形が分かっているものについて思考する時は頭の中で3Dモデル化して動かしたり回したり色を変えたり形を弄ったりと遊びながら考えます。物を設計している時はまさにこの状態にスイッチを切り替えています。非効率的ですが認知特性上一度映像化したほうが私には分かりやすいのです。文字データや二次元情報で処理できると早いのですがこればかりは得手不得手なので仕方がありません。

 深い思考をする時はドアを目の前に置きます。質感はあまりリソースを割いていないためいつも適当です。ドアを開けて部屋に入ることでスイッチを切り替え、周囲の環境から意識を切り離します。雑音をシャットアウトするにもいちいち映像化を挟まないといけないので、やはり非効率的な思考方法です。

思考の部屋

 部屋の中は全てがモノクロです。色に弱いというのもありますが、脳がリソースを節約しているのだと思います。部屋のサイズは入る度にマチマチですが概ね正方形の少し広めの部屋で、天井は高く、歩くと少し軋んだ音を立てる板張りの床、グレーの汚れが目立つ白い壁紙で構成されている場合が多いです。部屋は埃っぽくて明らかに掃除がされておらず、少し廃墟に近い雰囲気になっています。ドアの向かいの壁には窓があり、宙を舞う埃を白く照らし出すように差し込んでいる光がこの部屋唯一の光源です。部屋の中央には一本足の机と背もたれの無い丸椅子があり、どちらも木製です。

 細部の解像度はその時の体調や気分によって異なりますが、つまるところ集中するための落ち着ける部屋を作って閉じ籠るようなイメージです。部屋構築はそのためのイニシエーションに類するもので、後は思考目的に応じて行動を変えています。

 感情と論理について自らの内面を確認する場合は机の上に色々と取り揃えます。一番多いのはコップと液体です。その時の心理状態を液体の色や量から考察し、必要であれば飲んだり移し替えたりをしています。

 課題を解決するための方法を探すような調査型の思考をする場合は部屋の周囲に目をやります。そうするとその時の問題に関連したガラクタのような物質がポップアップしてきて山のように積み上がっていきます。イメージが出来るものであればそれそのものが置かれますが、イメージが浮かばないものは箱に言葉で書いてあったり変な形をしていたりと色々に置換されます。眺めてみて、足りないガラクタはあるか、必要なピースは揃っているかを考えた後は、とりあえず山を崩してみたり順序を考えたり別のところを漁ってみたりと繰り返します。探し物をするように色々な手を使って答えを探すのです。そのうち見つけたい答えが足元に転がっていることに気付くので、それを拾って部屋を出ていきます。

認知特性に合ったやり方が良い

 自分で書いておいてなんですがなんともやはり、思考方法を説明するのは難しいですね。私はなんでもかんでも映像化する方が情報処理をしやすいのでやっていますが、人からすれば大変非効率的だと思われるでしょうし。

 なんにせよ、自分の思考を俯瞰して確認し自分の認知特性に合った思考方法を取ることで、効率的に脳を使うことができるのではないかと私は考えます。とはいえ、文字や画像、聴覚などで処理できる人が羨ましいのもまた事実・・・映像は脳の無駄遣いですよホント。