昨年SNS上で頻繁に見かけた「閣議決定」という言葉。
どうにも少し捉え方が違う人が居るのではないかと思うため、閣議決定について語ってみます。
閣議決定の意味
閣議決定とは内閣の会議(閣議)で内閣の権限事項を決定することです。
主な閣議決定は首相官邸のwebサイトに公開されており、予算や法律に限らず実に様々な事案に対して行政府としての意思決定が行われていることが分かります。
◆主な閣議決定・本部決定 | 内閣 | 首相官邸ホームページ
閣議決定の具体的な意味は次の通りです。
閣議決定とは、内閣総理大臣及びその他の国務大臣をもって組織する合議体たる内閣の会議(閣議)で内閣の権限事項を決定することであり、憲法又は法律が内閣の意思決定を当然必要としている事項、例えば、法律案及び政令の決定は例外なく閣議決定の方式によることになります。また、特に法令上の根拠がなくても、重要な政策に関する事項は閣議決定で決められることが多くなっています。
SNSで「なんでもかんでも閣議決定によって決められてしまう」といった声を見かけることがあるのですが、なにも閣議決定とはそういうものではありません。
これは「閣議決定」という言葉の曖昧さが問題かと思います。
「閣議決定」と言うとまるで閣議によって全ての物事を決定しているような印象を受けかねない言葉ですが、そこまでの絶対的な権限が閣議決定にあるわけではなく、あくまで会議(閣議)の決定に過ぎません。閣議決定とは読んで字の如く閣議の決定であり、閣議による決定ではないです。
確かに行政権の範囲内であれば閣議決定で物事が定められます。これは行政機関の長たる内閣府の権限範囲であり、企業経営において取締役会が経営方針や重要事項を決定することと同じです。
しかし行政権を超える範囲、例えば予算や法律などは閣議決定では決まらず、閣議決定による行政府の方針に対して立法府や司法府がその判断と意思決定を引き継ぎます。
一例として、昨年12月に話題となった防衛予算のGDP比2%においても、閣議決定によってGDP2%の予算が決定したのではなく、行政府がGDP比2%の予算を欲することが決まった、までです。
予算を決定する権限は立法府である国会にある以上、「行政府は今後これこれこういった方針で行政を行いたい、そのためにはこれだけの予算が欲しい」という閣議決定を最終的にどう反映するかは国会によって決まります。
つまるところ、「なんでもかんでも閣議決定によって決められてしまう」わけではないです。閣議決定で出せるのは行政権の範囲内における意思決定、そして行政権の範囲外に対する行政府の立場からした方針とそれに基づく予算"案"や法律"案"の提出までであり、予算や法律が閣議決定によって決まることはありません。
「なんでもかんでも閣議決定によって決められてしまう」と言われてしまうと、どうにも閣議決定を「閣議による決定」だと誤解しているのではないかと、そう思ってしまいます。
問題は閣議決定ではない
もちろん現時点での日本国の議員構成を考えれば与党が国会議員の過半数を占めている以上、閣議決定による予算案や法律案がそのまま国会を通る可能性は高いです。
ただそれは閣議決定の問題ではなく与党が過半数を占めている状態にあります。多数決が国会の議決を決める以上、過半数を占める勢力によって意思決定がされることは理屈通りです。
よって問題点は閣議決定そのものではなく、課題とすべきは立法府が行政府に対して三権分立の牽制機能を果たせなくなっている議員比率、政党の権力分布そのものです。閣議決定が行われることが問題なのではなく、その閣議決定を牽制できないほどに与党の人数が多く野党の人数が少ないことが問題です。
この問題は一朝一夕にて解決するような話では当然ありませんが、かといってメディアやSNSが閣議決定そのものを槍玉に挙げるのはあまり意味が無いかと考えます。
結言
私は与野党の好き嫌いがさほどない無党派層ではありますが、与党が強すぎて牽制が果たせなかったり野党が強すぎて行政権が阻害されたりとアンバランスな状態はあまり好みではなく、三権分立が機能する程度の国会議員比率が望ましいと思っています。