忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

技術屋の目線

ビジネス界隈で頻繁に見かける生存者バイアスがつい気になる

先日、「底辺を経験した人は強い」「エリート街道を突き進んできた人よりも底辺を経験したことがある人のほうが強い」という言説を見かけました。 底辺を経験したことが無い人間よりは底辺を知っている人間のほうが底辺への解像度が高くリスクを取って挑戦し…

新しいものが必ずしもベストな選択とは限らない:フロン冷媒を事例として

新しい技術や手法が登場する度、ドラスティックな社会導入を推し進めようとする動きが発生します。 もちろんそれは必ずしも悪いことではなく、新しい技術や手法は現時点で社会に存在している課題や問題を解決する見込みがあり、それらを迅速に導入することは…

そろそろエアコンの試運転をしましょう

私はエアコン屋の回し者ではありませんが、エアコンの試運転は4~5月に行うべきだと推奨します。4~5月がエアコンの試運転には最適な時期です。つまり、そろそろ行うべきです。 私はエアコン屋の回し者ではありませんが、夏本番になると業者が込むからです。…

社会を変革するのは意思(will)か、技術(technology)か

時々ですが、物語やインターネットでの言論において暴力による変革を肯定する言説を見かけます。例えばアメリカ南北戦争や公民権運動といった過去の事例を用いて、変革には暴力が有効であったとする言説です。 それに対する直接的な反対意見、というわけでは…

人工知能チャットボットに感じる「頭の良い友人」くらいの距離感と道具的な効用

昨日はChatGPTを援用して記事を作成してみました。 仕事で活用する方法を模索しようとここしばらくChatGPTを弄っていますが、趣味のブログに使ったのは初めての試みです。 すでに人工知能チャットボットに関しては有識者が多数の見解を示しており今更私がな…

なぜなぜ分析は分岐しない:なぜなぜ分析とロジックツリーの違い

「なぜなぜ分析」とは問題や課題に対して「なぜ?」を何度も繰り返して根本原因を掘り下げていく手法です。 この「なぜなぜ分析」の作成例を書籍やインターネットで探すと、多くの場合で次のような図を用いて解説されています。 しかしながら、このように分…

一足飛びではない合理性と現実論:トヨタイムズを読んでの感想

唐突ですが、気に入った記事を紹介するコーナーをやります。 今回の記事は完全に人様のフンドシです。 トヨタイムズの記事 世界的な潮流として自動車のBEV化が進んでいます。トヨタは日本を代表する自動車メーカーであり、そのためにトヨタのBEV戦略やBEV販…

「やってみなければ分からない」を技術屋は安易に言うべきではない

景気の悪化、財務の悪化など、失敗できる余裕が無くなると組織はリスクテイクではなくリスクヘッジに傾きます。 そしてリスクオフの空気が組織内に広まると組織は手広く様々な事柄を「とりあえずやってみよう」として進めるような前向きな姿勢は取れなくなり…

「日本スゴイ」や「日本駄目だ」は個人的に使い勝手が悪いと考えている理由の言語化

メディアやインターネットでは様々な「日本スゴイ」或いは「日本駄目だ」が日々飛び交っています。 良い側であろうと悪い側であろうと極端な意見を打ち立てれば賛否双方の人を呼び寄せてPV稼ぎになりますので、使い勝手が良い言葉として商業ライターやまとめ…

技術屋から見た問題に対する日米の違い:スタビリティとレジリエンス

先日、一週間程度の短期ですが初めてアメリカへ行きました。 そこで見た日米の社会の違いについて、技術屋目線での感想を少し述べていきます。 日米の社会の違い 日米それぞれの社会における最大の違いは「問題に対する捉え方」だと感じました。結論から言え…

そういえばエンジニアとはあまり名乗らないなと思う機械技術屋の独り言

先日話題になっていたまとめサイトの記事を読んでの感想。 ◆エンジニア飲み会を開催したら意表を突かれた参加者が集まった「世の中いろんな技術者がいるんだな」 - Togetter 曲がりなりにも、エンジニアです 私は工学部を卒業してメーカーで機械設計をしてい…

AIが発達すれば人間が仕事をしなくていい未来は訪れるか

AIでは訪れないと思う人間の戯言。 働かなければ食べていけない世界 この世にはブルシット・ジョブ、すなわち『完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態』があることは事実です。やらなくてもいい仕事、無くなってもいい仕事、それどころか…

100均の製品は品質が良い:品質(クオリティ)と性能(パフォーマンス)の違い

品質(Quality)の概念は意外と奥深く難しいものです。 そのためか、世間、それどころか品質を深く考えなければならない製造業やサービス業においてすら品質に関する誤解が広く蔓延っているような気がしています。 過去にも取り上げたことのある話題ではありま…

ブログと仕事での文章の違い

ブログで毎日適当な文章をネット上に投稿している私ですが、仕事もデスクワークのため、毎日適当な文章を作成しています。 ふと、ブログで書いている文章と仕事で書いている文章にどの程度差があるのか、気になりました。 さっと比較をしてみたいところです…

一つのことに熱中できる人を尊敬している

好奇心には主に二つの種類、拡散的好奇心と特殊的好奇心に分類されます。 色々なことを知りたいと横に広がっていくのが拡散的好奇心であり、あることに対して深く知りたいと縦に伸びていくのが特殊的好奇心です。 そんな、好奇心と、尊敬に関する小話。 好奇…

日本は特殊な国なのか:良い/悪いの評価基準と定性的/定量的の違い

当ブログでは国際的な団体の統計データや国際ランキングを時々紹介しています。様々な国際統計やデータ群を見ることが私の趣味の一つであり、せっかく見たものは誰かに紹介したいという気持ちがあるためです。 また何かしらを客観的に比較する際は定性的な情…

「祈り」に対する捉え方

新年あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いいたします。 年始一つ目の記事には少し重いテーマですが、私が帰省する度にいつも思索へ浮かんでくる「祈り」について、少し考えを述べていきます。 幼い頃の思い出 「母さんはよくお祈りをしてい…

グローバリズムへの個人的な愚痴

久しぶりに愚痴っぽい記事。 先日思い付いたジョーク 「俺の語学力を見くびらないほうがいい、俺は英検三段だぜ」 たぶん勢いで誤魔化せると思います。 グローバルへの憧憬・・・の有無 下らない冗句はさておき、本題に入りましょう。 グローバルな仕事や国際的…

謝罪の暴力性、ヒューマンエラーの罪と罰、『間違い』と『過ち』の区分

謝罪ができる。それはとても立派なことです。当たり前のことのようですが、それがなかなか出来ない大人も世の中にはたくさんいます。 ですが、あえて言いますが、何でもかんでも謝罪するのは勘弁してください。 今回は間違いと謝罪に関する雑多な話をします…

主張をするのであれば、権威に語らせるのではなく自分の言葉で語ること

「稲森和夫が言うには・・・」 「ドラッカー曰く・・・」 「フリードマンの本によれば・・・」 このように、何らかの主張をする際に偉大な先駆者の言葉や結論をそのまま流用して語る人がいます。特にビジネスの分野で見かけることが多く、一部のライターや記事はこれ…

自分の運の善し悪しは自分が決めること:思い出語り

「私って運が良いんだよね」 「俺って運が悪いんだよな」 個々人の運の善し悪しはそれこそ確率的な問題です。10回中8回くらい良い事象を引ける幸運な人もいれば、10回中ほとんど悪い事象しか引けない人もいます。吉凶禍福は人知の及ばない天の定めるもの、と…

スピリチュアルで科学用語を使うのはなぜ?

理系の素朴な疑問。 スピリチュアル系にはまったく詳しくないので、詳しい方にご教授いただきたいと思っていることについて述べていきます。 理系的な態度 私の職場は機械系・電気系のエンジニアがゾロゾロと雁首を揃えており、「理系の巣窟」という空気感で…

サイレントチェンジの恐怖

サイレントチェンジは製造業で用いられている言葉の一つです。 本日はサイレントチェンジの概要と恐怖について、実際に製造業で働く技術屋の目線から語っていきたいと思います。 (前の記事) 工業製品における品質の考え方 職人が手作業で作るモノは一つ一つ…

空調冷熱業界と関連ニュースに関する雑感

ニュースを見ていて思い出した小話 ◆富士通ゼネラル、エアコン国内生産の再開検討 01年以来: 日本経済新聞 空調機器で有名な富士通ゼネラルですが、中国拠点は「富士通将軍」という名称です。勇ましくて結構好きだったりします。(Generalは日本語で全般的、…

善意の製造責任

製造物の欠陥によって損失が生じた場合、製造者の損害賠償責任を定めた法律が多くの国で存在します。日本でも製造物責任法があり、これは欧米に倣ってPL法(Product Liability Law)という名称で呼ばれることもあります。 SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任…

事象と問題はイコールではない

マメ科クズ属のつる植物である葛の繁茂を防ぐ際は、つるを引っこ抜いたり切ったりしても意味が無いことは常識です。 ・・・おそらく常識だと思います。 常識ではないかもしれません。 葛は痩せた土地でも凄まじい速度で成長する植物であり、表面的なつるを取り…

島津さんちの不適切行為に関する私見

2022年8月下旬、島津製作所の子会社において、医療用装置へタイマーを仕掛けて一定期間経過後に意図的な停止を引き起こし、故障を装って有償メンテナンスを行っていた疑惑が報道されました。 その件に対して島津製作所が調査を行った結果、保守点検業務に関…

日本政府のODAや海外投資に関する見解:「ばらまき」は言葉が悪すぎる

日本政府が海外へお金を出すと「海外にばらまくな」という声がメディアからもSNSからも必ずあがります。 普段は特定の意見に対して真正面からの反論はしないよう努めていますが、たまには明確に反対側の意見を提示してみます。 そもそもの拠出度合いと意味 …

部下の手柄は上司のもの、の意味が分からない世間知らず

世間知らずなポンコツ技術屋の疑問。 現実はドラマより奇なり? 先日、愛読しているブログの記事を読んだ際に少しカルチャーショックを受けました。 その部長は、手柄は上司、失敗は部下の責任という考え方。部下たちの言いたいことは通じません。 pleasantb…

教えたがりの是非:ヒューマンファクターの観点を交えて

人に何かを教えるというのはとにかく難しいことだと思います。特に昨今では「教えたがりおじさん」や「マンスプレイニング」というフレーズが存在し、その存在が忌避されている以上、おじさんは安易な気持ちで人に何かを教えるという行為をすべきではない時…