注意を払う。
この言葉は実に言い得て妙です。注意とは金銭と同様に払い渡しをするものだと認識する必要があります。
ちなみに「注意を払う」を英語で言えば「pay attention」です。異なる言語であっても同様に、注意(attention)は支払う(pay)ものだと理解されています。
つまり注意力とはそれぞれの個人が持つ残高のある有限資源であり、過度に浪費しては不足しますし予算を超えてしまえば適切に注意力を発揮することはできません。金銭と同様にその残高を気にしながら消費すべきものだと言えます。
収支
注意力が金銭と同様に扱えるのであれば、その収支についても同様の考え方を援用できるかもしれません。
例えば金銭の残高を増やすのであれば「収入を増やす」か「支出を減らす」ことが有効です。これを注意力に換言すれば、「注意力の回復量を増やす」「注意力の消費量を減らす」とでも言えるでしょうか。
回復量を増やすためには、精神を整える方法を各自で持ち、規則正しい生活や健康な食生活を送ることが最適でしょう。薬剤などで強制的に回復させることもできはしますが、それは持続的ではありません。健全な肉体と健全な精神を保ち、注意力の最大値を増やすことで自然回復量を増やす方向であったほうが良いかと思います。
消費量を減らすためには、あまり余計なことには気を割かず、自身にとって重要かどうかで消費先を取捨選択し、必要に応じて集中を支払う意識を持つことが必要です。それこそ例えばSNSやインターネットを巡回して悪い情報を仕入れること(ドゥーム・スクローリング)は避けたほうが無難でしょう。それは注意力の無駄遣いに他なりません。
注意力の残高管理に関する私的な活用法
最適な管理とは言えないものの、時に役立つ方法についても話してみましょう。
私は高ストレス時に過集中となることが多々ありますが、これは実のところかなり意識的です。
例えば休日に寝食を忘れて本を読み耽る行為などは明確に過集中の状態だと言えますが、それはあえて集中力の残高を消費し切ることでストレッサーに対する余計な注意を意識から排除するために行っています。
高ストレス環境に置かれると人はどうしてもストレッサーに注意を囚われてしまいます。何かしらの嫌な行動や好まない発言が頭をグルグルと駆け巡り、それ以外を考えられなくなるような状態です。それを避けるためにはあえて注意力を枯渇させて、無理にでも何かしらへ注意を割くことで意図してストレッサーから目を背ける、少し諸刃の剣で常用すべき手段ではないものの、時にはそういった方法も効果的だと思われます。
これは注意力を有限資源だとした認識を持っていれば簡単に思い付けますし、実際にそこまで意識していなくとも同様のことをしている人はいることでしょう。
結言
注意は有限資源です。
無駄に濫用していては枯渇してしまい、必要な時に払うことができなくなってしまいます。必要量を確保し、不足していれば補充し、適宜残高を管理して必要に応じて支払うことが必要です。