「この部分なんだけど、これじゃ少し分かりにくいかな、こう変えるのはどうだろう?」
もう少し遠回しであったり直截的であったりする場合もあるでしょうが、仕事の報告書なりプレゼン資料なり、そういった類における仕事の成果物をチェックされる際によく言われるような系統の言葉でしょう。
このような指摘を受けた際、若手は申し訳なさそうな顔をしないほうが望ましいと、そう考えています。できる限りでいいので明るい態度を取ることが理想的です。
チェックは上司や先輩の仕事
仕事では必ず上層部への進捗報告や他部署への協業依頼などを目的としての情報伝達が行われるため、その組織で伝わる言葉を理解し、分かりやすい表現技法を用いて、確実に情報を伝える能力が求められます。効率的な情報伝達技術を構成員が身につけることはどのような組織においても重要です。
その詳細は組織によって異なることから、残念ながら学校で教えることはできません。よって上司や先輩は若手の成果物に対してチェックをすることが彼らの職掌に含まれます。その成果物が組織の求める情報伝達技術を満たしているかを確認し、不足していれば指導してできるようにすることが彼らの仕事ということです。
つまり新人や若手の成果物の質が低いということは上司や先輩の教育が悪いということです。そのため、若手の仕事が駄目な場合に上や他所からクレームを受けるのは上司や先輩となります。
怒っているわけじゃないよ
よって上司や先輩は若手が思うよりも真剣に成果物のチェックを行います。誰だってクレームは受けたくありませんので。
ただ、真剣な分、少し表現が厳しかったり詰問するような態度で指摘してしまう人もいるかもしれません。冒頭の表現はまだ優しい方で、実際は「この書き方じゃわかんないよ、書き直して」なんてぶっきらぼうなリジェクトをする人もいるでしょう。
その際、若手は申し訳なさそうな顔をする必要は一切ありません。
怒られている時に申し訳ない態度を取ることはある種の処世術です。そうすることで反省している雰囲気を構築して説教や小言の時間短縮を狙うのは有効な手法と言えます。
ただ、成果物のチェックでは別に怒っているわけではないのです。真剣であるため少し態度が硬く見えるでしょうが、そのチェックは指導を目的とした仕事でやっているだけで、それこそ学校の先生の採点と同じです。小学校の漢字テストで「×、とめ、はねをちゃんと書くこと」と赤ペンが入っていても先生が怒っているわけではないように、別に上司や先輩は怒ってなんていません。
明るい子が好まれる理由
若手が申し訳なさそうな顔をすることはデメリットがあります。指導する側も<なんだか申し訳ない空気>になるのです。
たかが空気と侮ってはいけません。<なんだか申し訳ない空気>は想像以上に恐ろしいものです。
若手の仕事は指導を受けて成長することです。しかしその場が<なんだか申し訳ない空気>になってしまうと、上司や先輩も積極的に指導しにくくなり、若手はより少ない教育しか受けることができなくなってしまいます。
そうなると、若手は成長できないから成果物の質がなかなか上がらない、上司や先輩は上や他所からクレームを受けるので能率が落ちる、能率が落ちると指導に時間を取る余裕が無くなって若手の成長がさらに阻害される、という誰も幸せにならない悪循環に陥ってしまうのです。
とにかく効率的な仕事をしなければいけないなんて意識が高いことを言いたいわけではないのですが、ただ、若い子が申し訳ない顔をすると、それだけでその場が申し訳ない空気になって全体の効率が落ちることは知っておいて欲しいです。
それは逆説的に、申し訳ない顔をしないだけでいい簡単な仕事だとも言えます。ただそれだけでその場の雰囲気を活発に保ち、全体効率を底上げすることができる望ましい態度となるのです。
理想的には指導を受けた際に明るい態度を取ることがいいでしょう。そうすれば上司や先輩ももっと軽く指導をしやすくなり、それは自身の成長に資するのですから。
説教なんてくだらないイベントであれば、申し訳ない顔の一つでもして手早く終わらせてしまったほうが良いですが、指導は手早く終わらせてしまうと得るものが少なくなって損です。
明るい態度を取るというのは一見単純ですが、周りのためというわけではなく自身の利得の点からして、とても望ましい姿勢なのです。
余談
まあ、成果物のチェックを真面目にやらない上司や、指導するのではなく怒る上司も居ますが、チェックや指導は上司の職責であり、できていないのであればそれはまさしく仕事ができない人ですので、そういう人とは距離を置いたほうが望ましいです。人として距離を取るというのではなく、ビジネス上での距離感の話です。
余談2
若手の資質や特性に合わせた指導のやり方を模索するのが上司や先輩の仕事です。(自戒)