忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

自然エネルギーの反対は、不自然エネルギー?

 小人閑居して不善を為す。

 或いは下手の考え休むに似たり。

 

不自然エネルギー

 最近、ニュースで「自然エネルギー」なる単語を見かけました。

 ふと思ったのですが、自然エネルギーではないエネルギーってなんでしょうね?

 

 自然エネルギーの厳密な定義は無いはずですが、大まかに言えば太陽光や地熱、風力や水力など自然現象から得られるエネルギーを指して自然エネルギーと呼ばれているようです。またバイオマスエネルギーは大枠の「再生可能エネルギー」には含まれますが「自然エネルギー」のカテゴリには含まれないことが一般的です。

 とはいえバイオマスエネルギーだって動植物などの生物由来であり、光合成や発酵や燃焼なども自然の法則に基づいた自然現象だと思うわけで、つまりは自然のエネルギーです。

 

 つまるところ、「再生可能エネルギー」ではなく「自然エネルギー」と別の言葉で区分する意味がどうにも分かりません。

 人の手が加わったかどうかで言えば、太陽光や風力を電気に変換するシステムだって人の手が加わっているような気がしますし、そもそも石油や石炭だって元を辿れば動植物由来の物質であり、広義のバイオマスエネルギーだと言えなくもないでしょう。厳密に言えばバイオマスは「化石燃料を除く」と定義されているので含まれませんが。

 

 カテゴリを区分する行為は分類したほうが意味のある場合に行うものです。例えば「再生可能エネルギー」の反対は化石燃料などの「枯渇性エネルギー」であり、枯渇するか否かでエネルギーを区分することに意味があるからこそ分けられています。

 

 大仰な言い分になりますが、科学的な目線で見れば全てのエネルギーは自然の法則に基づいて生じるものであって、その区分は人が有意に線引きをしているに過ぎず、この世には不自然エネルギーなんて存在しません

 そう考えると「自然エネルギー」は実に意味の捉えにくい、対をなす言葉も無い、ふわふわした言葉ではないでしょうか。

 

自然とはなんぞや

 何が言いたいのかと言えば、「自然」の定義がそもそも極めて恣意的で人それぞれ異なるのですから、自然エネルギーなんて曖昧な言葉を用いることは適切ではないと思っているだけの話です。

 自然と一口に言っても、西洋的な人界の外の世界を自然と呼ぶか、或いは東洋的な人間を含めた因果的必然性の世界を自然と呼ぶかは文化的・宗教的差異が出ます。前者からすれば人為によって生成されたエネルギーは自然ではないでしょうし、後者からすれば人の扱うエネルギーは全て自然でしょう。

 そんな言葉を万人が納得できる厳密な定義へと落とし込むことなんてできませんので、「自然エネルギー」は必然的に曖昧で適当な言葉になってしまいます。それはまったくもって科学的ではありません。万人が同じ意味として理解できなければ科学用語としては失格です。

 

結言

 自然エネルギーは曖昧過ぎるので、ちゃんとした定義のある再生可能エネルギー(Renewable Energy)を使ったほうがいいと思います。

 再生可能エネルギーはちゃんとはっきり「人間の時間スケールにおいて自然に補充される再生可能な資源からのエネルギー」と決まっていますので、明確です。この定義ならば化石燃料が除外されているのも納得というものです。