いよいよ3月も終わりが近づき、気候も仕事も寒暖差の目立つ季節となりました。
この時期の技術屋は、年度内の案件さえちゃんと片付いていれば比較的まったりできる暖かい時期です。
対して最後の最後まで数字や施行の帳尻を合わせなければいけない忙しい人も居るため、職場の温度差はまさに三寒四温です。
・・・上手いことを言ったつもりで言えていません。
もちろん私はまったりしている場合ではなく、異動に備えて業務の引継ぎやデスクの片付けをしなければいけないのですが。
異動に際しては「ええい、後のことなど知らん!」とほっぽり出す人もいらっしゃるとは思いますが、個人的に立つ鳥としては跡を濁さないほうが気分が良いと言いますか、なにも転職するわけでもなく、むしろ頻繁に古巣の現場部署へ訪問して仕事の依頼をする側に異動するわけで、今の私は跡を濁している場合じゃありません。誠心誠意全力で奇麗にしておかないと後々に支障を来たします。
人の機微には鈍感ですが、さすがに人の怨嗟を軽んじるほどではありませんので、波風を立てないようふわっと飛び立つことが喫緊の課題です。
日々の積み重ねは役に立つ
とはいえ、華麗に飛び立つと言ってもそこまでヘヴィな作業はありません。
【電子データ】:もともと案件やテーマごとに整理してサーバに保管しているので、新しくやることはない
【紙の書類】:もともと電子化を進めていたので紙で持っているものは仕掛かり案件のみで、それも全部個別にクリアファイルで整理してあるのでそのファイルを渡すだけ
【技術伝承】:三桁に及ぶ教育資料を作ってあるので、後でゆっくりと読んでもらうだけ
【引っ越し】:テキストや文房具、工具やぬいぐるみなどをダンボールにぶち込んで社内便で本社に送るだけ
【不要なもの】:廃棄済み
一応、常日頃の仕事の心得として「明日私が交通事故で死んでもなんとかなる」ような準備をしてあったので、特に大変なことはありません。むしろ思っていたよりもやることが無くてびっくりしているくらいです。
本当は教育資料を使って時間を掛けて後任に技術を教授したかったのですが、それをするには時間が無いので諦めて後任の自助努力に期待することとします。引き継ぐ時間が無いのは私のせいではなく会社のせいなので、さすがにどうにもなりません。
唯一やるべきことは、そう。闇が深い案件の抹殺です。
気分はスパイや忍者です。
闇を引っ張り出す
闇が深い案件と言いましても、何も反社会的であったり法に触れたりするような過激なものではなく、色々と複雑な事情によって闇へ葬らざるを得なかった案件を指します。
例えば、お偉いさんの気分で立ち上がった肝いり案件だったものの、明らかに採算が取れないことが分かったので、ほとぼりが冷めるまで引き出しの奥に仕舞い込んで眠らせていた案件、などです。
私もサラリーマンの習性として上の命令へ従順に従い保身を図る必要があることは重々理解しているものの、とはいえ全体最適を考えれば損失を避けることもまた是だと考えます。もちろん我が身を蔑ろにしているわけではなく、だからこその隠蔽です。
言い出しっぺは忘れて気にもせず、関係各所も余計な仕事に煩わされず、全体としても損の無い、表沙汰にしたとしても誰も幸せにならない案件。
そんなしょうもない闇深案件をそこそこの数抱えていますので、これをスパイや忍者が証拠を隠滅するような気分で始末しておかねばなりません。
かつて前任者が仕舞い込んでいた爆弾・地雷をいくつか踏み抜いて焼かれてきた身としては後任にその手の案件を引き継がせることは忍びないです。ああ、いえ、忍びあります。気分は忍者ですので。
なに、もはや事情を知っている人はほとんど残っていません。長年熟成させた結果、当時のお偉いさんはすでに定年退職済みです。
そんな案件を後任に引き継いだって仕方がないのですから、さっと処分してしまいましょう。
立つ鳥が跡を濁さない方法は簡単で、濁りの原因である汚泥を浚渫してしまえばいいだけです。そうすればどう飛び立とうとも水面は澄んだままでしょう。
結言
デスクの片づけをしていたら二桁の闇深案件が引き出しの奥のほうから転がり出てきたので、ちょっと笑いました。
一番新しくても5年前です。ここ数年はそもそも闇深案件が生まれないよう発生時に潰していたので、残っているのは古いものだけです。
さあ、ちょうどいい機会なので、捨てましょう捨てましょう。闇の深い案件を闇に葬りましょう。