忘れん坊の外部記憶域

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仕事を抱え込まない、が避けられない場合はどうすれば?

 ビジネス系の記事を見ているとよく見かけるのが「仕事を抱え込むのはよくありません、チームで分け合ったり人に頼みましょう」という言葉です。まあ、そうですよね。間違いなく正しい理屈であり、隙の無い正論です。

 仕事を抱え込んでしまう人は主に二つの傾向があります。一つはとても優秀で仕事が集中しすぎたりその人にしかできない仕事がある場合、もう一つは人に頼むのが苦手であったり断るのが苦手である場合です。

 そのような状況は上司が上手いこと仕事を割り振ってあげたり仕事を断ったりすることで解決できます。キャパオーバーして倒れたりパンクしてしまう前にフォローすることが可能な、まだ対処できる事態です。最悪仕事を放り出してさえもらえれば誰かが拾って処理することもできます。

 

どうにもならない場合もある

 正直なところ、この程度は全然イージーな話だと思っています。何故ならば上司のフォローがあるとか周りが助けるとかいったことが可能だというのは組織に余裕・余力がある証拠であり、相対的に恵まれた状況だからです。

 組織やチームによっては真っ当な上司が居なかったり同僚に仕事を回せるような状況でなかったり、そもそもチームが存在せずに単独で仕事をしていたりします。大企業でも部署によってはそういう事態に陥ることもありますが、中小企業の場合はそのような状況が日常茶飯事です。それこそ1人総務、なんて優しいもので、1人総務兼1人人事兼1人秘書なんてことだってあるでしょう。

総務は1人で十分こなせる:日経ビジネス電子版

 そのような状況の人に「仕事を抱え込まず人に頼みましょう」と正論を言ったってどうにもなりません。そもそも渡す人が居ないのですから。仕事を抱え込んでいるのではなく抱え込まざるを得ない状況だということです。

 

デメリットが大き過ぎる

 一人にたくさん仕事を割り当てて抱え込ませることのメリットは単純明快、人件費の削減です。仕事量に応じて複数人雇うことに比べれば目に見えるコストカットとなります。

 しかしながら実際はその程度のメリットよりもデメリットの方が遥かに大きいため、一人に仕事をさせることは出来る限り辞めるべきだと考えます。

 まず第一に突発的な事態への対応が出来なくなります。稀な事例としては交通事故や急死、そこまで行かなくても感染症や病気によって仕事が出来なくなることは充分に起こりうるリスクとして考えなければいけません。

 また事業の発展や周辺環境の変化によって仕事量が膨れ上がった時に対処するためのバッファが持てません。切羽詰まり余裕が無い状況で行われた仕事は当然の流れとして品質の低下を招きます。

 さらに言えば一人で仕事をするような環境では仕事の属人性が跳ね上がっていきます。他の人にも分かるようにマニュアル化したり、誰でも作業ができるように仕組みを整えるインセンティブが発生しないのですから、自分が一番やりやすい自分だけのやり方で仕事をするのは当然です。それが続いて仕事が属人化してしまうと誰もその仕事を引き継げなくなってしまいます。

 つまるところ一人で仕事をしていて抱え込まざるを得ない状況というのは事業の継続性に極めて重大な不確実性をもたらすというデメリットがあります。

 

事情は分かるけども・・・

 お金が無いから人を雇えないというような事情は分かるのですが、それならば多能工化するなりなんなりの施策を打つべきです。とにかく仕事を一人でやらせることはデメリットが大き過ぎます。明日にでも事業が停止して廃業することになってもいいという刹那的な考えで経営されているのであればもう仕方がありませんが、そのような考えの企業と真っ当に商売しようとする企業は少ないでしょう。

 金融危機や東日本大震災、米中貿易摩擦といった様々な社会情勢による影響を受けて、現在の企業はBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を重視するようになりました。BCPにおいて人材不足は大きなリスク要因とされます。人材不足は人手不足倒産のみでなく、平時の商売上でもリスク要因だということです。誰だって突然廃業するような可能性のある企業とは取引したくはありません。

 

結論

 仕事を人に振れる環境であるのに振らずに抱え込む人はその人個人の改善を目指すのも良いかとは思いますが、そもそも仕事を物理的に振りようが無い環境に居る人もいます。

 そのため、十把一絡げに「仕事を抱え込む人が悪い」と言うのは可哀そうです。それが出来るような環境であれば苦労はしないのですから。それは抱え込まざるを得ない個人が悪いのではなく、また当事者に解決できるような問題でもありません。解決を求めるべきは組織や経営層です。