忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

組織の機能不全は担当者を責めても仕方がない

「管理部署が動いてくれないんです、先日もこんなことがあったんですよ」

「ああ、まあ、それは明らかに君の仕事ではないね。就業規則にある業務分掌にも明記されているけど、それはあの部署の本業だから君がやっちゃいけないよ。とはいえ現実に問題は解決しないといけないから君が動くのは仕方がないけども」

「あの部署の人たちはなんで動いてくれないんですかね」

「まあ、担当者レベルにはどうにもならないから彼らを責めてもしょうがないさ」

 

責任は権威勾配の設計者にある

「人情じゃなく理屈の面から一応フォローしておくと、管理系の部署が機能するかどうかは経営陣の意向次第だから、担当者や個人を責めても仕方がないし、あんまり意味がないよ。

 分かりやすい事例としては製造業における昨今の品質不正問題が挙げられるかな。品質第一を謳っているような企業でも、実際には品質保証部門の牽制機能が働かずに設計・製造・営業が不正を起こしているパターンだね。

 なぜ牽制機能が働かなかったかと言えばそれはもう単純な話で、設計や製造、営業とかの部門のほうが発言力が強いから。もう少し難しい言葉を使えば権威勾配が大きすぎたからだね。

 大抵の組織は縦割りやセクショナリズムが生じるから、普通は他部門に口を出すのは憚られるようになる。それは仕方がないことなんだけど、だからこそ本当に経営陣が品質第一を考えているのであれば品質保証部門に一番発言力が強い人を配置しないといけない。そうしないと牽制機能なんて果たしようがないんだ。

 さらに言えば、管理系の部署は直接利益を生んでいない間接部門だから、ただでさえ組織内での発言力や権威が低くなりがちなんだけど、だからこそそういった部署には発言力がある人を配置しないといけない。そうしないと絶対に機能不全に陥る。実際に売り上げを作っている営業部門や商品を生産している生産部門には口を出せなくなる。

 そういった管理系部署に権威者を配置しないということは、「品質よりも生産や売上のほうが優先である」と経営陣が暗にメッセージを発しているのと同義だとすら言えるんだ。そんなメッセージが発信されている組織で管理部署が能動的に責任を引き受けて行動できるわけがないよね。だって何かあったら立場が弱いから責任を被らされるのは目に見えてるんだから、保守的かつ内向的になるし職務放棄と言われようと他部署には口を出さなくなるさ。たとえルールや規程があっても人はそれだけで動くわけではないことは忘れちゃいけない。人間関係はとても重要だよ。

 不正をやらかした企業はそういった人員配置をせずに他の部署へ強い人を配置していた、これが根本原因なんだ。
 これは口を出せない管理部門の人たちの問題というよりは、そのような人員配置をしている経営陣の課題だよ。だって組織のデザインをするのも人員配置に対する責任も経営陣のものだからね。

 そうだね、例えば、うちで言えば○○さん、そうそう、あのぱっと見ヤクザにしか見えない強面おじさんとか、物怖じしない君のところの△△さんとかをあの部署に配置すれば、どう考えてもバリバリ機能するようになると思わない?そうしていないということは、そういうことなんです。

 気持ちは分かるけど、何はともあれ担当者を責めてもしょうがないから勘弁してあげて欲しいな」

 

結言

 組織の機能がどの程度働くかはどこに誰を配置するかによって決まります。組織の質は人事によって決まると言っても過言ではありません。

 だからこそ人員配置には目的に沿った精査と全体を見た熟慮が不可欠であり、組織の機能不全は現場の担当者ではなく組織のデザイナーが責を負うべき案件です。

 

 

余談

 個人レベルで機能していない人もいますが、それはまた別のお話。