忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

感情をベクトルとして捉える

 

 常に役立つ訳では無いし誰にでも有効な訳では無いが、あるとお得な考え方。

 

物理の話

 前段として、スカラーベクトルについてまずは話しましょう。

 と言っても理解するために可換体やらテンソルやらの専門用語が必要となる厳密な意味ではなく、もっとシンプルな高校物理でやる範囲の話です。

 大雑把に言えば、スカラーとは数で、ベクトルとは矢印です。温度やエネルギーなどの大きさを表す数字がスカラーで、そのスカラーがどちらを向いているかの方向性の情報をプラスしたものがベクトルです。

 例えば誰かが走っているとして、その人の質量や速度、運動エネルギーなどはスカラーです。それらに対してスカラー量がどっちの方向に向かっているかの情報を追加した量をベクトルと言います。走っている人が体重100kgであれば、[100kg]と一つの情報を持つのがスカラー、[100kg、北向き]と二つの情報を持つのがベクトルです。

 もちろんこれは厳密ではありませんが大枠を理解するには十分でしょう。

 

感情もベクトル

 私たちが日常的に取り扱う数字はスカラーばかりですのであまりベクトルを意識することは無いと思いますが、実際にはベクトルである場合も多々あります。

 感情は一種のベクトルだと言えるでしょう。怒りや悲しみ、喜びや苦しみといった感情の大きさそれ自体はスカラーだとしても、感情は向かう方向性を持っているためその感情は方向の情報を併せ持つベクトル量です。

 怒りの感情を例にして、それを外向きのベクトルとして他者へ当たり散らす人もいれば、内向きのベクトルとして自責の念に苛まれて自らを加害する方向に発露する人もいるように、感情は単純なスカラーではなく明確な方向性を持ったベクトルだと言っても過言ではないかと思います。

 

メンタルに優しく

 メンタルをやられがちな人はベクトルが内向きな人が多いと思っています。

 例えばネガティブな感情はメンタルに宜しくないとされますが、実際はそのネガティブな感情のスカラー量そのものが精神を阻害するわけではありません。嫌な例示ですが、ネガティブな感情のベクトルを外側の他者に向けて当たり散らして本人はケロリとしている人がいるように、です。

 人の心はそこまで頑丈ではないため、ネガティブに限らずどのような感情であっても内向きのベクトルで常に圧迫されては限界を迎えてしまいます。ポジティブで前向きな感情であっても常に内向きであっては疲れてしまいますし、喜びの感情であっても常に内向きであっては鈍麻してしまいます。

 

 つまるところ、メンタルの強い人はメンタルが頑丈というよりは感情のベクトル操作が上手い人、なのかもしれません。内向きベクトルによる負荷を軽減するため適切に必要量だけを取り込み、必要以上の感情は外向きのベクトルとして発散する、私はそんなイメージを持っています。

 

結言

 自身の抱いた感情はスカラーではなくベクトルであり、向きを操作することが可能である。

 そういった認識を持つと、少しメンタル管理に役立つかもしれません。もちろん感情的に人へ当たり散らせということではありませんが。