今回は学術的な根拠の一切ない、ただの思い付きを語っていきます。独立行政法人労働政策研究・研修機構が発行する『データブック国際労働比較2023』をパラパラと読んでいた際にふと考えてみただけの、価値のない妄言です。
女性管理職の割合と椅子の数
日本の就業者に占める女性の割合は年々増加しており、現在では諸外国と同等まで高まっています。しかし女性管理職は諸外国と比較すると極めて低い割合です。
出典:データブック国際労働比較|労働政策研究・研修機構(JILPT)
女性の管理職が少ないことは周知されている事実ですが、管理職の椅子自体がどの程度あるのかも気になるところです。
そこで就業者の職業別構成比を見てみると、日本は諸外国と比較してそもそも管理職が少ない傾向にあることが分かります。
出典:データブック国際労働比較|労働政策研究・研修機構(JILPT)
就業者の約10%が管理職であるアメリカやイギリスと比較すると約2%しか管理職にならない日本の就業者にとって管理職は狭き門です。
ここで根拠の無い想像を広げていきますが、管理職になるための評価基準は大抵の場合で能力と貢献度、すなわち優れた才知と長時間労働による組織への献身が評価対象になるかと思います。
もちろん組織によって評価基準自体が異なるでしょうが、少なくとも組織への貢献度は大きく寄与することでしょう。複数名が同等程度の能力を持っているのであれば、恐らく組織の論理として貢献度が高い方の人材を管理職に据えると思います。
このロジックに組織が従う場合、その善し悪しはさておき、貢献度の上位層に辿り着くのは家庭を顧みず長時間労働をこなす男性が多数を占めるのではないでしょうか。
そしてその結果、管理職の椅子が少なく狭き門になっている場合はその門をくぐれる人材がそういった男性ばかりになる、統計的な根拠はありませんがそう推論してみます。
では女性の管理職割合を高めるために組織への貢献度を評価基準から外せばいいかと言えば、それもまた難しいところです。組織が構成員の献身へ報いなくなった場合に生じるのはワーク・モチベーションの低下に他なりません。
もちろん家庭を顧みず長時間労働をこなす男性が現代社会の理想像では決してありませんが、そういった人によって支えられている社会の一部分があることもまた事実であり、その献身をただ無視すればいいわけではないでしょう。
そうなると取るべき施策は貢献の無視ではなく閾値の低減、つまり管理職の椅子を増やして狭き門を開くことで貢献度の評価幅を広げることが効果的ではないかと愚考します。
そうすれば長時間労働をせずとも管理職になれるため人材の幅が広がりますし、管理職を目指して過重労働を自らに強要している一部の労働者の労働環境が改善される効果を期待できるかもしれません。
実際のところはどうか
試しに、『データブック国際労働比較2023』で数値データのある国を用いて、管理職に占める女性の割合と職業別構成比における管理職の比率を図にしてみましょう。
いえ、まあ、分かってはいたことですが、相関としては弱いです。
一応弱い相関関係として、管理職の椅子は多い方が女性管理職の割合も高まるような傾向は若干ありそうです。生存競争よろしく、多様性が確保されるのは多種多様な特性が生存できるリソースがそもそも必要であり、管理職の椅子を増やせば女性管理職を増やす効果がもしかしたら僅かばかりあるかもしれません。
とはいえデンマークやフィンランドのように少ない管理職比率でも高い女性管理職割合を実現している国もありますので、管理職の椅子を増やせば必ずしも女性管理職の割合が高まるとは言えず、むしろ慣習や法、そして文化的な側面のほうが因子としては強いのでしょう。
結言
もっと厳密で真面目な推論をするには各国の管理職比率だけではなくその内訳を分析すべきですし、そもそも国ごとに求めているマネージャーの違いがあることも留意しなければなりません。
管理職の椅子を増やせば女性管理職の割合が高まる可能性は、まあ無くはない、程度の話であり、それよりは別の要素が強い影響を与えているものと結論します。