意味があるからやっているのだ。
若手との雑談
私「アメリカ出張お疲れ、部署へのお土産ご馳走様です」
若手「はい」
私「ちなみに、お菓子はありがたいんけどさ、部員へのお土産は個装されたお菓子のほうが配りやすくていいんじゃない?」
若手「それが探したんですけど個装されたお菓子が全然見つからなかったんですよ」
私「知ってる。イジワルだから知ってて言ってる。アメリカで個装のお菓子を見つけるのは至難の業だわな」
若手「それにしても、日本の過剰包装は問題だと思います」
私「まあ、時と場合によるかな。必ずしも悪い側面ばかりではないよ」
包装の是非
日本の食品包装は過剰包装だと批判されることが多々あります。
実際、日本ほど食品を個装する国はあまり無いと断言してもいいでしょう。
ただ、これは何もただ無意味に無駄なことをやっているわけではなく、先日記事を書いた技術の地域性に絡んだ話です。「他国でやっていないから日本でも止めるべきだ」は必ずしも真とは言えません。
当たり前の話として、包装にはコストが掛かります。つまり原価が上がり価格競争力が低下します。そしてビジネスの論理として高い原価は悪です。1円1銭でも安くすることが正義であり、そのために企業は乾いた雑巾をなお絞るように原価低減を行っています。
そんなビジネスの論理の中でも過剰包装と言われるほどの包装が残っているのはやはり簡単な理由で、それに意味があるためです。
見栄えや消費者の要求など食品を個装することには様々な目的がありますが、その最たるものは食品の鮮度や衛生を保つことです。
適切にプラスチック容器で包装された食品は外気や細菌等の影響を受け難く、包装していない食品と比較して明確にシェルフライフ(貯蔵寿命)が伸びます。
つまり食品の個装は食料自給率が低く食料を輸入に大きく依存している日本ならではの、限りある資源を無駄遣いしないための知恵です。鮮度や衛生を保つことは何も贅沢目的に限らず、他国から購入した食品を無駄にしないために行っています。
これは各国のフードロスを比較すれば分かりやすくなります。
国連環境計画(UNEP)の食品廃棄指標報告2021を以前にも記事にしたことがあるので、そこでまとめたデータを再掲しましょう。
フードロスの多さが話題となりがちな本邦ではありますが、実は他国と比較すればフードロスを少なく抑えることができています。その理由の一つが包装というわけです。率直に言って、低温乾燥のヨーロッパの真似をして高温多湿の日本で食品包装を減らそうものなら、増加する食品廃棄はヨーロッパの比ではなくなります。
もちろん包装を減らせばプラスチック使用量の低減には資するかもしれません。しかし食品を無駄にせず世界から飢餓を撲滅するために役立つ行動をするほうが優先順位は高いのではないかと個人的には思います。
プラスチックを減らすためにたくさんの食品を廃棄して今以上に食品を他国から買い占めるのは、なんともはや、本末転倒のような気がする次第で。
結言
大抵の物事には理由があります。
批判的思考は必要ですが、物事を批判してより良くするためには物事の理由を加味した上でその利点を損ねないような対案が必要です。