忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

組織を抽象的に理解しようとすると必然的に軍事組織へと行き着く

 

 唐突に、ほどほど以上の規模を持つメーカー企業の役職を軍隊の階級に置き換えてみましょう。

 人によっては逆にややこしくなるでしょうが、私個人としては非常に分かりやすくなります。

 

 今回は、ある意味で思考実験的です。

 

役職と階級

 まずは社長を元帥とおきます。

 組織の目的・政策・資源配分を統括する役割であり、それらに対する最終責任者です。

 取締役・専務・常務クラスは大将です。

 戦域規模の司令官であり、社長の定める政策を戦略に翻訳して全社横断的に戦略的整合性を構築します。

 本部長・事業部長クラスは中将です。

 実際の戦域を動かす軍団の司令官であり、事業単位での予算や人員を統括して戦域の運用を担当します。

 部門長・部長クラスは少将です。

 師団長として、戦域での目標を達成するために作戦を立案して実行可能なオペレーションに落とし込む役割を担っています。

 次長や副部長クラスは大佐です。

 旅団長として上層部の作戦立案を補完するポジションであり、プロジェクトの責任者など実務上でも重要な役割をこなします。

 課長クラスは中佐です。

 大隊長として、上から指示された作戦を戦術単位にまで落とし込み、チーム単位での成果責任を担います。

 主任クラスは少佐です。相応の年代となり役職の席が空くのを待っている人もここに該当するでしょう。

 自ら現場に立ちながら中隊クラスの実務部隊を直接指揮して戦術を実現するために活躍します。

 係長・リーダークラスは大尉です。

 小隊長として現場の実務をこなしつつ、プロジェクトの実行責任や現場の判断を担いながら指揮も行います。

 エース級の主担当者クラスは中尉です。

 分隊長として高度な専門性を持ち、現場や問題解決の主力として活動します。

 大卒以上の若手リーダー候補や新米は少尉です。

 実務を覚えつつ、将来のために部分的な指揮も担当することがあります。

 ベテラン職人や熟練技術者クラスは曹長です。

 現場における最強の実務者として教育や現場管理を担っており、上層部よりも現場を理解しているポジションです。状況によっては「叩き上げ」として幹部候補へと昇格する場合もあります。

 中堅担当者は軍曹です。

 現場の主力として実務の品質を支える組織の基幹となります。

 それ以外の新人や若手は兵です。

 実務の基礎を習得し、経験を積みながら少しずつできる役割を拡大している段階の人が該当します。

 

ビジネス用語と軍事組織

 他にも、株主は政治家や議会、銀行は財務省、サプライヤーは同盟国で競合他社は敵対勢力など、外部ステークホルダーも色々例えることができるでしょう。

 ビジネス環境と軍隊の置き換えは意外と馴染むものです。

 ただ、ビジネス用語にはよく軍事用語が転用されていますが、それは何も「軍事オタクが好む発想」だからではないと私は考えています。そうではなく、組織を抽象的に理解しようとすると必然的に軍事組織へと行き着くものではないでしょうか。 

 

 軍隊とは国家において最も組織最適化が行われています

 企業は失敗しても倒産するだけですが軍隊は失敗すると国家が滅びます。それを避けるため、組織において不可欠な要素が様々な国家の極限環境で実証試験をされてきたと言えるでしょう。指揮命令系統や情報伝達、権限移譲や標準化、人材育成や組織学習、サプライチェーンやリスク管理など、組織最適化の観点は軍隊でも特に重視されている項目です。

 つまり、ビジネス界隈が軍事用語を借用するのは「軍隊が正しいから」「軍事を好むから」などではなく、「軍隊が組織最適化の実験場として極限まで合理化されているため」だと思われます。

 

 実際、一般的な企業組織は軍隊ほど最適化されていません。

 企業は"立場の階層構造"は比較的明白ですが、"抽象度の階層構造"は曖昧になりがちです。社長が現場に口を出したり現場が作戦レベルの判断を強いられたりすることもままあります。軍隊はこれが明確なため、企業の階層構造整理における参考事例として向いています。

 権限委譲と標準化についても軍隊ほど進んでいる組織は少ないでしょう。軍隊は"中央集権”や”トップダウン”のイメージがありますが実際は逆であり、刻一刻と変わる状況変化へ対応するため現場の判断権限が極めて強い組織です。企業が苦手とする「目的の共有」や「判断の委任」の両立において、軍隊の上層部は目的や方針だけを発令し、現場は標準化された委任権限の範囲内で自由に判断できるようになっています。

 他にも、軍隊は民間企業よりも遥かに「人が減る」ことを前提としているため人材育成と組織学習の仕組みも発達していますし、それぞれの人材が担う情報・意思決定・責任の分離も徹底されています。

 

 以上のように、組織の抽象的な理解と最適化を検討していくと、その一つの完成形として軍事組織へ辿り着くと考えます。

 もちろん「ありとあらゆる組織が目指すべき唯一無二の最終形」などではなく、組織は目的に応じて様々な構造や最適化の余地がありますし、そもそも企業ですら軍隊のような単一目的集団ではなく利益・成長・顧客満足・社会貢献など複数の目的を持っている以上、軍隊と同じ組織構造になる必要はありません

 ただ、軍事組織が組織の参考として分かりやすく明確である、それだけの話です。

 

結言

 つまるところ中段で提起したように、ビジネス用語にはよく軍事用語が転用されていますがそれは何も「軍事オタク的な発想」ではなく、組織を抽象的に理解しようとすると必然的に軍事組織へと行き着くものではないだと考えています。