忘れん坊の外部記憶域

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インバウンドに頼るのではなく、インバウンド"でも"稼ぐことが必要

 インバウンド(外国人による訪日旅行)に関して、時々「衰退」や「途上国」といったワードと絡めてネガティブに用いている方をSNSなどで時々見かけます。

 それに対する反論というほどではありませんが、観光収支に関連する数字を少し見ていきましょう。

 

観光の規模

 こういった事柄については数字で見たほうが現状を把握しやすいものです。

 今回は国連世界観光機関(UNWTO)がまとめているデータを見てみましょう。

 

 UNWTOが公開している比較ソフトの最大比較数が5か国までだったため、G7から「日本」「アメリカ」「イギリス」「フランス」「ドイツ」を代表例として比較してみます。

 

 まずは外国人観光客の訪問数の比較です。

 フランスは観光先進国であり、外国人観光客の訪問数は世界トップです。2022年にはコロナ禍以前の水準へほぼ戻しています。

 ドイツは日本と産業構造が酷似している産業国ですが、観光分野では日本よりも多くの外国人観光客が訪れています。人口比を考慮すれば倍とまではいかないまでも僅差とは言えません。

 日本は他国に比べて外国人観光客が少ない国です。コロナ禍以前は他国へ追い付こうと成長産業に位置付けられていましたが、コロナ禍で落ち込んで以降未だ回復していません。ただし観光局の発表では2023年の外国人観光客はコロナ禍以前の水準まで回復したようです。

 イギリスとアメリカは日本よりも多いものの先進国の中では外国人訪問客が多いとは言えない国です。これは日本と同様に陸続きで接している国が無い(少ない)ことが一因だと言えるでしょう。

 

 次に外国人観光客による収入の比較です。

 フランスは訪問数と比べれば収入は控えめです。ドイツも訪問客の人数からすればあまり高い収益率とは言えません。

 対して日本・イギリス・アメリカは収益率が高い国です。収益自体には物価やサービスの違いなど様々な要因があるものの、外国人観光客がお金を落としたくなるような何かしらがある国だと言えます。

 

 最後に総輸出に占める観光産業の割合です。

 これは各国の輸出産業における観光産業の規模を示しています。 

 この5か国の中で、日本は最下位です。コロナ禍による急減は各国あるものの、イギリスやフランス、アメリカのような先進国では観光産業が5%以上のシェアを持っているものであり、どの国も日本より観光に力を入れて観光で稼いでいることが分かります。

 

結言

 日本では第一次産業と第二次産業を骨子とした産業構造が長いこと維持されてきたためか、第三次産業のインバウンドに対してネガティブな印象を持っている方が少し見受けられます。

 ただ、「観光で稼ぐなんて先進国ではない」とした考えは少し現実とは異なっていて、「普通の先進国は観光でも稼ぐ」ものです。

 ですので、インバウンドを揶揄するよりはインバウンドで稼ぐことにも力を入れる、そういった考えのほうが無難かと思います。