今までの社会人人生の中で一番しんどかったのが社会人3年生の時でした。まだヒヨコを卒業しきれていない状況での先輩の戦線離脱とそれに伴う業務量の爆増。その話の詳細は過去の記事を見ていただくとして、今回はその後の話をします。
社会人4年生
社会人4年目は比較的穏やかな日々だったといえます。課長が異動したり先輩が昇進して課長になったという程度の変化はありましたが、3年目の頃に3から25と爆増した担当製品にもようやく慣れてなんとか仕事をこなせるようになっていました。残念なことに欠員分の補充は無く、課長になった先輩の穴埋めとして異動してきた新たな先輩と私、事務方を除けば2名しかいない小規模チームのままとはいえ、なんとか仕事は回っていました。
ややこしいので登場人物を示しておきましょう。
B課長は私が入社する前から同じ製品群をずっと扱っているプロフェッショナルです。その昇進に伴い新たにD先輩が異動してきましたが、B課長が元々こなしていた業務量が多く1人では厳しかったためB課長と二人三脚で業務を回していました。仕事の分配でいうとB課長+D先輩が35、私が25です。
私は私で自分の仕事で手一杯だったこともあり、課長と先輩がどんな仕事をしていたのかを当時はさっぱり把握していませんでした。それぞれの担当製品群は例えるならエアコンと冷蔵庫くらいの違いがあります。どっちも冷やすものではあるから同じチームにしてるけど正直同じものではないよね、というくらいの違いです。
忍び寄る人事異動
課長のフォローがあるとはいえ2名の小規模チームではあまりにも余裕が無いため、来年度こそは人員補充があるだろうと思っていた4年目の冬、何故か誰の人事情報も流れてこないまま3月最終週となり、もう来年度も諦めるかと思っていた寒い冬のある日。トボトボと歩いてきたB課長に声を掛けられました。
別にいつもテンションが高い人ではないけど、どうにも今日は特にテンションが低い様子。あまり良い予感はしないものの、とりあえず個室で話を聞くことに。
「今更ながら来年度の人事が決まったので伝達する。まず、若手が一人異動してくる」
「やったじゃないですか、これで業務が分散できますね」
「次に、Dが他所の部署に異動する」
「やってないじゃないですか、差し引き0どころか中堅から若手に戦力ダウンですよそれじゃあ」
「最後に、僕も異動する。代わりの課長はまったく違うところから来る」
「はい?じゃあ課長と先輩がやってる35製品はどうするんですか?」
「悪いが若手が育つまでは35+25を全部やってくれ」
「35のほうは正直まったく知らないのでそれキツいですよ」
「今日の日付から分かるように、業務引き継ぎの時間は無い。35のほうは自力でなんとかしつつ、新しい課長と若手にも教育を頼む」
「なるほど。つまり数日後、全員素人状態で新年度を迎えるわけですね」
「上の意向だから仕方がない」
「置き去りは寂しいのでせめてどこかに飛ばしてもらえません?」
「後は任せた」
つまり、こういうことです。戦力ダウンどころか壊滅判定です。
【問1】人事異動がモメて決まるのが遅くなった結果、3月の最終週にこの人事を伝えられた時の私の気持ちを答えよ。(配点:10点)
神は私を見捨てていなかった
とはいえ3年目の時は業務量が8倍以上の増加率だったのに対して今回は2倍ちょっとの増加だから、まあなんとかなるだろうという自信はありました。実際かなり余裕を持って数日で適応することができたので、3年目の経験は無駄ではなかったです。
そうやって現人員で回せるようにしてしまうから欠員が補充されないんだというのは分かってはいるのです。しかしながらじゃあ止めていいのかというと結局他部署から攻撃の的にされるのは状況を知らない新参課長ではなく私であることは明白だったため、やらざるを得なかったのです。
新参課長への教育はかなりの手間です。今までは互いに勝手知ったる上司だったためちょっとした事なら口頭や書類1枚で済んでいたものが、新しい課長には経緯や説明資料を付け足さねばならず書類の山が必要になります。正直35に対応するよりもよっぽど大変です。
この状況下でさらに若手への教育も兼任とか、どう考えても手が回らないがな、相当呼吸の合うタイプじゃないとどうにもならんぞ、と思っていました。OJTで最も重要なのは互いの能力や教育内容などではなく相性とコミュニケーションです。どれだけ優れた指導者、そしてどれだけ優秀な若者であっても馬が合わなければ崩壊してしまうのです。そうならないようどれだけコミュニケーションコストを割けるかがOJTの成否を決めると考えています。
しかしながら、ここが神様の采配の為所。ついでとばかりに新製品を引っ提げてR&D部署からやってきた若者は、私と誕生日が同じ、中学高校が同じ、部活も同じ、血液型も同じ、高校入試の点数まで同じという驚くほど呼吸の合うタイプでした。
そう、以前にも取り上げた運命的奇縁の友人が後輩として隣の席にやってきたのです。
彼とは呼吸が合うどころか阿吽の呼吸、好きなことや嫌いなことどころか互いに親兄弟の顔や実家の構造まで把握し尽しています。何を求めているか、何を求められているかすらいちいち言葉で確認する必要はありません。コミュニケーションコストはもはやマイナスです。
いや、ホント、ピカピカの一年生を渡されていたらもうどうにもならなかったです。おかげ様で5年目の動乱も無事生き残ることができました。サンキュー神様。次はもう少し穏便な人事を頼むよ。
余談
私が属人性の排除や有給休暇をいつでも取れるような冗長性のある業務配分について一家言を持った記事をいくつも書いているのはこのような経験があるからです。誰が抜けても最低限回せるようにしておかないと、残った人が辛いのです。
ちなみにこの2年後にまたチームが一新されて、また私一人だけ残されます。いい加減にしてほしいものです。