忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

技術の事柄では技術の話だけをしたい

 無理なことは分かっているけど。

 

技術屋同士のコミュニケーション

 技術屋同士のコミュニケーションは共通言語である"技術"を基軸として行われるため、基本的にはスムーズに進みます。

 特に機械系のコミュニケーションでのズレは珍しいです。私たち機械屋が用いる力学の多くは数十年以上の歴史を持つ枯れた技術であり、積み重ねてきた論理と現実世界での工学的実績が明々白々であり、力学的にどうなるか、工学的に起こり得るか、技術的に意味があるか、そういった技術的知見での認識の差異はあまり起こりません。工学的な現実解は概ね一つであり、一定以上の技術力を保有する機械屋同士で同じ事象について語り合えば本来的にはまず同一の地平へ辿り着きます。

 

 高所から落としたボールが低所へ落ちてくるのは自然な現象であり、それは万有引力によって説明できます。そういった当然の理における認識のズレは技術屋としてアリエナイのです。

 

先日のくだらないやり取り

私「技術的な観点からして、このテストを行う必要はないと判断する」

相手「個人としてはとても同意する。だが、こちらの上級エンジニアがテストを欲している」

私「そんなことはこちらの知ったことではない。不要なテストによる追加費用の発生をこちらは承服できない」

相手「これはこちらの社内ですでに決定した事項である」

私「こちらの決定はこれからであり、必要な予算をこちらの上層部に承認させるための理屈をこれでは用意できない」

相手「そう言われてしまうと、こちらはさらに上、トップのエンジニアを呼ばなければならなくなる」

私「それは勘弁して欲しい、上で衝突しては大事になりすぎて話が進まなくなる」

相手「こちらもそれは避けたい、なので要求を呑んで欲しい」

私「だから、不要な試験のために金は出せない」

相手「それは分かるのだが、こちらの上級エンジニアを説得するのも難しいのだ」

私「こちらだって難しいのだ」

 

 技術から逸脱した、お金の話。

 ここまで来たら双方権限を持ったお偉いさんに引き渡すのが手っ取り早いものの、そうなると大事になって話が進まなくなるので下っ端同士で処理したい気持ちは大きいが、しかし落としどころが無くて困る、の図。

 誰も幸せにならない、稀によくあるデッドロックです。

 

技術の話、政治の話

 残念ながら、企業に勤める私たち技術屋は技術の話を目的としているのではなくビジネスを目的としていることから、技術的には見解が一致したとしてもビジネスの判断では不一致になることが多々あります。

 やむを得ない話とはいえ、正直言って面倒です。

 

 いや、分かってはいる、分かってはいるのですよ。遥か上の上級エンジニアがやれって言ってるのだから、相手のエンジニアはそれに従うしかないことは。

 とはいえそんな内部の政治的な話をこちらに押し付けられても困るわけで。こちらも上層部の承認を得る必要があるのだから、相手の言い分をそのまま持ち帰ることはできません。子どものお使いじゃないのですから「相手がこう言っているのでこれだけお金を使います」なんて論外です。

 だからこそビジネスの話をするのは避けませんし、やります。

 やりますけど、ああ、技術の話だけしたいなぁ、という気持ちもあるのですよ・・・

 

結言

 仕様や要求を唯々諾々と無批判に受け取るようなことはもちろん御免なのですが、その要否や可否は政治的な領域ではなく技術的な領域だけで終わらせたいものです。

『技術的な妥当性を放棄して、より偉い人を召喚して政治力で押し通せるかバトル』

はくだらないのですよ、ホント。