忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

変化の影響を分析する上での多面的思考を補助するフレームワークの検討

 

 安易に物事を変えないため。

 或いは適切に物事を変えるため。

 保守にも革新にも必要な枠組みとして、見るべき側面を考えてみます。

 

 今回は完成形ではなく、素案レベルの記録です。

 

フレームワークの検討

 なにかしら物事を変えた場合、実際には変えた直接的な部分以外にも様々な側面で影響が出ます。

 例えば、「社会保障費の増大が問題だから削減すれば財政は良くなる」とした場合、実際は財政だけでなく文化・経済・政治・倫理などに正負の大きな影響を及ぼすでしょう。
 このような「何かを変えた時の影響」を分析するためのフレームワークとして、どのような「側面」を考慮すべきかについて、なるべく網羅的な切り口の枠組みがあれば楽なので、ちょっと考えてみたいと思います。

 

影響分析チェックリスト

  1. 経済
    1. 成長率・雇用・生産性への影響
    2. 消費・投資・貯蓄行動の変化
    3. 産業構造・労働市場への波及
    4. 経済格差の拡大・縮小への影響
  2. 財政
    1. 歳入・歳出の短期的変化
    2. 中・長期の財政持続性への影響
    3. 他制度(医療・年金等)への波及
    4. 行政コスト・事務負担の増減
  3. 社会構造
    1. 家族・介護・育児の負担構造への影響
    2. 地域コミュニティの強化・弱体化
    3. 社会的信頼・互助の変化
    4. 階層固定化・移動可能性への影響
  4. 文化
    1. 価値観の変化
    2. 慣習・儀礼・象徴の変容
    3. スティグマ・レッテル・ラベリングの発生
    4. ナラティブの変化
  5. 政治
    1. 政治的正当性・信頼への影響
    2. 政治的分断・対立の激化
    3. 法制度・ガバナンスの歪み
    4. 社会契約への影響
  6. 心理
    1. 不安・希望・怒り・無力感などの変化
    2. メンタルヘルスへの影響
    3. 行動変容(消費・投資・移住・結婚等)
    4. 世代間・属性観の感情的対立
  7. 空間・インフラ
    1. 都市・地方の人口動態への影響
    2. 医療・交通・福祉インフラの維持可能性
    3. 住宅・治安・地域サービスへの波及
    4. 都市vs地方格差の拡大・縮小
  8. 国際
    1. 国際評価・ソフトパワーへの影響
    2. 外国人投資・移民・留学生への影響
    3. 国際基準(人権・教育・福祉等)との整合性
    4. 同盟・外交関係への波及
  9. 技術
    1. 他技術(AI等)との相互作用
    2. 情報環境への影響
    3. デジタル格差の拡大・縮小
    4. 技術選択・研究開発への誘導効果
  10. 倫理
    1. 権利・功利・ケアとの整合性
    2. 弱者保護・尊厳の確保
    3. 社会的タブーの変化
    4. 正当化の根拠
  11. 時間軸・パス依存
    1. 短期・中期・長期の影響の区別
    2. 不可逆性の考慮
    3. 世代間影響・未来世代の負担
    4. 制度の完成・パス依存性
  12. 複雑系
    1. 相互作用の存在の認知 
    2. フィードバックループの有無
    3. 非線形性の有無
    4. 外乱・エマージェンシーの想定
  13. 実証可能性
    1. 定量と定性データの区別
    2. データの偏り・不足・観測可能性
    3. 因果関係の推論とその限界
    4. 評価指標の妥当性
  14. 適応
    1. 制度・文化・行動などの適応可否
    2. 規制回避・抜け道の考慮
    3. 市場・企業の適応可否
    4. 家族・個人の適応可否
  15. 権力・不平等
    1. 誰が利益を得て誰が損をするか
    2. 政治的権力・発言力の偏り
    3. 構造的不平等の強化・緩和
    4. 制度的暴力・不均衡の強化・緩和
  16. 認知負荷
    1. 複雑さによる理解負担
    2. 情報格差の拡大・縮小
    3. 行政手続きの負担
    4. 誤情報・誤解の発生リスク
  17. 復元力
    1. 災害・機器への耐性の強化・弱体化
    2. 冗長性の拡大・縮小
    3. 社会的セーフティネットの拡大・縮小
    4. 社会の回復力の強化・弱体化
  18. 物語
    1. 人生・死生観の意味付けへの影響
    2. 共同体の物語・神話への影響
    3. 社会の空気・象徴的な意味合いの変化
    4. 自己理解・自己肯定感への影響
  19. 制度
    1. 法の支配・透明性・説明責任への影響
    2. 専門家コミュニティの独立性
    3. 行政の裁量の拡大・縮小
    4. 福祉・教育・税制等の理念への影響
  20. 不確実性
    1. 予期せぬ事態の考慮
    2. 尊厳・信頼・制度等の不可逆的な損失の考慮
    3. モデル化できない複雑性の認識
    4. 未知の未知への備え

 

 とりあえずこんな感じでいかがでしょう。

 抜けがあるのは間違いないですが、ある程度の幅は持てたかと思います。でも、もっとシンプルでMECEにしたいところです。

 

結言

 例えば、「社会保障費を削減して財政健全化を図ろう」とした変更を考える場合、人は財政や経済的な影響ばかりについ着目してしまいがちなものです。

 しかし実際には他の様々な側面にも影響を及ぼします。それらを考慮せず安易に物事を変えてしまうことは戒められるべきですし、逆に各種側面へ適切に配慮した効果的な変更であれば積極的に行うべきでしょう。

 

 要するにチェスタトンのフェンスの発展形です。

 チェスタトンのフェンスとは、「現状の背後にある理由が理解されるまでは改革を行うべきではない」という原則です。

In the matter of reforming things, as distinct from deforming them, there is one plain and simple principle; a principle which will probably be called a paradox. There exists in such a case a certain institution or law; let us say, for the sake of simplicity, a fence or gate erected across a road. The more modern type of reformer goes gaily up to it and says, "I don't see the use of this; let us clear it away." To which the more intelligent type of reformer will do well to answer: "If you don't see the use of it, I certainly won't let you clear it away. Go away and think. Then, when you can come back and tell me that you do see the use of it, I may allow you to destroy it."

 

G. K. Chesterton's 1929 book The Thing, in the chapter entitled "The Drift from Domesticity"

 

これは、物事を改良(reform)する話であって、ただ壊して歪める(deform)話ではない場合に当てはまる、ひとつのとてもシンプルな原則です。

恐らく、多くの人はこれを「逆説みたいだ」と言うでしょう。

たとえば、ある制度や法律があるとします。分かりやすく言えば、道を横切るように柵や門が立っている状況だと思ってください。

現代的なタイプの改革者は、そこへ気軽にやって来てこう言います。

「これ、何の意味があるのか分からないな。取り払ってしまおう。」

それに対して、もう少し賢いタイプの改革者はこう答えるべきです。

「もし君がそれの意味を理解していないなら、取り払わせるわけにはいかない。いったん帰って、よく考えてきなさい。そして、なぜそれがそこにあるのか分かったうえで説明できるようになったら、そのとき初めて壊すことを認めるかもしれない。」

 

 「いったん帰って、よく考えてくる」ための適切なフレームワークを構築したいと考えています。

 一朝一夕でできるものではありませんので、少しずつ改良案を考えていくつもりです。