忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

学生と社会人の違い〜学びの姿勢

 以前にも書いたことがある内容ですが、今年の新人に話すため再度情報整理を兼ねて、学生と社会人の違いについて述べていきます。

 私がこの手の話題を人前で語るのは会社での技術講習会の前であることが多いので、それに合わせて普段の語り口調で記録しましょう。

 

お金を払う側、お金をもらう側

 よし、これから君たち新人に向けて技術的なことのお勉強会をするけど、その前にちょっと学生と社会人の違いについてお話をしようか。こういう話は教育部門の仕事だけど、まあちょっとだけ。いきなり勉強を始めるのもつまらないからね。

 さて、学生と社会人の違い。何があると思う?責任の軽重や時間の使い方とか色々思い付くと思うけど、一番大きな違いは何といってもお金に関してだと私は思っています。学生はお金を払う側で、社会人はお金をもらう側。これは君たち若者が思う以上に大きな違いなんだ。

 ああ、別に私は人事畑の人間でもなければましてや経営者でもないから、「給料分働け」だとか「お金を貰う以上頑張って働け」みたいな馬鹿なことは言わないよ。そんな精神論はあんまり興味ないし、そもそも給料分働くって具体的にどの程度さって話だし。お金を指標にした場合、総務部みたいに売り上げを立てる部署じゃないところはどうすりゃいいのかわかんないからね。それに、じゃあ給料分以上働いたらその分くれるのかって言えばもらえるわけでもなし、結局この考え方は精神論的な帰結しかないからあんまり語る意味は無いね。

 こう言っちゃなんだけど、頑張るか頑張らないかは給料とは関係ないよ。お偉いさんの言葉を借りれば、それこそ給料分働いてるなら別に頑張らなくたっていいとも言える。仕事の仲間、同僚としては君たちにプロ意識を持って頑張って欲しいとは思うけど、それと給料をもらっていることは別の話。もらった給料の分量でプロ意識を持つんじゃなくて、別の側面、社会に立つ大人としてプロ意識を持って欲しいかな。

 よし、話が逸れたから少し戻そう。学生はお金を払う側で、社会人はお金をもらう側。これを言い換えると、学生はお客様で、社会人は商品やサービスの提供者ということを意味してるんだけど、この違いはこれから始める勉強会においても結構意味がある話なんだ。

 学校や先生の仕事やサービスの内容は学生の学力を向上させることだと言えるよね。厳密には違うけど、まあ大雑把に言ってしまえばそんな感じ。学生はお金を払っているお客様だから、学校や先生は学生の学力を向上させることにものすごーく気を遣う。授業は分かりやすいですか?分からないところはありますか?テストをして理解度を確認しましょう。点が足りなければ補習授業だってやりますよ、ってな具合に。なにせ学生はお金を払ってくれるお客様だから、学校は顧客満足度を高めるために努力するわけ。その結果が学校や先生の評価にも直結してるしね。

 社会人は学生と違ってお客様の立場じゃなくなる。もちろん仕事で必要なことは今日の勉強会みたいに会社も教えるよ、何も教えずに仕事をしろって言ったって無理なことは分かってるからね。でもそれだけ。分かりやすいかとか、分からないところはどこかとか、補修授業をしましょうかとか、社会人になるとそういうことは学校みたいには真剣にやってくれなくなる。分からなかったら自分から伝えないといけないし、理解が足りなければ自助努力や人に協力してもらって補填しないといけない。社会は君たちの満足度を高めるために必死になって動いてはくれない。だって君たちはもうお客様じゃないんだから。

 簡単に言えば、学生は受動的でもいいってことだね。放っておいても先生や大人があれこれと便宜を図ってくれる。でも社会人になったら能動的に行動することを求められる。だから、これから君たちには少し難しい技術的な勉強会をするけど、分からないことや理解が足りないと思ったら恥ずかしがらず積極的に質問をして欲しいんだ。分からないところはもっと丁寧に教えてあげる、理解してもらわないとこっちが困るからね。でもどこが分からないかまでは君たち自身が発信しないといけないよ。それが能動的って意味。この学びの姿勢に対する違いこそが学生と社会人を分ける最大の違いだと私は思っているんだ。

 

 まあ、つまり会社のためとか頑張る頑張らないとかの、そういう気持ちの問題は重要じゃないんだ、心の持ちように給料が出てるわけでもないし。会社のために働くという気持ちを持つのは悪いことではないけど、それが必須ということじゃない。

 そうじゃなく、学びに対する心構えが学生と社会人では違うんだっていうこと、社会人は能動的でないといけないと早めに知っておくと、まあほどほどにお得だぜって話。これは会社の話じゃなくて個人の損得の話。この違いを知らずにポケーっとしてると、若いうちの貴重な学びの時間を損しちゃうからさ。会社のためなんて無意味に気張る必要は無いけど、自分が損しないように知っておくといいよ。

 よし、じゃあ勉強会を始めようか。質疑の時間は後で取るけど、分からなかったらいつでも手を挙げていいからね。悪い歯医者さんのように無視したりはしないから。