忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

「企業利益」と「技術者倫理」のどちらも満たすことが「技術力」

 

 エンジニアは「企業利益」と「技術者倫理」のどちらを優先すべきか、なんて議論が先日ネットで巻き起こっていたのを観測しました。

 個人的には「CSR」の一言で終わるような話だと思いますが、少し噛み砕いて考えを整理してみます。

 

技術・品質の定義

 「企業利益」と「技術者倫理」の優先度は普通に考えれば等価です。どちらも満たした製品を開発・生産・販売することが技術力であり、それができることを技術があると言います。どちらかしか優先できない組織はシンプルに技術不足です。

 

 そもそも「技術」や「技術力」は定義の曖昧な言葉だと言えます。最新の技術を使いこなして新しい地平へ辿り着くことを技術力と定義する集団もあれば、より安価でより入手性の高い仕組みを構築することを技術力と定義する集団もいるでしょう。技術によって価値を産み出すことを技術力と呼ぶのであれば、それらは設計技術と生産技術の区分こそあれど等しく技術力です。

 

 このように曖昧な技術力を定義する上で、私は品質を軸に考えています。

 一言で言えば、高品質な製品を産み出す技術こそが技術力です。

 ISO8402の定義より、品質とは「製品またはサービスの特徴及び特性の集合で、明示又は暗示されるニーズを満たす能力に関連するもの」であり、もっと簡単に言えば「顧客の要求を満たす程度」が品質です。

 品質(クオリティ)と性能(パフォーマンス)は明確に分けて考えるべき概念だと認識する必要があります。

 品質とは文字通り性能・価格・入手性・信頼性・安全性・美観などなど顧客が要求する様々な物のであり、どれだけ高性能で高機能であっても価格や安全性が低ければそれは低品質な製品です。顧客が要求する質を全て満たしたものこそが高品質と呼ばれます。

 

 高性能な製品を作れることが技術力なのではなく、高品質な製品を作れることが技術力です。このように技術力を定義すれば、先に述べた曖昧な技術力と比べて意味が明確になると考えます。先進国のように新しい機能を生み出すことも、中国のように既製品をより安価に生産することも、性能の違いはあれどどちらも高品質であり、どちらも技術力があると言えます。

 

「企業利益」と「技術者倫理」はどちらも”質”

 品質の定義からして、「企業が活動を続けるにあたり必要な利益を得られるだけの適切な売価」と「信頼性や安全性に配慮した倫理的に正しい機能」はどちらも昨今の顧客が要求する品質に他なりません。誰も企業が潰れるほど廉価であれとは求めませんし、悪徳な暴利を貪ることも望まず、倫理に配慮していない製品だって同様です。適正な利益を得られる売価で、CSRに配慮した製品こそが現代の顧客が求めるものです。

 「企業利益」と「技術者倫理」はどちらも満たしてこそ高品質であり、その高品質を実現する力こそが「技術力」だと言えます。

 

結言

 「莫大な利益をもたらすがユーザーに危険な製品」も、「利益はまったく出ないが高性能で安全な製品」も、どちらも顧客の要求を満たせていないのだから低品質であり、そのような製品しか作れないのは技術力が乏しい状態です。

 そうではなく、「適度な利益が出て倫理的に問題ない製品」こそが高品質な製品であり、そういった製品を作ることが技術力の証明となります。

 要するにorではなくandです。