毎週のように政治家や公務員の汚職事件が報道されています。
そのため、まるで日本は役人の腐敗天国かに思えるところではありますが、では実際に腐敗が少ない国や多い国と比較すると日本の汚職度合いはどの程度なのか、その相対的な関係性にも興味が湧くものです。
今回はその点に関する国際ランキングを見ていきましょう。
腐敗認識指数(CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX)
各国政府や公務員の汚職度合いを比較する指標として、国際NGO団体のトランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)が毎年発表している腐敗認識指数CPI(CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX)があります。Transparencyは日本語で透明度を意味する言葉で、まさしく国家の透明性を判定するためのNGO団体です。
指標のスコアは100点満点で、汚職が少なく透明性が高い場合に高スコアとなります。反対に汚職が常習化している国家ではスコアは低くなります。
この手の国際ランキングでは当然のことではありますが、調査対象の国家・地域数は年ごとに変動します。
また、各種機関の発表する国際ランキングとは少し異なり、この指標はトランスペアレンシー・インターナショナルの考えが介入しない指標となっています。CPIは最大13のデータソースを0-100で標準化し、平均値を計算しているだけです。よってトランスペアレンシー・インターナショナルによる情報の操作は発生しません。但し当然ながら元のデータ自体には回答者のバイアスが働いていることを留意する必要があります。
2021年に発表された腐敗認識指数では、日本のスコアは73/100点で、順位は18/180位です。日本は極めて高いスコアを誇っているわけではありませんが、上位10%には位置しています。
参考として、2021年のスコアは平均43点、標準偏差18.8、中央値39点です。
日本と同点数の国はオーストラリアとベルギー、そしてウルグアイです。
比較用に、2021年の上位と下位の10国ほどをピックアップしましょう。
1位:デンマーク(88点)
1位:フィンランド(88点)
1位:ニュージーランド(88点)
4位:ノルウェー(85点)
4位:シンガポール(85点)
4位:スウェーデン(85点)
7位:スイス(84点)
8位:オランダ(82点)
9位:ルクセンブルグ(81点)
10位:ドイツ(80点)
・・・
172位:赤道ギニア(17点)
172位:リビア(17点)
174位:アフガニスタン(16点)
174位:北朝鮮(16点)
174位:イエメン(16点)
177位:ベネズエラ(14点)
178位:ソマリア(13点)
178位:シリア(13点)
180位:南スーダン(11点)
上位・下位ともに他の経済・政治・安全・平和といった国際ランキングでも常連、と言っていいのかは分からないですが、よく見かける国で占められています。
日本のスコアに関して
日本のスコアや順位はここ10年でそこまで大きく変動してはいません。
日本のスコア算出に用いられている指標と各スコアは以下です。
・Bertelsmann Foundation Sustainable Governance Index (53点)
ベルテルスマン財団による統治の持続性指標
・Economist Intelligence Unit Country Ratings (72点)
エコノミストインテリジェンスユニットによる国家の格付け
・Global Insights Country Risk Ratings (71点)
S&Pによる各国のリスク評価
・IMD World Competitiveness Yearbook (70点)
国際経営開発研究所の世界競争力年鑑
・PERC Asia Risk Guide (80点)
PERC社によるアジアリスク評価
・PRS International Country Risk Guide (67点)
PRSグループによる国際カントリーリスク評価
・Varieties of Democracy Project (72点)
独立研究機関V-Demによる調査
・World Economic Forum EOS (93点)
世界経済フォーラムによる経営者意見調査
・World Justice Project Rule of Law Index (80点)
世界正義プロジェクトによる法の支配指数
個別指標の採点基準やスコアの根拠を見ていくと情報量が膨大になってしまうためそこまではしませんが、概ね全体的に高スコア、ただしダントツに優れているわけではない、上位ではあるが上には上がいる、という採点だと感じます。
採点の例として一部を抜粋すると、最もスコアの低いベルテルスマン財団による指標において、日本が最も減点されているのは「戦略的な能力」と「社会との相談」です。多くのデリケートな問題が非公式に交渉されて、会議は形式的なものになっていることが問題だと挙げられています。
これは大変に納得感のある妥当な判定であり、日本が改善すべき項目かと思われます。
結言
国家の腐敗度合いとしては日本は上位10%に入る程度の高スコアです。よって「日本は腐敗国家だ」とまで悪く考える必要はなさそうです。
しかしながら上には上がいるものであり、日本よりも透明性が高い国家も多数あることから、現時点のスコアに驕ることなく問題点を改善していくべきだと考えます。
この手の指標・国際ランキングにおいて低得点を付けてくれる機関はありがたいものです。そこが日本の課題だと教えてくれているのであり、そういった意見を煙たがることなく正面から受け止める度量こそが物事の改善には必要だと思う次第です。