先日、仕事に疲れて帰宅したところ、玄関を上がった通路にヤモリがいました。ドアを開けると自動的に電気が付くので、靴を脱ぐ前から灰色のヤモリが通路の真ん中に鎮座ましましているのが見えます。体長およそ50mm。大きいのか小さいのかは分かりません。何はともあれ、ヤモリです。
さて、家守、ヤモリです。特に害は無く、むしろ虫を捕食する有益な生き物だったはず、そういえば玄関にいるヤモリは縁起が良いんだったかな、なんて思いつつも、家の中をウロチョロとされるのはあまり好みではないので玄関からお外にお帰りいただこうとの考えに至るまで実に約10秒。疲れている割にはそこそこの思考速度です。
捕獲用の道具があれば穏便にお外へ逃がせるのですが、さすがにヤモリを捕獲する道具は常備していません。とはいえヤモリは貧弱なので素手で掴んでは痛めてしまうかもしれないと思うとなかなか素手での捕獲にも踏み切れず。
やむを得ずヤモリを避けて家に入り、棚に置いてあった団扇を右手に装備。さらには掃除道具置き場を物色し、クイックルワイパーを選択して左手で構える。見事な二刀流です。明らかにベストチョイスではありませんが、吟味するほど道具の種類も無いため仕方がありません。
いざ、クイックルワイパーで進路を塞ぎ、団扇でそっと玄関へ押し込んでドアから逃がす作戦を開始します。
決行してみると、思ったよりも聞き分けがよく素直に玄関口へ向かっていくヤモリ。いいぞヤモリ。そっちはトイレだヤモリ。真っ直ぐ進めヤモリ。その調子だヤモリ。ドアはすぐ目の前だヤモリ。私は残業疲れのハイテンションだぞヤモリ。
しかし、なんということでしょう。調子に乗り過ぎたのか手が滑り、迂闊にもクイックルワイパーでヤモリを轢いてしまいました。
ダメージは恐らく大したことないものの、驚いたのかひっくり返るヤモリ。悲しきかな、驚いたせいで尻尾の自切をするヤモリ。すまんヤモリ。
昼光色に照らされた玄関先の通路。ひっくり返った灰色のヤモリ。クネクネと踊り回る自切された尻尾。白いクイックルワイパーと青い団扇。中腰で眺める茶色の私。
世界は決して平和ではないが、鮮麗だ。
無事に玄関ドアから広大な外界へと旅立ったヤモリに誓います。
次は尻尾を自切せずに済むよう、穏やかに逃がすことを。
結言
結言とは「結論的な事柄を述べた結びの部分」です。
今回は結論なんかありゃしないので、結びようがありません。
「家にヤモリがいたので、外に逃がしました」
それだけの、だからなんだという話です。
とりあえず、一生分の「ヤモリ」を使ったかもしれません。