忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

具体的にどうやって核武装をする?

 

 率直に言って、無理では?

 

核武装の是非

 近頃、日本のSNSや海外の著名人のオピニオン記事で「日本の核武装論」をちょこちょこ見かけます。

 その理屈は理解できます。日米同盟の安定性に疑義を感じた人々が安全保障策の一つとして核武装を考えているのでしょう。

 実際、核兵器は有効な兵器です。離島や国境を争うような局地戦争・限定戦争には役立ちませんが、全面戦争は抑止する効果を見込めます。

 

 ただ、日本でどうやれば核武装ができるのか、私にはさっぱり分かりません。

 

どうやって運用するかが肝

 核武装をするのであれば核兵器をどこかから買ってくるか自分たちで作るかしかありませんが、核兵器を買うのは政治的にも物理的に無理ですし、作ることだって現実的ではありません。原材料をどうやって密輸するか、どうやってこっそりバレずに濃縮するか、核弾頭は実験が不可避で必ずバレるのでどうやって開き直るか、そもそも核弾頭を載せられる弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの兵器をどう準備するか、それらを相互確証破壊のためにどうやって隠すか、そういったハード面での数多の制約を何事もなく乗り越えられるとは思いません。

 さらに言えば、ブツさえ手に入れればなんとかなるわけでもなく、真面目に核武装を検討したいのであればソフトウェア面での運用を考えなければなりません。

 意思決定者はアメリカやフランスのように大統領や首相が担うべきか中国のように軍事委員会の合議制にするか、意思決定の伝達経路とその先での拒否権はどうするか、フェイルセーフ或いはフェイルデッドリーはどう設計するか、意思決定者の安全を保護する警備体制はどう設計するか、意思決定者が不在の場合はどう権限を設計するか、システム全体のバックアップはどうするか、伝達システムの訓練はどのように行うか、ハードウェアはどのように運用・維持するか、通信システムはどうやって担保するか、不正使用はどうやって防ぐか、スパイや工作員やサイバー攻撃にはどう対処するか、予算はどう編成するか、政治的にどのような立場を国際社会へ表明するか、同盟や各種条約との整合をどう取るか、それらの根拠となる法律はどのように組み立てるか、などなど、日本の核武装を論ずるにはハードウェアよりもソフトウェアに多数の課題があるでしょう

 根本的に、通常兵器を運用する自衛隊ですら法整備が不足していると指摘されている国で、より上位の核兵器は運用できないと考えた方が良いかと思います。

 

結言

 個人的にはそもそも核武装に乗り気ではありません、ただ議論はあって然るべきだと思います。

 そして核武装論となるとどうしても感情的な議論やハードウェアの話に偏重してしまいがちですが、核兵器は持ってさえいれば効果的なお守りではなく、どう運用するかが重要です。その点に関して充分に議論が行われない限り、核武装は現実的ではないと思います。