忘れん坊の外部記憶域

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なぜ立憲民主党は支持率が伸びないのか?と聞かれたので考えてみた

 以前、立憲民主党を支持している方から「なぜ立憲は支持率が伸びないのか分からない」と聞かれたことがあります。その際はいくつかの例を用いて理由を説明してみました。納得いただけたかは分かりませんが、一定の理解はいただけたと思っています。

 

 普段は特定の政党に関して記事を作成することはしないのですが、ちょうど今国会で紛糾している[放送法の解釈及びそれに関する行政文書の件]が「なぜ非支持者が立憲民主党に投票しないのか」の典型例になっていて分かりやすいので、これを題材として再度考えをまとめてみます。

 立憲民主党を否定したいわけではなく、非支持者にはこういう意見もあるのだと把握していただくため、むしろ立憲民主党の支持者にこそ伝えたい話です。

 

与党支持者・野党支持者・その他

 政治家にとって政敵や対抗勢力を国会の場で激しく追及する様を世間に見せることには意味があります。政治家業には知名度が不可欠である以上、国会での追及風景がテレビ等で放送されることは公への露出を増やす一つの良い機会です。

 さらに言えば対抗勢力の大将やキーマンの首を取れれば占めたものです。政敵の勢力を弱体化させることに繋がりますから。

 

 よって政治家個人にとっても国会で目立つことには意味がありますし、支持者からすれば野党が国会の場で与党を激しく追及する様は「相手の武将を叩きのめしている」と評価の対象になります。

 反面、与党を支持する側からすれば「こちらの大将の首を狙ってきている」と受け取られます。大将を守るため、徒党を組んでより頑強な抵抗勢力へと変わるでしょう。

 敵味方の二元論で見ると、おおよそこのような空気感になるかと思います。是と非の二元的な意見ばかりが世間に発信されて人目に付くため、SNSやメディアではこれら以外の意見はほとんど見かけません。

 

 では別に与党も野党も強固に支持していない浮動票・無党派層、SNSやメディアで特に発信を行わない層がこういった論争をどう見るかと言えば、「どうでもいい」です。極めて「どうでもいい」と思っています

 政治に興味を持っている人からすれば理解の範疇外かもしれませんが、大抵の人は誰が上に立っていたって構いやしないものです。それが自身の生活を良くする、せめて害さないのであれば

 

浮動票・無党派層へのアピールの仕方

 政治への関心が薄いこの層の「どうでもいい」を理解することは極めて重要です。

 野党が支持率を上げるには与党の弱体化と支持者の離反を目指すのは非効率的かつ非現実的であり、それよりも浮動票・無党派層の取り込みを行うほうが望ましいです。よってこの「どうでもいい」と思っている層が何をもって「どうでもいい」と思っているか、その意味を理解する必要があります。

 「なぜ我々の意見が理解されないのか、なぜ我々の支持率が上がらないのか」は単純な話で、この「どうでもいい」と思っている層に適切なアピールが出来ていないからとしか言えません。

 

 今回の題材であれば、支持者からすれば「どうでもいいとはなんだ、民放に政治や行政が口を出すのは権力の暴走であり、民主主義にとって問題だ」と考えるでしょう。

 ならばそこをアピールしなければならないはずです。無党派層の「どうでもいい」は「俺たちの生活に影響がない限りはどうでもいい」であり、その層から支持を得るためには「俺たちの生活に影響があるのだ」とアピールすべきであって、与党大臣の発言の粗を探し失言を引き出している場合ではありません

 

 もちろん権力闘争は綺麗事では回らず、謀略を用いてでも相手を引き摺り下ろすのは当然の行為です。それは誰だって分かっていますので、支持を得られるかどうかは別として、政敵を攻撃すること自体は少なくとも失点にはなりにくいです。

 ただ、アピールすべきポイントは「与党の瑕疵」ではなく「国民の不利益」です。無党派層にとっては「大臣の失言」なんて「どうでもいい」こと以外の何物でもありません。与党からしても、「じゃあ更迭して別の人を据えよう」となるだけで、攻めている立憲民主党の支持率が伸びることには繋がらないでしょう。無党派層の支持を得るためにはそうではなく「与党のこのやり方は国民へ不利益を与えるのだ」と主張する必要があります。

 

 もっと言えば、支持率を上げたいのであれば「自分たちを選ぶことでの利益」も必要です。「与党はこんな不利益を与える、しかし我々であればこういった利益をもたらすことができる」と主張できれば無党派層の支持を勝ち得ることができます。

 むしろこれが無いと、たとえ失言を引き出して与党の支持率を落とすことが出来たとしても、無党派層からすれば「与党は汚いのか。じゃあ投票するのは止めて、同じような意見を持ったもっとクリーンな所に投票しよう」となるだけです。

 その投票の先は、与党と対立軸にいる立憲民主党ではなく、国民民主党や維新の会になることでしょう。

 

結言

 その点で言えば、放送法の解釈を与党が変更していなかった、と判明した時点で今回は引くべきだったと思います。

 もちろん別筋として行政文書の不正確さや説明責任をもって総務大臣や総務省に矛先を変える手もあるかとは思いますが、一度議論を畳んで仕切り直さないと「論点をすり替えている」と攻撃されるスキを与えてしまいますし、大臣の首が挿げ替わったとしても無党派層が立憲民主党へ投票する理由は生まれません。

 少し贅沢な話ですが、与党の都合によって放送行政が忖度できなくなるような新しい法案まで用意できていれば、立憲民主党の支持率は上がったかもしれません

 

 

余談

 2009年の衆議院選挙で民主党が無党派層の支持を得て政権交代を果たしたのはまさにこの辺りが理由だと思うのですが、今の立憲民主党はそれが出来なくなっているのが少し残念です。