忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

理解を得ないといけない仕事は大変

 職業に貴賤なしという言葉がありますが、なんとも人によって解釈が異なって面白い言葉の一つだと思います。

  • どんな職業でも必要で貴いものであり、賤しい仕事はない。
  • 江戸時代の当時は職業を選ぶ自由は無かったため、職業によって差別すべきではなく人は平等である。
  • 貴賤とは身分の高低を意味し、身分とは社会的地位を表すものであるのだから、現実に貴賤はある。

 なんとでも取れる言葉ですので発言者が用いたいように用いることができるでしょう。当時と現代では身分の意味合いも異なりますし、貴賤の解釈も人それぞれです。言葉は変化していくものですのでちゃんと意図が伝わればどのような解釈でもいいかと思います。

 個人的には行動と人格は別物だと考えるため、職業はどうでもいい派です。ちょっとズルい答えです。しかし、どれだけ立派なお仕事をしていようが驚くほどごにょごにょな人格の方も居ますし、無職の人格者だって山ほど居ます。職業によって社会的地位に差異はあるかもしれませんが、私が人生で直接的に関わる相手に求めているのはそのような社会的地位よりも関わりやすさのほうですので、断然人格重視です。

 とても即物的な考え方ではあります。でも金持ちの政治家だけど嫌味な奴よりも貧乏な職人だけど優しい奴のほうが私は好みです。金持ちの政治家だけど優しい奴であればやっぱり好みですし貧乏な職人だけど嫌味な奴は好みじゃないです。大体の人はそうな感じじゃないでしょうか・・・ああ、いえ、それはそれで極論ですね。

仕事の違いに関する感想

 職業による地位の差は重視しませんが、ただ職業によって大変さの差はあるよねとは思っています。何を持って大変かというとこれもまた人それぞれ異なる解釈を持つことでしょうが、私は記事タイトルにある通り理解を得ないといけない仕事が最も大変だと考えています。軽く説明してみましょう。

 物事において一番大変なことは人を変えることだと考えています。自分の考えであれば自分でどうとでもできます。モノは喋りませんのでそれを動かしたり組立てたりするのもそこまで難しくはありません。しかし人を変えるという行動はとにかく難しいものです。人はそれこそ人それぞれ千差万別であり、相手によってやり方を都度変えなければいけません。それにモノと違って素直に言うことを聞いてもくれませんし、場合によっては反発したり反撃したりとなって手に負えません。人を変えるためには無数の手練手管を使いこなして理解を得る他無く、そのための精神的苦労は何事にも例えられない労苦と言えるでしょう。

 人を変える仕事の代表格は先生と呼ばれるような職業です。つまり教師や医者、弁護士や政治家などです。先生と呼ばれる人々の仕事は人に何かをしてあげることでその相手を変えることです。それは教え導くことによって知識を与え時には生き様を変えることであったり、肉体的な問題を物理的に解消してあげることであったり、精神的な問題を解き解して良い状態にしてあげることであったり、政治的な課題を調整し解消してあげることであったりと実に様々な形態を持ちますが、物理や心理に関わらずこれら全てが人を変えることだと言えます。

 これらはとても難しく大変な仕事です。福澤諭吉が言うように、

すべて心を用い、心配する仕事はむずかしくして、手足を用うる力役はやすし。

ということであり、先生の仕事はその最たるものと言えるでしょう。だからこそ先生と呼ばれる方々の社会的な地位は高いものと見なされています。

 近頃は先生と呼ばれる方々を軽く見る風潮が少しばかりあるような気がするのが悲しいです。先達に敬意を払うことは忘れるべきではないと個人的には思います。もちろん先生と呼ばれる人の中にも敬意を払えない人が存在することは事実です。口が悪い表現を使いますが、そりゃろくでもない教師や悪徳医師、金の亡者の弁護士やどうしようもない政治家だって居ますよ、居ますけども、他の先生が一緒かと言われればまたそれは別の話でしょう。それは個の問題であって全体に責任を取らせるべきではないですし、大変な仕事をしている人を虐めても良い結果にはならないんじゃないかな、と愚考するばかりです。

多分母ちゃんが一番凄い

 このような考えを持っているので、私は育児がダントツで大変な仕事だと思っています。子どもがどのように育っていくかは育児のウェイトが大きく、人を変えるという点で言えば育児こそが究極です。さらに言えば相手から理解を得られる可能性は皆無です。素直に言うことを聞くどころか赤ちゃんなので言っても伝わりすらしません。頑固なおっさんを説得するほうがよっぽど楽です、少なくとも言葉は通じますので。

余談

 まあ何を持って大変とするかは人によりますので、これは私個人の見解です、と言い訳がましく最後に述べさせてもらいます。機械系の技術屋としては、人に教育したりお金の話で上や顧客を説得するような仕事よりモノを弄っているほうが断然気楽だと感じていますので・・・こう、物理法則に従ってくれるあたり、モノや機械はとても素直で良い子す。ソフト屋はまた違う見解かもしれませんが。