忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

魔女の一撃は恐ろしい

 ぎっくり腰、正式名称を急性腰痛と呼ぶものがあります。痛みが生じる原因は様々あるようですが、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症といった深刻な原因ではない腰痛がぎっくり腰と呼ばれています。

 頭が悪いこと以外は特に病気も疾患も無く健康体な私ですが、数年前にぎっくり腰をやらかして以降腰に爆弾を抱えています。設計職の人間はデスクワークが多いため腰痛持ちが多いのです。とはいえ立ち仕事の人にも腰痛持ちは多い印象ですが。

 ぎっくり腰は決して致命的なものではないですが、私はすでに人生で二度のぎっくり腰をやらかしており腰の違和感には過敏な日々を過ごしています。

 

ぎっくり腰の思い出

 初めてやらかした時はむしろ面白かったのでよく覚えています。

 夏のある休日におけるお風呂掃除中、シャツを脱ぎ半ズボン一丁で屈んで、シャワーを片手にスポンジで浴槽を磨いていたところ、腰から頭に突き抜けるような痛みが。ぐふぅと魂消るような声が漏れ、屈んでいる姿勢を維持できずそのまま浴槽に寝そべる私。痛みを抑えるためにヒッヒッフーと呼吸を変えてみるもまったく効果は出ない、ただただ痛い。

 今住んでいるアパートは足を伸ばせる大きい浴槽を理由に選んだが、その選択は間違っていなかったことを脳裏で確信した。そうか、私はここでぎっくり腰になって寝そべるために大きいお風呂を選んだのか、これが運命だったのだ。なんて安い運命だ。

 シャワーは延々と温いお湯を吐き出し続けて寝転んだ私の全身を憐れむように濡らしていく。半裸だったので大したことは無いとはいえ、これは脱がないと廊下がビショビショになるな、とお湯の暖かさに反して少し冷めた感想を持つ。痛みで体が動かない分、頭を働かせるしか出来ることが無かったのだ。

 シャワーを止めたいがそこまではとても手が届かない。蛇口に手を伸ばそうと体を捻るとうへぇと情けない鳴き声が。せめてケータイが近くにあれば誰かを助けに呼べるが、当然浴室に電子機器なんか持ち込んでいない。痛みが鎮まるまでは浴槽でシャワーを強制的に浴びながら待つことにしよう。

 永劫に続くかと思われた痛みの中、少しずつ引けていく痛みに合わせて体の可能駆動域を探っていく。腕は問題なく動く、腰は捻らなければ問題ない、腰を曲げるのは論外だ。ならば話は簡単だ。

 上半身の力だけで体を引き起こし、浴槽から文字通り転がり出る。普通に痛い。しかし上書きされたその痛みを利用し、勢いで蛇口を操作してシャワーを止める。幸い浴室のドアはノブ式ではなく押せば開くタイプだ。もはや我が障害となるものは存在しない。なんとか布団、最悪の事態に備えてせめてケータイのある部屋までは辿り着いてみせる。

 その日私は匍匐前進をすれば腰に負荷を掛けずに移動できることを学んだ。当時はロクな学びではないと思ったが、まさかその数年後にもう一度役に立つとは思わなかった。三度目は訪れないことを期待している。

 

棚卸は大変ですよね

 突然話は変わるのですが、棚卸ってご存じでしょうか?モノの在庫や保有資産を数えて、会計上の資産額と実際の資産を突き合わせて整合を取る作業です。製造業や小売業など様々な業界で行われています。企業や業界にもよりますが、多いところは毎月のように、少ないところでは会計上の期末に行っています。

 棚卸はとても大切です。経理上の数値と実数値がズレていては正しい経営判断が行えませんし、現状在庫を確認することは不回転在庫や滞留在庫の発見に繋がります。またあってはならないことですが不正の発覚にも効果があります。

 弊社も期末には棚卸を行っています。ちょうどこの記事を書いている日に行いました。弊社の棚卸では直接部門だけでなく間接部門の人間も借り出して一斉に在庫を数えます。よって技術部署の私も今日は部品を数えるのがお仕事です。

 手のひらサイズのものもあれば何トンもある機械も作っている会社ですので、棚卸の際は様々な部品を数えなければいけません。延々とバネやネジを数えている人もいれば、大物部品をえっちらおっちらと動かしながら数える人もいます。

 特に鋳物部品を数えるのが大変です。鋳物とは溶かした金属を型に流し込んで形を作る鋳造工程を経て作られたものです。つまりは金属の塊ですので、重い部品が多くて嫌になります。

 

本当に話変わった?

 ・・・や、ギリギリセーフ、自力で帰宅できたのでまだセーフ、今回は三回目には数えません。動けるレベルはぎっくり腰とは認めないのです。ただ動くのは辛いので寝たまま今日の午後を過ごしています。

 今回の鳴き声はあぁぁぁでした。言葉にならなかった。

 なんでこんな日にも私は文章を書いているのか、それが一番の不思議です。

 

 

余談

 ぎっくり腰はドイツ語で「魔女の一撃」とも表現するそうです。魔女怖い。