忘れん坊の外部記憶域

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上手く転んでいこう:『つまずきが転落を防ぐこともある』

英語の諺

A stumble may prevent a fall.

つまずきが転落を防ぐこともある。

 小さな間違いを犯すと次からは気を付けるようになるので、将来大きな間違いを犯しにくくなるという意味の諺です。

 以前聞いた時からこの諺がどうにも耳に残っています。

 そんな、この諺に関する雑談をば少し。

 

実感的

 「つまずきが転落を防ぐこともある」

 複雑な意味ではありませんし直感的に理解しやすい諺です。

 ただ、スノーボードを好む私はこの諺をもっと実感的に捉えています。

 

 私がスノーボードを友人から教わった時、ブーツを履き、ビンディングの固定を教わり、立ち上がり方を理解し、ボードの上に立ってさあいざこれから滑り始めるぞ、という時にまず教えられたことが転び方です。上手い滑り方やリフトの乗り方、まして移動の仕方でもなく、転び方でした。

 これは実に合理的な順序です。なにせスノーボード初心者は絶対に転びます。ただ移動するだけでも転びますし、リフトから上手く降りれずに転びますし、初心者が滑走し始めれば転んでいる時間のほうがよっぽど長いでしょう。

 つまり新たなアクションを取る度に初心者は転びます。

 よって、まずは安全なつまずき方、上手い転び方を覚える必要があるのです。どう足掻いても転ぶ以上、むしろ足掻くから転ぶのですがそれはさておき、転んだ際の安全が何よりも優先されます。柔道で受け身の練習から始めるのと同じです。

 

 転ぶのは確かに少し怖いものです。痛い思いをするかもしれませんし、怪我をするかもしれません。

 しかし上手い転び方を知らなければそれよりももっと恐ろしい未来が訪れるのです。

 

 スノーボードはブレーキを掛けるのが難しいスポーツです。体重移動によってエッジを利かせれば止まれるのですが、その感覚を覚えるまではエッジが効きすぎて吹っ飛んだりエッジが上手く効かずに猛スピードの直滑降で滑ることになり、どこかで派手に転げまわることになります。止まれるようになればとにかく上に行って下に降りてくる程度の事はできるようになりますので初心者卒業と言えるでしょう。

 つまりエッジの感覚を覚えるためには吹っ飛んで覚える他なく、そのためにも転ぶことを恐れてはいられないのがスノーボードです。だからこそ、つまずき転ぶことへの恐怖心を拭い去り、安全に上手く転ぶ方法を最初に覚えることが何よりも重要なことになります。

 

 また、スノーボードは加減速に融通が利かないため、初心者はあっという間に自分がコントロールできる速度を超えます。そんな状況で下手にエッジを効かせて吹っ飛んでしまうと本人にも周囲にもとても危険です。よって速度が自分の実力に収まらないと思ったらその時点でコントロールを諦めて即座に転ぶことが最適です。

 ましてやスキー場は雪山です。少しコースを逸れれば森林に突入して木に正面衝突するか、高低差があるところへ真っ逆さまです。コースを逸れて大怪我をしたり山から転落するくらいならばさっさとつまずいて転ぶべきであり、まさしく言葉通り「つまずきが転落を防ぐこともある」のです。

 

 そんなわけで、少し諺の意味とは違いますが、この諺は私にとって感覚的に覚えやすいのです。

 

結言

 日本で転ぶことに関する諺と言えば「転ばぬ先の杖」があります。

 転ばないように備えることは悪くないのですが、ちょっと保守的な気がしてしまいます。それはまあ誰だって転びたくないのは分かります。痛いですし。恥ずかしいですし。

 しかし私は転ぶことを恐れるよりも転べないことをこそ恐れる、そうありたいです。そのほうが挑戦的で前向きで、なにより健全な気がしますので。

 致命的な失敗に至らないよう、スノーボードも人生も、上手く転んでいきましょう。

 

 

余談

 初心者の私に対する友人のスパルタ教育。

「ほら、ビビってねえでとっとと転べ」

「おい、何休んでんだ?甘えてんじゃねえよ、早く立てよ」

「よし、転べるようになったな。じゃあ1番上まで行くか」