忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

阿修羅が居ない程度の修羅場

 

 あまり赤裸々に書くのもアレなので濁しつつですが、仕事の現状がギャグっぽいのでまとめてみます。

 

偉い人の一声

 きっかけは営業部門の小さなトラブル。ちょっとした失敗と責任問題。全くもって致命的ではないが、組織としてはあまり外聞の良くない低レベルなミス。

 上層部はそれを重大な状況だと判断した。

 ハインリッヒの法則やマーフィーの法則からすれば妥当ではある。小さなトラブルで済んだのは偶然であり、適切な対策を施さなければもっと大きなアクシデントをいずれ引き起こしかねない。

 

 そのような背景の下、ある種の組織体質改善として会社の運用ルール全般の改善が命じられた。

 日々の業務を適切に測定、監視、評価し、改善の螺旋が回ることで問題を未然に防止できる強い組織への変革。「PDCAがちゃんと回る」強い組織への転換。

 会社の運用規程全般の見直しはただでさえ大掛かりだが、さらには内部だけでなく第三者機関の承認も得ることを目的とした一大プロジェクトとして始動した。

 

 とはいえ、工場の生産現場では当たり前に行われている管理ではあり、理屈の上ではそこまで難しいことではない。ボトムアップで展開すればよく、知見を持った人間が手間と時間を掛ければなんとかなる仕事だ。

 それは誰もが分かっており、本社要員だけでなく各事業所からも有識者を集めた全社的なプロジェクトとなった。

 

風の噂

 私が本社に来たのはおよそ2年前。

 仕事は設計から企画へ代わり、組織内でも生産本部から営業本部へ異動した。

 弊社は本部制であり、本部を異動すると色々と変わることが多い。

 とはいえ営業業務をしているわけではなく、席が営業本部にあるだけで仕事の中身は技術系で変わりない。企画部の特性からして何でも屋ではあるが、"技術系の何でも屋"だ。

 

 ちょうどその頃、会社改善プロジェクトが始まったことも風の噂で聞いていた。何かしら頼まれごとが生じるかもと事前に告知はされていたが、特になんの話も来なかった。流石に自ら首を突っ込んでいくほど暇ではないので、気にしないことにした。

 プロジェクトは1年で完了すると計画されていた。

 率直に言ってそれは不可能だろうと周囲に零していたことを覚えている。

 うちの規模の会社で体質改善や運用ルールの改善が1年で終わるわけが無い、軽く見積もっても2,3年は掛かる。プロジェクトメンバーはたしかに知見を持ったメンツだが、プロジェクトが独立していないため片手間での参加となるだろうから、長期プロジェクトになるのは火を見るより明らかだと思われた。

 

 それから1年が経った。

 組織運用の変革だと言うのに、現場の我々にヒアリングや業務変更などの要望が来ないままである。現場の声を拾わずにどうやって改革を進める気なのかは分からなかったが、案の定、単純に進んでいなかったようだ。

 プロジェクトには1年の追加期間が与えられた。誤差のようなものであり、プロジェクト自体の仕組みを変えて専任者を数名は設置しなければ無理だろう。

 上層部がその期限を最終リミットとして設定して圧力を掛けたのかもしれない、風の噂でプロジェクトチームの活動がちょくちょく聞こえるようにはなってきた。

 現場へのヒアリングは、未だ無い。

 

呼び出しと観察

 2年目の終わり頃。

 突如、営業本部で2番目に偉いオジサンから例のプロジェクトの話を振られた。

 ああ、そう言えばそんなこともやっているみたいですね、どうしたんですか、いよいよポシャったんですか。

などと軽口を叩いてみたが、どうやらそうではなさそうだ。

 プロジェクトの仕上げとして4月に第三者機関の審査を受ける、そこにオブザーバーとして参加して欲しい、お前は工場経験が長いから運用規程や外部監査についても詳しいだろう、とのことだった。

 ご指示とあれば、ただ4月は中国出張もあり審査前に状況の確認はできませんので本当に参加するだけになりますよ、まあ受け答えのフォローくらいはしますが。

と説明した上で、帰国後に手ぶらで審査へ参加した。

 

 結果は救いようがなかった。

 ロクに現場のことを見ていない管理体制。本当に工場サイドの人間が口を出したのかも疑わしくなる曖昧で無意味なルール。

 眠くなるほど長い審査の上、当然のように通らず再審査となったが、むしろ温情ですらあろう。私が審査官であれば1時間も掛けずに不合格を叩きつけて直帰している。

 

白羽の矢

 上層部は当然ながら烈火の如きとなり、この2年間いったい何をやっていたのだ、今すぐ立て直せと至上命令が下る。

 最初からそれをやっていれば良かったのではと思うほどにスピード感のある意思決定が行われて、プロジェクトチームの再構築が決定された。

 各本部から、責任者としてお偉いさん1名と実務担当者が数名ずつ抜擢されて、2か月で再審査を通せるレベルに作り直す。

 私個人の概算だが、数年は掛かると思われる仕事。

 前チームが2年掛けてやったことを全てひっくり返して、一からスタート。

 それを2か月で、なんとかしろと。

 実に大胆なプロジェクトだ。

 もちろん専属要員ではなく、片手間でやることになる。

 

 オブザーバーで私を呼んでいた辺り、状況を察していたのだろう。営業本部で2番目に偉いオジサンは案の定、私を営業本部の代表として新チームに供出した。

 まあ、それはいい。

 工場経験は長い。

 運用・管理・規程・標準などの構築に関しては一応プロ級だ。

 期限が短いのも、まあいい。

 今更これ以上後ろにずらせない事情は分かる。

 

 問題は人手不足だ。

 各本部で実務者を数名出せと言っているのに、営業本部は私一名しかいない。

 ただ、これは止むを得ないところもある。猫の手も借りたい時に猫の手は役に立たない

 この仕事を任せるのであれば実務経験で半年以上は欲しいところであり、しかし期限が2か月である以上、教育が必要な人手は居れば居るほど邪魔になる。今必要なのは即戦力を超えるエース級の助力だけだ。素人と一緒にやるくらいならばいっそ分かっている人間が1人でやったほうがよほど早い。うちのボスもそれを重々承知しているからこうなった。

 

 案の定、この懸念は別の形で私に圧し掛かってきた。

 他所の本部は数合わせ的に人手を供出したため、この仕事に必要な実務が出来ない実務者が多数混ざっており、私は自分の本部だけでなく別本部の仕事も巻き取って処理せざるを得ない状況に陥っている。

 流石に限度がある。1人でもやれば出来はするが、今回のボトルネックは納期だ。「完成はしましたがそれは3か月後でした」ではどうにもならない。まずは2か月で確実に終わらせる。そのためには適切なプロジェクトマネジメントが必要だ。

 

 幸いプロジェクトマネジメントは企画屋の本業である。

 さあ、人もタスクもザクザクと調整していこう。他所の管理職だろうが関係ない、誰にどの仕事を割り当てるかも含めて私が差配する。

 文句は出ない、私が一番知見を持っており、明確に私がタスクを人一倍引き受けている。文句を出せるならむしろ出して欲しい。私は喜んで替わってもらうつもりだ。

 

結言

 経験上、この程度の修羅場ならなんとかなりますし、なんとかならなかった場合のワーストシナリオもコントロールの範囲内です。

 よってまだまだ気楽な気持ちで修羅場っています。

 

 企画の本業がだいぶ滞ってしまっていますが、もうこればかりは「上の至上命令につき此方優先にて御免」と言う他ありません。上に言ってくれ、上に。