忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

組織の規模によっては人間関係が致命的な意味を持つ

 

 所属する組織の規模によって軽重が変わる話。

 

情報系のサイトを色々見ている

 私も一応は技術畑の人間ですので、情報収集の一環として様々な情報サイトを閲覧しています。日経クロステックはそのうちの一つです。さまざまな産業分野に向けた技術系デジタルメディアと謳うだけあって、多様な業界の情報が掲載されています。

 

 日経クロステックではニュース以外にも様々なコラムや小説があり、少し厳しく言えばピンキリではありますが、なかなかに楽しめる記事が多数あります。

 例えば、以下のリンクは現在連載中の連載小説です。

 本小説は若手主人公の疑問にベテランが答えていく形式で話が進んでいきます。

 小説としては相当軽い部類に入りますし内容もそこまで深いものではありませんが、恐らく同業者の方は「あるあるネタ」として楽しめるでしょう。

 若手の疑問に対するベテランの答えは必ずしも絶対的な正解とは限らないものですが、そのきっかけとなる若手の疑問は業界を問わないものが多いため、私は若手の疑問FAQ集のような見方で楽しんでいます。

 

 ただ、1話につき1つの疑問に回答する形で進んでいくこの連載小説ですが、以下の疑問への回答は単純な賛否だけでは計れないような気がしました。

 この回の話では、転職するかどうかに悩む主人公に対してベテランエンジニアが「転職するならプラス要素を5つ数えてから」「上司との相性が悪いことは転職理由とするには弱い」とアドバイスをしています。

 前者の言説は有名な話ですのでご存じの方も多いでしょう。

 後者もよく言われる話です。相性が合わない人間はどこにだって、それこそ転職先にだって必ず居るものですし、組織では人事異動が行われるのでいずれ上司だって別の部署に異動するのだからそれまで我慢すればいい、これはある程度の範囲で事実です。

 

組織の規模によっては

 ただ、「上司との相性が悪いことは転職理由とするには弱い」は必ずしも万人に当てはまるアドバイスではありません。

 何故ならばこれは大企業でのみ適用される理屈だからです。

 大企業では人事異動が頻繁に行われます。担当者よりも管理職のほうがよほどコロコロ変わっていきますので、数年程度我慢していれば相性の悪い上司が先に居なくなるでしょう。自身の異動だってありますし同僚だって異動していきます。

 よって組織の規模が大きければ人間関係はある程度の頻度で更新されていくものですので、上司との相性が悪いことは確かに転職理由としては弱いです。

 

 ですが、この理屈は中小企業では成り立ちません。

 理由は単純に、中小企業ではそこまで活発な人事異動が行われないからです。

 人事異動は人員の育成・マンネリ防止・癒着防止・セクショナリズムの解消・後進の育成など様々な理由を持って行われます。長い目で見れば大きな利得になりますが、しかし業務を習熟した人員を異動させることは目先の損失が必然的に生じます。

 よって大企業のような人数に余裕があり目先の損失を受け入れられる体力がある組織でしか人事異動を活発に行うことはできません。

 中小企業は人数に余裕がなく企業体力もそこまで無いことが多いものです。そのためにあまり人事異動を行わない傾向があります。業務に熟練した担当者は可能であれば定年まで同じ場所に配置し続けますし、管理職も同様です。上司部下の関係が10年20年続くことだってざらです。

 つまり、組織は人事異動が生じるのでいずれ上司だって別の部署に異動するのだからそれまで我慢すればいいとする前提が、中小企業の人事では崩れます。

 

結言

 人間関係はとても重要です。どれだけ好きな仕事であっても同僚や上司部下と相性が合わなければ職場は辛いものになります。

 だからこそ、「上司との相性が悪いことは転職理由とするには弱い」と断定することは難しいです。それは人間関係のリフレッシュがどの程度の頻度で生じるかに依存するものであり、つまりは組織の規模と方針によって回答が変わります。

 それこそ、家族経営の中小企業で、社長の息子が上司でとなれば、その人との上司部下での付き合いは一生ものになります。それを許容できるかどうかは、まあ、相性がとても重要になるのではないかと。

 

 

余談

 日経クロステックの中で一番好きな連載記事をついでに紹介します。

 10年以上前の連載記事ですが、設計屋と購買屋は必読です。