人が減ることのショックを甘くみてはいけない。
困った困った
少子高齢化の波に呑まれて私の会社もご多分に漏れず人材が減りつつありますが、どうにもその衝撃が充分に社内で理解されていないように感じます。
先日も、技術的な課題に関して「お前ひとりでやろうとするから時間が掛かるんだ、もっと現場の部署に任せて、そっちにできる人材を作れ」と指摘されましたが、正直なところそれが簡単に出来るような時代ではありません。
たしかに技術的な難易度は大したことなく私のような馬鹿でもできることですので、お利口さんが勉強すれば簡単に習得できる範囲です。私だって私以外にできる人が増えるのであれば万々歳で楽ができます。属人的な状態は組織として問題であることも理解していますので解消が必要です。
とはいえ、それを"私"が改善できるかと言えば、まず無理でしょう。
人事権も指揮命令権も無い、なんて小手先の理由だけでなく、そもそも現場サイドにそのような余力が無いためです。
人が減る、それだけで集団は短期的にも長期的にも劣化します。
【短期的な問題】
- 業務量の急増:残った人員に業務が集中し、過重労働や残業が増える。
- 知識やスキルの空白:ノウハウの継承が間に合わず、業務品質が低下する。
- 心理的負担の増加とモチベーションの低下:人が減って仕事が増えることで不公平感や不安感が高まる。
- 信頼低下:業務量が過剰となってレスポンスが遅くなり、外部からの信頼が低下する。
【長期的な問題】
- 風土・文化の変質:これ以上の負担や信頼低下を避けるため「守りの姿勢」が強くなり、挑戦や改善の余力が失われる。
- 人材育成の停滞:教育や研修に避ける余裕がなくなり、若手の成長が阻害される。
- イノベーションの低下:多様な視点や議論の機会が減り、創造的なアイデアが出難くなる。
- 疲労困憊と離職の連鎖:負荷が高止まりすると離職率が高まり、人員不足の悪循環が生じる。
例えば冒頭の事例であれば、ちょっと新しい技術の勉強をして、ちょっと仕事を増やせば対応は可能な問題です。私が設計の現場部署に居た頃も、同じような案件があれば興味本位で受け取って楽しく処理していました。
しかし現在の人員不足の現場では、すでに過重労働の状況かつ保守的な心理状況で新たな仕事を受け入れる余裕が無く、ノウハウの継承も不足しているため学びには時間が掛かり、速やかなレスポンスを期待することもできません。
下手をすれば、私が一人で時間を掛けてやったほうが早く終わるまであります。
まあ、私が現場部署に居た頃もすでに人手不足で、私は変人なので趣味でプライベートの時間に追加業務を処理していただけではありますが、今のご時世にそれを強要するようなことはできません。
トップダウンによる改善が必要
人員不足によって組織風土が劣化してしまった場合は下っ端レベルの改善努力ではどうにもならず、トップダウンでの組織的な対応が不可欠です。
もちろん現場でも応急処置的な対応は可能でしょう。「タスクの優先順位を付ける」ことはその最有力候補です。
しかし人員不足で保守的になった現場は外部から来た仕事を「余計な負担」「後回しにする仕事」と見なしがちになります。その結果、「やるべき仕事」だと納得してもらうための会議や説明が増えて逆に非効率化するという悪循環が生じることすらあります。
私が「ちょっとこの新しい仕事をやってくれない?できる人が居ないなら勉強させて☆」なんて持っていこうものならノーウェイトで断られることでしょう。これを説得する時間を考えたら自分でやったほうがよほど早く終わります。
要するに組織風土を解きほぐすにはボトムアップではなくトップダウンでの改善が必要です。
上の例で言えば、判断基準を明文化したり決定権を明確にすればよく、そしてそれができるのは組織を運営している側だけです。
他にも、例えば分掌の割り振りを見直したり、人事異動で人員の余りを作ったり、事業の選択と集中によるスリム化を行ったりなどなど、人員不足で限界を迎えた部署を救う方法はいくつもあります。
そしてそれらはなんにせよヒト・モノ・カネの投資が必須であって、まずは回復するための余裕を現場に作らなければどうにもなりません。
病気になった人を無理やり動かす方法を考えても効果的ではなく、薬を与えるなり、休みを取らせるなり、何かしらの施策が必要なことは論を俟たないでしょう。
組織だって同じです。
結言
これが存外難しい問題なのは、人が増えれば解決するとは限らないところです。
人を入れれば上手く回るとも限らない以上、ビジネス的に考えても投資判断は当然渋られることになります。
とはいえ人が居ないこと自体は諸悪の根源ですので解消は必要です。
なんとも、ジレンマで困ってしまいます。