忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

政治・経済

脱成長、反資本主義、コミュニズム、社会主義などへの批判まとめ

カナダ人の哲学教授ジョセフ・ヒース氏が斎藤幸平氏についてのsubstack記事を書いていました。 よくまとまった批評ですのでこれを読んでもらえれば満足です。経済学101が日本語訳を提供してくれています。 とはいえ、個人攻撃になるような言説は好まないので…

選挙の本質と政治権力の正当性

日本で選挙の話題があると、中国人の同僚がよく言うことがあります。 「選挙なんてあまり意味が無いよ、テレビで見たり演説を聞いたりしたってその政治家のことをしっかりと理解できるわけないんだから、ちゃんとした政治家を選べるとは思えないな」 最終的…

日本が非武装中立を宣言したら、第二次太平洋戦争

厳密に言えば戦争未満のワンサイドゲームで終わることになるとは思いますが。 どこと戦争になる? 最近、久しぶりにネット上で非武装中立論を見かけました。 いえ、まあ、誰がどのような考えを持っても自由ですし構わないとは思います。 ただ、私は戦争状態…

自己分析としての政治観

選挙や政変があると世の中はざわつきます。 失望・怒り・諦めの感情が飛び交う中で、ふと思ったのですが、私は選挙結果に対してあまり悲観的になったことがありません。 もちろん同意し難い結果もありますし、理解し難い選択もあります。 ただ、それが「悪」…

「政治が悪い」、ならば「良い政治」とは?

「政治が悪い」とはよく耳にする言葉ですが、じゃあ「良い政治」とは何ぞや。 そんな思考実験をしてみましょう。 良い政治と悪い政治 政治の目的は社会集団の利害や対立を調整して意思決定をもって社会集団の維持や発展させることであり、大雑把に言ってしま…

アメリカ関税問題を語る上での中国の必要性

アメリカ関税問題の根底にあるもの。 根底の問題 私の専門ではないため経済関係の話題を当ブログではあまり取り上げていませんが、昨今のアメリカ関税問題と中国の経済を絡めた話は幾度か取り上げてきました。 ◆中国の経済的脅威とアメリカの関税政策に関す…

政治家に対する制度的フィクション

選挙の前後や政治家の不祥事報道がある度、「政治家なんてみんな信用できない」といった言説が各所で飛び交います。 しかしこれは論理的に誤った一般化であり、あまり適切ではありません。個別の政治家の資質や言動を批判することは民主主義の健全な営みです…

政治家と理想主義―活動家的政治家の危険性

政治とは理想か現実か。 活動家と政治家・理想主義と現実主義 時々議論の対象となるのが「政治家とは理想を語るべきか、現実を語るべきか」です。 私自身は明確に後者を支持する思想ですが、前者の言い分も分かります。より良い未来を政治的に構築するために…

選挙の時期は政治の話題をしたくない

参院選が近付いているためか、各所で政治的な話題が活発になっています。 なので、当ブログではあえてそろそろ政治的な話題を控えることにしましょう。 よってこの記事以降、選挙が終わるまでは特別記したい事件が無い限り政治以外のカテゴリーで記事を書く…

最善の独裁者は幻想に過ぎない

最悪の民主政治と最善の独裁政治のうち、後者はほぼ幻想に等しい。 独裁者を求める民衆 如何なる政治システムであろうとも制度疲労は生じます。民主政治であれば汚職や腐敗、過度な社会的分断やポピュリズムなどが代表的な制度疲労です。 原理主義的な民主主…

政治活動における攻撃的な言説の無意味

当ブログで何度も繰り返してきた話題。 政敵の攻撃は効果が薄い 参院選が近付いているためか、またぞろインターネットの政治界隈が荒れているように思えます。政敵を貶めるための攻撃的な言論が飛び交っていて、あまり宜しくない言論環境です。そういうとこ…

公共的理性を損ねた政治活動が民主主義を阻害する

特定の政治家を見てストレスを感じるのは赤信号。 今回は極めて辛口です。 政治の本質 「政治とは妥協の産物であり、可能性の芸術である」とは、ビスマルクが言ったとされた言葉です。 実際は微妙に違うらしく、以下が正しいとされています。 Politics is th…

国家安全保障の観点と、手段の誤りについて

国際関係の仕事を取り扱う部署にいるためアメリカの関税騒動の影響を大なり小なり受けてしまっており、困ったものです。誰もが日常レベルですら影響を受けるとはいえ、仕事ではそこまで関わりたくなかった。 国家安全保障の観点 様々なメディアがアメリカの…

若年層の投票率に関する検討

若年層の投票率が低いことに関して、それを問題視する意見を各所で見かけます。 ただ、それは少し短絡的な問題提起です。若年層の投票率が低いことそれ自体は事象に過ぎず、投票率が低いことによる悪影響や投票率が低い原因を特定して問題としなければなりま…

民主主義と党派性

そこまで目新しいわけではない話ですが、民主主義政治と党派性はとても難しい関係にあります。民主主義政治、特に間接民主制において党派性は不可欠な要素であり、そして党派性は民主主義を毀損する要因にもなり得るためです。 党派性の意味 党派性とは「主…

具体的にどうやって核武装をする?

率直に言って、無理では? 核武装の是非 近頃、日本のSNSや海外の著名人のオピニオン記事で「日本の核武装論」をちょこちょこ見かけます。 その理屈は理解できます。日米同盟の安定性に疑義を感じた人々が安全保障策の一つとして核武装を考えているのでしょ…

アメリカの言い分と日本の立ち位置

仁義なき国際関係にも見かけ上の仁義を。 アメリカの存在 日本では日米同盟の有効性について意見が割れてきましたが、昨今のNATOやウクライナを見ればアメリカが及ぼす軍事プレゼンスには一定の効果があったと実証的に証明されたと言ってもいいでしょう。 ア…

戦争は暴力で始まり話し合いで終わる

いや、もう、凄く語りたくない。 そんな気持ちではありますが、逆張りの誹りを覚悟で語ります。 お題はロシア・ウクライナ問題についてです。 ああ、本当に語りたくない。個人的な感情と政治的な思考は別で、混同されるのはイヤなのですが、今回は後者の政治…

紛争の解決は「どの残酷さを選ぶか」であり、残酷ではない道は今のところ存在しない

非情さのベクトルに関しての辛辣な見解。 現実的な紛争の解決策 先日、パレスチナ問題の解決策としてガザ地区から住人を移住させる計画があること、そして日本語圏ではあまり見かけませんが海外では国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)にも批判がある…

中国の経済的脅威とアメリカの関税政策に関する所感

アメリカのトランプ大統領が推し進める関税政策に関するニュースを日々見かけます。 これに対してアメリカ国内からの批判が高まるのは妥当なことでしょう。関税は自国内産業の保護として機能しますが同時に対象産業以外の支出を増大させます。要するに間接消…

政治家の任期を伸ばすことの愚かさ

政治に求めるもの。 民主主義にも存在する独裁官 近年、各国でトップの延長論が様々出ています。 少し前であれば安倍総裁の任期延長や習近平主席の任期制限撤廃、プーチン大統領の任期延長改憲などが代表的で、現在はアメリカでトランプ大統領の3選を可能に…

経済に関する論争を見る度に思うこと

自然科学屋からすると経済学は別世界に思える。 何を善とするかの基準 古典的な自然科学は非常に”硬い”学問です。科学的手法と再現性が非常に重視されており、いつ、どこで、誰がやっても同様の結果をもたらす法則を取り扱っています。 そこには意思や思想信…

国際関係を善悪で捉えることの誤り

「中国が軍事(又は経済)で他国へ侵略的な攻勢を行っている」 と聞いて、そんなことはない、そんな悪い国ではないと反発する人を見かけることがあります。 今回はそういった国家間のコンフリクトに関する雑記を。 国際社会の基本 当ブログでも度々述べてきた…

選挙を通じていない権力者の是非

論理ではなく好悪に帰結する話。 政治任用制度 ここ最近見かける言説の一つに次のようなものがあります。 「イーロン・マスクがアメリカで権力者となりつつある。選挙を通じて民衆から選ばれた政治家ではない人間が、金の力で権力を得るのはいかがなものか」…

中国とアメリカに感じた近似性

大国は似通るものなのか。 モザイク状の発展 一週間程度ではありましたが、12月は中国へ出張に行きました。 行った先は広州や重慶のような都会です。上海や北京ほどではないそうですが、さすがに日本とは規模感が異なりまさに大都市といった感じでした。なに…

経済戦争とは正しく戦争である

経済戦争と聞くと、”戦争”を比喩的に捉えてしまう人がいるかもしれません。 しかし、経済戦争とはれっきとした戦争の形態の一つです。具体的に軍事力が動かずとも、直接的に血が流れずとも、安全保障上の方策を駆使せねばならない明確な戦争だと言えます。 …

「民主主義の崩壊」に関する見解

熱狂が去って多少落ち着いてきたかと思いますので、また選挙や民主主義に関連する話をしましょう。 ホットなテーマは火傷しかねないので、冷めてから語るに限ります。 私は猫舌なので。 民主主義とは結果ではなくプロセス 波乱のあった選挙が終わると時々「…

選挙が無くても政治の話をしよう

どこかで注目を集める選挙があると政治の話題が各所で花開きますが、私はひねくれものなのでちょっとズレた感想を持ってしまいます。 「政治はブームではなく、日常であったほうがいいんじゃなかろうか」 月に一度程度の頻度で【政治・経済】のカテゴリに属…

政治と経済は常に両輪である

選挙が終わると結果について様々な論考が為されるものですが、大抵の場合は芯を外した傍論であると私は考えています。 極めて率直に言ってしまえば、選挙の結果は支配的な因子である経済で充分に説明が付くためです。 そもそも経済自体が経世済民、すなわち…

分断されているのは心ではなく、もっと物質的なもの

アメリカ社会を筆頭に、近年では政治的・社会的・文化的な分断が社会問題だとされています。 私のように歴史が好きな人間は時間スケールの捉え方が狂っていますので、「かつての貴族・農奴の封建社会辺りと比べれば現代の分断は遥かにマシではないか」なんて…