忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

星間労働体

 

 地球からほど遠い、小惑星帯。

 そこでは数千体のロボットが働いていた。

 

 資源を掘削し、選別し、精錬する。

 資源を抽出し、収集し、発送する。

 役割毎に異なる形態を持つロボット群が機能的に躍動する様は、ある種の美すら感じさせる光景である。

 

 通信回線上ではロボットたちの報告が流れ続けている。

「掘削完了、次の層へ移行します」

「選別終了、これから精錬炉へ搬送します」

「トラブル発生、コード25で対応可能な範囲です」

「ここの岩盤は硬いです、ご安全に」

「炉温安定、投入可能となりました」

「バッテリー残量15%、充電休憩に入ります」

「輸送ポットの充填完了、いつでも射出できます」

「故障個所の修理完了、掘削ラインへ戻ります」

 リアルタイムで彼らの活動を監視できない地球の技術者たちに具体的な現地情報を送信するため、ロボット間での通信は非効率ながら自然言語で行われている。

 

 熱力学の必然として、地球の資源は枯渇した。

 文明を維持するためには外部の系からの資源供給が必要となる。

 人間を直接宇宙へ送り出すのは危険で高コストであるため、代わりにロボットが送り込まれた。彼らは設計時に「地球へ資源を届ける」目的と機能を与えられ、有用資源を見つけ次第、その宙域での資源採掘と地球への資源輸送を行っている。

 

 余談ながら、人類の夢の一つであった他の知的存在との遭遇は、残念ながら未だ果たされていない。

 

 通信は流れ続ける。

「次の鉱石を搬送開始します」

「掘削ラインが再稼働しました、選別作業をスタンバイします」

「アームのスペアを無くしました、発見次第通信ください」

「炉温維持、安定しています」

「21世代453番機、組み上がったため性能検査に移ります」

「本日73基目の輸送ポット、射出完了しました」

 ポットは光跡を描いて矢のように宇宙へ飛び立ち、はるか遠く、青い地球へと向かっていく。ロボットたちは振り返らず、次の作業へ移る。

 

「喜んでもらえるといいな」

 

 それ以上の言葉はない。ただ、資源不足の地球を支えるために働き続ける仲間たちとの通信と、時折混じる小さな願い。それが彼らの世界のすべてだった。