忘れん坊の外部記憶域

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プロパガンダの手法と注意すべきこと

 何かしらを成し遂げるには人数が必要なことがあります。選挙に勝つにしろ革命を起こすにしろ商売をするにしろ、賛同者や顧客が多数必要だからです。そのため政治家や政党、企業や団体は自らの正当性を謳い支持を勝ち取るためにプロパガンダを行います。

 プロパガンダとは特定の主義や主張、思想を伝達するために行われる宣伝を意味します。本来的には宣伝全般を指しますが、主に政治的な目的での文脈で用いられることが多い言葉です。

 

プロパガンダの事例

 いくつか例を挙げてみます。少し露悪的なものが含まれることを了承願います。
 まず戦時においては当事者国が共に積極的なプロパガンダを打ちます。あらゆる国の各種機関が「我々は平和を求むが、敵が戦争を望んでいる」「我々には使命や大儀があり、そのために戦う」「敵は残虐な行為や武器を用いている」「反対する者は裏切者である」というようなプロパガンダを行います。特に近代以降は国家総力戦の戦争形式になったことから、国民を団結させて戦争へ動員するために無数のプロパガンダが用いられました。プロパガンダと言えばまずはこの手の戦時プロパガンダが最も有名かと思われます。
 それ以外に、近代以降であればメディアを通してコーポレートプロパガンダが無数に飛び交っています。肌を美白したほうがいい、〇〇は健康に良い、〇〇を取ってはいけない、将来のために英語を勉強しよう、環境のために我が社の製品を買おう、うちの製品には中国産の食品を使っていませんので安全です、といったものです。

 

プロパガンダの手法を学ぶ理由

 プロパガンダを広報活動・印象操作・情報操作と詳細に分離するのは難しいです。というよりもあらゆる宣伝が印象操作であり情報操作でありプロパガンダです。つまりプロパガンダ自体には善悪の区分はありません。我々が日常的に受け取る全ての宣伝がプロパガンダです。プロパガンダは一般的には悪いイメージを持たれがちな言葉ですが、「ダメ。ゼッタイ。」のような薬物乱用の防止を目的とする良いプロパガンダもあります。反面、悪意による虚偽・誇張を伴ったプロパガンダもあります。
 我々が宣伝を受け取る際には情報リテラシーを意識してプロパガンダの手法に注意しなければいけません。プロパガンダの手法や詭弁の論法というのは、世の中に悪意を持ったプロパガンダが存在する以上、それを使うためではなくそれらから身を守るために身につける必要があるのです。

 

プロパガンダの具体的手法

 少し古い分類ですが、アメリカにかつてあった政府機関のInstitute for Propaganda Analysis(宣伝分析研究所)はプロパガンダの手法を7つに分類しています。

1.ネーム・コーリング(Name-calling)
 レッテル貼りのことで、攻撃対象をネガティブなイメージと結びつけます。ファシストや差別主義者、病気や将来のように恐怖と不安を想起させるイメージが用いられます。

2.きらびやかな一般論(Glittering generalities)
 自らの主張を普遍的や道徳的と考えられている言葉と結びつけることで正当化します。未来のため、子どものため、環境のため、というような普遍的道徳と結び付けられることが多いです。

3.置き換え(Transfer)
 イメージを持ってくることでそのものの良い(悪い)イメージと重ね合わせ、何らかの威信や非難を別のものに持ち込みます。相手を非難する時に過去の悪人を例に出したり、環境に良い製品を紹介する時には大自然の写真を持ってくるのが分かりやすい例です。

4.証言の利用(Testimonial)
 権威がある人に語られることで、自らの主張の信憑性や説得力を高めようとします。どこぞの教授が言っていたから正しい、あそこの専門家が言っているからこうすべきだ、というような形です。

5.一般の人々(Plain folks)
 主張を実現することが民衆のメリットになると結びつけます。皆のためになるという言葉は想像以上に訴求力を持っているものです。

6.カードスタッキング(Card stacking)
 自らの主張に都合の良い事柄を強調して、悪い事柄は隠蔽したり捏造や陰謀だと主張します。

7.流行、傾向(Bandwagon)
 自身の主張が世の中の趨勢であるように宣伝します。人は集団から疎外されることを恐れる本能がありますので、錯覚させて主張に引き付けることができます。

 

 どれも簡単に事例が思い付くと思います。政治の世界では当たり前のように使われていますし、マーケティングではまさにこれらの手法を用いて商品の訴求力を高めます。商品に限らず、あらゆる宣伝がこういった手法やさらに改良されたより最新の手法を用いているといっても過言ではないでしょう。

 前述したようにプロパガンダ自体は善悪ではなくただの宣伝です。よって手法を使うこと自体は当然のことです。注意すべきはプロパガンダの手法に踊らされず、宣伝されている主張の中身を適切に受け取ることです。

 

宣伝分析研究所の言葉を最後に。

Find the facts before you come to any conclusion.

結論を出す前に、事実を見つけよう。

 

余談

 プロパガンダの手法を使った文章を考えてみましょう。嘘文章ですので注意です。おどろおどろしい文章を書いてみたいだけです。

すでに大多数の専門家が合意しているようにソディウムクロライドは人体に悪影響を及ぼす。脳卒中や心臓病の原因となるだけでなく、過剰摂取は死に至る。それにも関わらず、政府やシンジケートの暗躍によってその危険性は隠されており、あまつさえ食品への使用さえまかり通っている。さながらファシストによる情報統制のようだ。市民の安全を脅かし、我々の未来を危うくしているのは一体誰か?我々は皆の健康と安全、そして子供たちの未来を守るため、団結し、抵抗し、陰謀を粉砕しなければならない。

 ちなみにsodium chlorideは塩化ナトリウム、つまりですね。ちゃんと過剰摂取の危険性は周知されているので問題無いです。