やめなされ……やめなされ……惨い人格攻撃はやめなされ。
なぜなぜ分析における禁忌
ふと、まとめサイトの記事が気になったのでちょっと語ります。
これに対する意見やコメントで、「上司は”なぜ”うっかりミスをしたのかを聞いているのでは」と、なぜなぜ分析的な見解を述べている方を複数見かけました。
うっかりミスの深掘り。
それはなぜなぜ分析にとって最悪レベルの悪手なので、ダメです。
やっちゃいけません。
ヒューマンエラーの種類と対策の違い
まとめ元の上司の言は、当人の意図は不明ですが恐らくミスの理由、すなわちどのような形態のヒューマンエラーがどう起きたかを気にしているのだと思います。
まあ実際のところは分かりませんが、とりあえずエラーの起こり方を分析するのはなぜなぜ分析にとって妥当です。
ヒューマンエラーは大きく分けて3種類あります。
- ミステイク:意図は正しいが判断を誤るミス
- スリップ:取ろうと思っていた行動が取れなかった場合に生じるミス
- ラプス:取るべき行動を取り忘れた場合に生じるミス
車の運転で例えると、次のような感じです。
- ミステイク:カーナビに従って誤った道を進む
- スリップ:信号でブレーキと間違えてアクセルを踏む
- ラプス:右折時にウインカーを出し忘れる
ミステイクであればマニュアルや教育訓練の見直し、スリップであればインターフェイスの改善、ラプスであれば自動化や警告追加など、どんなヒューマンエラーが生じたかで対策方法は変わりますのでミスの理由、エラーのパターン分析自体は必要です。
ちなみにうっかりミスは「スリップ」と「ラプス」に含まれます。
うっかりミスの根本対策は不可能
部下はミスの原因を「うっかり」と判定しています。
なぜなぜ分析はここで終了していいです。
うっかりミスの原因なんて深掘りする意味はありません。
もちろんうっかりミスの深掘り自体は可能です。
例えば、急な電話が来て見落としたりとか、寝不足でボーっとしてたとか、納期間際でイライラしていたとか、業務量過剰で疲労困憊だったとか、今回うっかりミスをした原因は何かしら見つけられるでしょう。
しかし、ではうっかりミスが生じる原因全てに対策が打てるかと言えば、そんなことは不可能です。
ある程度は対策を打てますが、それこそ寝不足の原因一つ取っても「新作ゲームが出たので夜更かしした」「夫婦喧嘩をして寝付けなかった」「子どもが夜泣きしてしまって寝られなかった」などなど、寝不足になる理由など無数にあります。それら全てに対策を打つことは到底できませんし、今回の原因一つだけに対策を取っても、いずれ別の原因によってうっかりミスは生じます。
ミスが起こる度に原因へ対策を取ってもモグラ叩きになるだけであり、いつまで経ってもミスは起こり得るままです。
それではなぜなぜ分析の本質である「根本原因(真因)への対処による再発防止」とはなりません。
さらに言えば、うっかりミスの原因を追究していくと、必然的に個人の嗜好や人間性、私生活や習慣などに踏み込まざるを得なくなり、突き詰めていくと最終的には個人の人格攻撃へと発展します。
会社や上司が部下の私生活にまで介入することは正当化できませんし、人格攻撃なんて論外です。そんな惨い方向へ発展しかねないため、個人のうっかりミスの原因を追究するのは禁忌です。
つまるところ、
「なぜ間違いが生じたか」
→「ヒューマンエラーです」
「なぜヒューマンエラーが生じたか」
→「うっかりミスです」
ここで打ち止めにし、対策設計へ進むのが健全です。
結言
そもそもスリップやラプスは"無意識下"で生じるヒューマンエラーであり、どれだけ努力して注意していても生じます。意識や集中力で解決できる程度の簡単なエラーではありません。
よってスリップやラプスへの対策では、インターフェイスの改善やクロスチェックの導入、自動化や警告追加など、システム・プロセス側を変える必要があります。
それは明確な以上、なぜうっかりミスをしたかなんてどうでもいいことです。
どんな理由で誰がうっかりミスをしようとも、そのミスが後工程へ流れないようにすることが真の対策であり、時間を掛けて追及すべきポイントなのですから。
余談
ちなみに、真面目に「なぜなぜ分析」をやるならば、
”なぜ”うっかりミスをしたか
ではなく、
”なぜ”うっかりミスが生じた時にこのプロセスは止まるようになっていないのか
です。
プロセスにポカヨケが無いことがその原因で、さらに
”なぜ”ポカヨケの無いプロセスがあるのか
と問えば、
プロセスを設計する時の審査(レビュー)不足・内規の不備が真因と分かります。
対策はプロセス審査の手順を見直すこと。そしてプロセスを構築する際には必ずポカヨケの存在をレビューする規程を作ること。
そうすれば、今後は全てのプロセスでうっかりミスの発生を防ぐための仕組みと横展開ができます。
これが妥当な再発防止の方向であり、意味のあるなぜなぜ分析です。