忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

器(仕組み)を作ればいいと思ったら大間違い

 アクセス数が伸びないことに悩んでいます。

 この駄ブログの話ではありません、伸ばす努力をしてもいないのに伸びたいなんて贅沢なことは決して。そういうのは宣伝を頑張っていたり面白い話や人の役に立つ情報を頑張って書いている人にだけ言う権利があると思っています。あっしにはそんな権利はとてもとても。白米さ食いたいだなんてそげなことは申しませぬ、お役人様。だげんどもこの稗粟まで持ってかれてはあっしらの食うもんが無くなってまうで、御勘弁をおねげえ申しますだ。ああ、その鍬は、鍬だけは勘弁くだせぇ。

 ・・・話が逸れました。逸れたというか、おふざけが過ぎました。

 

 アクセス数が伸びないのは会社のナレッジデータベースです。

 ノウハウや独自技術といった企業の知識(ナレッジ)を管理するためのデータベースをナレッジデータベースと言います。今日はそのナレッジデータベースに関する大手・中堅の企業でよくある話をしましょう。

 

理由は分かっている、そんな暇が無い

 昨今はどこも人手不足で忙しいため、現場の技術者にはナレッジを整理して資料化する時間なんてありません。しかしながら団塊世代の一斉退職の時期に流行りに乗って導入したナレッジデータベースをせっかくだからなんとか活用したい、という上の意向によって提出ノルマを課せられることもあるでしょう。ナレッジは量より質であるべきだと思いますが、お偉いさんからしたら数値で評価できる登録数のほうが重要なのです。

 そんなノルマを達成するために技術者たちは必死に時間を捻り出しなんとか技術資料やマニュアルを作ってアップロードします。そしてそうやって必死に積み上げられたナレッジは、残念ながら大抵の場合誰にも読まれないままデータベースの海に埋没することになります

 

 これは全国津々浦々で起こっているよくある話です。ナレッジデータベースやマニュアルといった仕組みさえ作れば後はトントン拍子で上手くいく、勝手に技術伝承や技能伝承が行われる、業務は自然と引き継がれる、若手は勝手に育つ、というのは誰もが知っているように妄想幻想です。そんなことは決してあり得ません。資料を用意しても誰も読まないのはむしろ自然の成り行きというものです。何せ従業員にはそれを読むことにインセンティブが無いのですから。

 そもそも資料やマニュアルを作る時間すら無理やり捻出しなければいけないような状況です。そのような状況でポンポンとアップロードされる様々な技術資料・マニュアルを読む時間がある人なんてほとんど存在しません。

 

仕組みと運用

 何事もそうなのですが、器(仕組み)を作れば後は万事OKということはまずありません。

 もちろん器は重要です、器の形によって将来的な規模や形状が決まるのですから決して疎かにはできません。ただそれを運用することについても同じくらい熟考しなければいけないこともまた事実なのです。

 現代社会においては誰をあてがっても問題なく動く仕組み程度ではビジネスになりません。かつてはそんな仕組みを作ることが出来れば充分商売になっていましたが、現代ではその程度という扱いです。それこそそんな誰でもできる仕事は機械やAIに任せておけばよく、現代では機械には未だ出来ない人の知性による優れた仕組み作りや最適化こそが求められています。

 すなわち仕組みに沿って動ける人ではなく、「優れた仕組みを作れる人」と「仕組みを最適化して運用できる人」こそが価値ある人材として、少なくとも組織集団の上に立つ人材には求められています。そしてそれらは仕組みで簡単に教育できる類の能力ではないのです。

 

仕組みと人の間を取り持つ

 結局は全てにおいて重要になるのはなのです。仕組みを絶対視して機械的に物事を運用しようとすれば、必ず人の側に負担が集中してしまい人が摩耗してしまいます。現代人のメンタル不調はまさしく人の負担の限界点に到達していることが明示されているのであり、今必要なのは人に負担を押し付けないような仕組みを作る人と、仕組みと人の間を取り持ち負担の割合を最適化する運用能力を持つ人です。少子高齢化の進む現代先進国において人の磨耗を許容する仕組みなんてものはもはや論外であり、直ちに改善しなければいけません。人に優しい仕組みの作成と運用は、倫理的な話ではなく、合理性の面でも必須となっています

 ナレッジデータベースはとても分かりやすい具体的な事例と言えるでしょう。仕組みを動かすために人に負荷を掛けたところで決して歯車は噛み合いません。必要なのは人の負担を軽減できるような仕組みの改善と運用の変更です。データベース化のために専業の人を雇う、資料化や教育を正しく業務として評価する仕組みに変える、資料化や教育をベテランが行うことにインセンティブを与える、教育時間というコストを支払う、そういった手管を考えて整えられる人、仕組みと人を取り持つ潤滑油となれる人こそが求められています。

 さぁやれ、とにかくやれ、必死にやれ、なんて言うだけならば中学生にだって出来るのですから、そんなお偉いさんは要らないのです。

 

余談

 大きな声では言えませんがうちのナレッジデータベースのアクセス数、デイリーでも累計でもうちの駄ブログ以下とか、もはや乾いた笑いが出ますよ。規模の話はどこまでしていいのか分からないですが、少なくともデータベースにアクセスできる技術者はこの駄ブログの読者数よりも遥かに多いというのに。私の作った資料だって全資料合わせても累計100PV以下って・・・

 年度末に「これだけの登録数がありました、素晴らしい」というようなお偉いさんのコメントがあったので悲しみ。重要なのは中身の質とちゃんと技術伝承がされているかの効果であって、誰も読まない資料を積み上げても意味が無いと散々言ってるのに、聞く耳持たずなのは悲しい。