別に好きじゃないかもしれません。
好き嫌いはさておき、原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists)が世界終末時計(Doomsday Clock)の時間を発表する度に世界各国の大手メディアが取り上げるので、もしかしたら世間的な知名度は意外と高いのではないかと思っています。
◆Doomsday Clock - Bulletin of the Atomic Scientists
終末時計は朝日や読売など日本の大手メディアでも取り上げていますが、日本よりも欧米社会のほうで知名度が高いであろう指標です。
今回はそんな終末時計について、少しばかり考えてみます。
時間はメタファー
終末時計は人類の終末を深夜0時とし、それまでの残り時間を「あと何分か」で示す時計です。原子力科学者会報の科学・安全保障委員会に所属する世界的な学者たちによって決められています。
2023年1月24日の発表では人類の終末まで残り90秒と、今までの最短時間を更新しました。
終末時計の時間が発表される度に賛否両論の議論が沸き起こるのは恒例行事のようなものですが、まあ科学者の開示する数字に対してその科学的な根拠や妥当性が気になるのは仕方のないことです。
とはいえ、この時間自体には特に意味はありません。なにせ数字を決めている科学者自身がそう述べているのですから。
What is the Doomsday Clock?
The Doomsday Clock is a design that warns the public about how close we are to destroying our world with dangerous technologies of our own making. It is a metaphor, a reminder of the perils we must address if we are to survive on the planet.
終末時計とは?
終末時計は私たちが自ら作り出した危険なテクノロジーによって世界がいかに破壊されようとしているかを人々に警告するデザイン(模様/意図)です。これはメタファー(隠喩/暗喩)であり、私たちが地球上で生き残るために対処しなければならない危機を思い起こさせるものです。
What expertise do you have in forecasting?
The Doomsday Clock is not a forecasting tool, and we are not predicting the future. Rather, we study events that have already occurred and existing trends.
予測に関するどのような専門知識を持っていますか?
終末時計は予測ツールではありませんし、未来を予測するものでもありません。むしろ、すでに起こった出来事や既存のトレンドについて研究しています。
以上のように、時間そのものの妥当性を議論することに意味はありません。そもそも基準となる時間ですら、終末時計のデザインを描いた芸術家のマーティルがただそう決めただけです。
What time was displayed on the original Doomsday Clock?
Martyl set the original Clock at seven minutes to midnight because, she said, “it looked good to my eye.”最初の終末時計の時刻は?
マーティルは最初の時間を深夜の7分前に設定した。彼女曰く「私の目には、それが良いように見えた」
画像引用元:Current Time - 2023 - Bulletin of the Atomic Scientists
残り時間はメタファーであり、終末時計は未来の予測ツールではなく、そもそも時計のデザインが1/4しかないのは「切迫感」を感じてもらうためのデザインに他なりません。
よって終末時計について語る際は「残り何秒か」の議論をするのではなく、「以前に比べてなぜ数字が進んだか(戻ったか)」を語ったほうが建設的ではないかと思います。
算数の時間だ!
まあ、数字があったら気になるのは人の常です。残り90秒と言われれば、あと何年くらい人類は生き残れるのかと考えたくもなります。
そんなわけで、残り時間を意味の有る数字と仮定して、実際の残り年数にざっと換算してみましょう。
終末時計では何をもって24時間とするかの基準がそもそも定められていないため、人類の祖先の登場や新人類の登場、または文明の始まりなど、24時間の基準を複数パターンで計算してみます。
(残り90秒の年数換算)
■基準:二足歩行ができるヒト亜科の登場(およそ500万年前)
⇒残り年数:5214年
■基準:初めてのヒト属であるホモ・ハビリスの登場(およそ200万年前)
⇒残り年数:2086年
■基準:ホモ・サピエンスの登場(およそ20万年前)
⇒残り年数:209年
■基準:オリエントでの農耕文明の開始(およそ1万1000年前)
⇒残り年数:11年
24時間の基準を変えるだけで残り年数もかなり変化しますね。
残り11年となるともはや絶望的な気がしますが、残り5214年となると別に焦る必要はないようにも思えます。
つまるところ、換算してみましたがあまり意味のある数字ではなさそうです。
結言
世界終末時計の目的は核問題や気候変動の危機を警告する啓蒙ですので、数字は特に重要ではないです。