忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

新しい「私」募集

 本日はお足元の悪い中、弊私(へいし)の面接にお越しいただきまことにありがとうございます。弊ブログも気付けば当記事にて300記事となり、およそ2か月後には1周年も迎えます。今後の更なる発展と飛躍に目指して努力するにあたり、弊私で働いておりました「私」を解雇して新たな「私」を迎えることでその足掛かりとしたく、この度新卒採用を行うことといたしました。

 

 それではまずは左の方、自己PRや弊私への志望動機をお願いいたします。

「はい、常々私は御私(おんし)の記事について疑問を持っておりました。私を採用いただければ、しっかりとした調査結果に基づく高品質な記事を生産することをお約束いたします。ブログに必要なのは読んだ人の役に立つ情報です。御私は今のままではこの条件を満たしていないと考えます」

 ええ、まあ、確かに人の役に立つ情報を掲載することはブログの本懐と言えるでしょう。しかしながら弊ブログは備忘録も兼ねておりますゆえ、必ずしも高品質な記事を掲載する必要性は無いと弊私は考えております。

「そのような考えが甘いのです。御ブログの記事を御覧ください。構成は適当、内容は薄弱、レイアウトはいい加減。画像や写真も用いず文章だけ。思いついたことをだらだらと無闇矢鱈に冗長な文章で語るのみという始末。これでは今後の発展を期待することなんて出来ません。私に「私」をお任せいただければ、このような記事群は一掃し、全て書き直して真っ当なブログへ変貌させることをお約束いたします」

 は、はい、ありがとうございました。

 

 では次は真ん中の方、自己PRや弊私への志望動機をお願いいたします。

「はい。御ブログの課題は集客力にあると考えております。必要なのは宣伝・マーケティングによる集客と来訪者の継続率です。私にお任せいただければ御ブログのアクセス数を倍増、いえ、文字通り桁違いのアクセス増加を成してみせましょう」

 ええ、まあ、確かにアクセスはあれば嬉しいものではありますが、弊ブログはそう有益な情報を開示しているわけでもなく、アクセスによる金銭的なものも発生しておりませんので、集客に躍起になる必要性は無いものと弊私は考えております。

「何を仰っているのですか。現代は良いものを作れば売れるわけでもなく、売れたものが良いものとも限りません。御ブログのような低品質の記事であっても適切な広告施策を実施すれば必ずやアクセス数向上を図ることは可能です。またアクセス数が上がることで意識も変わり、より高品質な記事を作成するよう志向するようになるでしょう。良いものを作ってから売るのではなく、売りながら良いものを作っていけばよいのです」

 あ、はい、どうも貴重なご意見ありがとうございました。

 

 さ、最後に右の方、自己PRや弊私への志望動機をお願いいたします。

「はい。御私の記事は温いものが多く、どうにも人の購読意欲をそそらないと感じております。人に読まれる記事というのは野暮ったく温い記事ではなく、刺激的な見出しであったり、攻めた口調や攻撃的な論調、そして奇抜な発想や極端な二元論による極論です。どっちもどっち論や相対論なんてものは誰にも望まれていないのです。私に御私を委任いただければ、もっと攻めた記事、過激で読んだ人の神経を逆撫でするようなバズる記事を生産してみせます」

 ええ、まあ、それは一理あるかもしれませんが、弊私としては穏便に物事を収めることを良しとしており、特定の団体や属性を攻撃するような過激な路線は好みではないと言いますか、それぞれの個性を尊重した多様性を重視していきたいと考えております。

「多様性という言葉の響きは美しいかもしれませんが、それはつまり個々の規模が小さいということです。一部に刺さるかもしれませんがそれでは多数の読者を惹きつけることなんて出来ません。大勢に読まれる記事というのは多数に役立つ圧倒的に有益な記事ですが、そんな記事を書けるのは一握りの天才のみです。そうではない御私のような凡人がバズりたいのであれば取るべき戦略は極論と決め付けによる属性の分断です。まとめサイトなどをごらんなさい。男ってのはこうだから悪い、女ってのはこういうところが駄目だ、今どきの若者は何がなっていない、年寄りというのはこれだから問題だ、というように、単純化と一方への攻撃、属性の分断による決め付けこそが同調と反感を買い、PVを得られるのです」

 は、はい、どうも、前向きに検討するよう努めることを善処いたします。

 

 これで面接は終了といたします。本日はご足労いただきまことにありがとうございました。お帰りはあちらのドアからどうぞ。本日の結果は後日お電話にてご連絡差し上げます。

 ・・・ふぅ。やっと帰った。

 ・・・まあ、今の「私」のままでいいか。