忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

陰謀論者の特徴

 

 最近、陰謀論に関する記事を書き過ぎているような気がする。

 

学者先生は容赦がない

 昨今世論を騒がせている・・・かは微妙なところですが、時々話題を目にする陰謀論

 そんな陰謀論にハマってしまうのはどんな人なのかと疑問を持ったところ、ちゃんとした学術的アプローチがいくつか見つかったので読んでみました。

 以下のリンクはそのうちの一つです。

 

 これによると、陰謀論を信奉する人は次の傾向を持つとのことです。

  • 一般的信頼は負の相関
  • パラノイド傾向・権威主義的パーソナリティ・敵意とは正の相関
  • 疎外感・アノミーは他の研究では相関有り(本研究では未検討)

(補足)

  • パラノイド傾向・・・被害者意識の強さ
  • 権威主義的パーソナリティ・・・硬直化した思考、強者や権威へ無批判に従い少数派を憎む社会的性格
  • アノミー・・・世界は悪くなっているという信念

 

 詳述すると、まず陰謀論信奉者は他者一般を信頼しない傾向が高いことが分かります。そういった傾向を持つ人は見知らぬ人との交流を広げるよりも信頼できる身内だけで関係性を構築するため、エコーチェンバーに陥りやすくなる危険もあります。

 また被害者意識が強く熟慮が不得手で強者や権威に弱く攻撃性は高く強い疎外感を感じており、世界が悪くなっていると悲観的に考える人は陰謀論信奉者に陥る傾向がある、そのような分析結果です。

 

 なんというか、かなり手厳しい分析です。

 学者先生は容赦がありません。

 

私見

 上記の研究では次の表現を援用して陰謀論を定義しています。

検証されていない、比較的信憑性の低い陰謀を主張することであり、重要な出来事が超常現象的で邪悪で強力な集団によって実行された極秘計画の結果だと主張すること

陰謀論とは、過去または現在の現象に対する代替的な説明であり、権力者集団が利己的で悪意のある目標を達成するために秘密裏に行動していることを非難するもの

 

 この定義と照らし合わせると、陰謀論信奉と他者を信頼しない傾向に相関があることは得心がいきます。他者を信頼する人は知らない他人をそこまで悪し様に考えたりはしないものですので、「邪悪で強力な集団」や「利己的で悪意ある目標」をそもそも想定しないでしょう。

 被害者意識についても分かります。自身が何かしらの外部要因によって損失を被っていると考えた場合、人はそのような外部要因に何かしらの形を与えたがるものであり、その結果として「邪悪で強力な集団」を形式的に想定してしまうのだと思われます。

 熟慮が不得手といった表現も分かりやすいものです。陰謀論を好む人は何も考えていないわけでも何も情報を持っていないわけでもなく、むしろ情報収集は熱心に行います。ただその情報源が偏っていたり情報の出所を精査することには長けておらず、熟慮せずに表面的な情報をそのまま受け取ってしまうことで誤った理解へ陥ることとなります。

 攻撃性に関しては「他人は自分を映す鏡」のようなことわざが説明に適しているでしょう。攻撃性が高い人は他人の攻撃性をも高く見積もるため、自身を攻撃してくる「邪悪で強力な集団」が存在すると考えがちなものです。

 疎外感については他者への信頼との連携がありそうです。他人を信頼せず、しかし他人との繋がりを持ちたいと望む気持ちは狭い範囲での交友関係を好むものであり、その小さな集団は状況によって陰謀論を醸成するエコーチェンバーに成り果てることがあります。

 アノミーは特に相関を取るまでもないような気がします。不思議なことに「世界はどんどん良くなっている」といった陰謀論は見たことがありません。陰謀論は常にアノミーであり、物事の悪化を物語ります。

 

結言

 まあ、陰謀論信奉者はこれらの傾向を持っている、それだけの話です。

 これらの傾向を持つ人が必ずしも陰謀論にハマるわけでもなければ、これらの傾向を持たずとも陰謀論に陥る人もいます。

 重要なのは陰謀論に陥りやすい気質を責めることではありません。人の気質はそう変わらないのですから、それを責めたって無意味です。気質を責めるのではなく、自らが陰謀論へ陥っているのではないかと疑問を持つためのトリガーとして自らの気質を取っ掛かりにする、そんな用途が良いでしょう。

 

 

余談

 上記論文ではさらに言及しにくいポイントも指摘しています。

統合失調症傾向の陽性症状の下位尺度である関係念慮では.232(p<.0001)、魔術的思考では.275(p<.0001)、異常知覚体験では.186(p=.0003)、猜疑心では.114(p=.0293)であった。権威主義的パーソナリティでは.182(p=.0005)、敵意では.207(p<.0001)であった。以上の変数と陰謀論信奉の関係は先行研究と同様に認められた。

 陰謀論信奉者は統合失調症傾向を持つ、とは決して断定的に言えないものの、陰謀論を語る人と関わることがある人は少し留意しておいたほうがよい研究結果だとは思います。

 これは統合失調症が問題や原因だといった話では全く無く統合失調症の方と関わる際には気を付けなければいけない言動があり、それを念頭に陰謀論者にも接する必要がある、批判的な言い方や責めるような表現、安易な妄想の肯定や否定、そのようなやってはいけないタブーがある、そういった話です。