忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

技術者にとって本社への転勤は栄転か否か

 

 技術者にとって本社への転勤は栄転か否か。

 それは人によって異なります。(万能な答え)

 

技術者のキャリアパス

 機械エンジニアのキャリアパスについては説明が長くなるので綺麗に纏まった資料が無いものかと探してみたのですが、「エンジニア キャリアパス」で調べてみても「ITエンジニア」の情報しか出てきませんでした。インターネットの悪いところです、まったくもう。

 そんなわけで、機械エンジニアのキャリアパスについてゆるい感じで話していきましょう。

 

 機械系技術者の多くは企業へ所属して現場の部署に配属されます。

 行先は研究開発部署であったり実際の製品設計部署であったり保守メンテ部署であったりと様々ではありますが、いずれにしても実際に手と頭を動かしてものづくりに携わる前線の部署です。

 稀に間接部門、例えば管理や特許や技術営業などに最初から配属される場合もありますが、それはどちらかと言えばレアケースです。そういった部署は実際の技術を現場で学んでから転属されることのほうが多いかと思います。

 ものづくりの現場を知らない技術者は率直に言ってモノの役にも立ちませんので、最初は若いうちに学んでおくべき必須の経験として前線の部署への配属が多くなります。

 

 前線で働いて技術を学んだ技術者の将来的なキャリアパスは大きく分けると3つ、現場に残るか、管理職になるか、転属するかです。

 現場に残る人は主席やら主任やら何らかの肩書を得て、スペシャリストとしてずっと現場で働き続けます。実力主義社会の技術者は肩書とは別の権威として経験年数を重視する傾向がありますので、現場のベテランおじいちゃんは下手な役職者よりもよほど敬意を集める存在です。対外的な肩書きとしてはそこまで強くありませんが、ある意味で技術者にとっての花形ルートだと言えます。

 管理職になる人はジェネラリストとして成長するために大抵の場合で現場を早めに離れることになります。品質管理・製造・営業などに異動して広い知見を学んだうえで戻ってきて管理職へと就任することが一般的でしょう。現場からは離れることになりますが正統な出世ルートです。

 転属する人は技術者のスキルを現場以外で生かす配置を与えられます。技術を管理する部署や技術営業、企画や知財などなど技術的知見が必要な仕事がメーカー内にはたくさんあり、技術者はどこに行っても何かしらの役に立ちます。このルートは人それぞれで大きくキャリアパスが変わり、転属先のスペシャリストになる人もいれば他部署での経験をもとにジェネラリストとして現場の管理職に戻る人もいます。前者2つに比べればカッチリしていませんが、個人の自由度が高いルートです。

 

本社異動は栄転か否か

 本社への転勤と言えば一般的には「栄転」と呼称されがちですし実際に他部署からはそう言われることもありますが、技術者同士での会話では特にそういった言葉は出てきません。

 なぜならば、技術者がどのキャリアパスを望んでいるかによって本社転勤が栄転かどうかが変わるためです。技術系は営業系や管理系のように「本店」と「支店」で規模が違うのではなく職務内容が完全に変化することから、「本店」への異動が「栄転」になるかどうかは人それぞれ認識が異なります。

 本社に転勤する技術者は、まずほぼ確実にスペシャリストへの道が断たれます。よってスペシャリストになりたい技術者からすれば本社転勤は左遷に他なりません

 管理職を希望している技術者からすれば、本社転勤は不確実なルートです。技術系の管理職になる場合は同事業所・同工場・同センター内での異動のほうが持っている技術を評価されやすいので安心です。本社に異動した場合は元の場所に戻れる保証がありませんし、別の事業所なり工場なりに行くことになった場合は技術の評価がリセットされてしまい管理職になる道が遠のきます。よって管理職を希望する人からすれば本社転勤は理想のルートではありません

 本社転勤が絶対的に是となるのは唯一、転属を望む人のみです。そういった人は技術を極めることよりも技術を活用することに楽しみを見出しているため、現場に居る時よりもむしろ輝くことすらあります。もちろん適性が無く現場へ帰ることもありますが、適性さえあれば自由度が高くキャリアパスとしても他のルートよりも幅広く、何よりも潰しが利くようになります。転属を希望する人にとって本社転勤は理想的なルートの一つです

 

私にとっての本社転勤

 さて、私の話をしましょう。

 私は今のところ設計を担当する現場の技術者ですが、4月からは本社に転勤します。上述で言えば転属ルートです。

 実のところ、私は管理されるよりも自由を好み、職人気質で凝り性のくせに手練れてきたら別のことがやりたくなる飽き性なため、元々からして職場を異動しやすい転属ルートを希望していました

 過去には次のような行き先を希望したことがあります。

 【企画】(ものづくりの上流工程に興味があったため)

 【技術管理】(弊社ではハズレルートだが、窓際でのんびりしたかったため)

 【研修】(教育系の仕事が意外と肌に合っているような気がしたため)

 【技術営業】(口は達者なため)

 統一感の無い感じが、実に私らしいです。

 

 よって技術者にとって本社への転勤が栄転かどうかはまったくもって人によりますが私個人にとっては栄転です。希望が通っているわけですから文句はないどころか楽しみですらあります。

 

結言

 まあ最初は大変でしょうが、いずれ慣れるでしょうし、慣れなければ現場に戻るだけですので、なんとも気楽な気持ちです。