以前にも取り上げたことがある廃棄物に関する指標と国際ランキングについて、2022年のデータが発表されているため再度紹介いたします。
(Global Waste Index2019の紹介記事)
Global Waste Index(国際廃棄物指標)
Global Waste Index(国際廃棄物指標)は廃棄物処理ソリューションを提供しているヨーロッパのSENSONEO社が発表している指標です。欧州委員会、OECD、世界銀行の統計データを参照して各国のごみの量と処理方法を集計し、各国のスコア付けと国際ランキング作成が行われています。
まずは2022年のデータとランキングを見てみましょう。表に記載しているそれぞれの質量[kg]は各国の一人当たり発生量(処理量)です。
※信頼できるデータのみが使用されており、有機廃棄物の堆肥化量など一部にデータ抜けがあるため、発生量と処理量の合計値は合わない
2022年の発表では2019年の時と同様、韓国が世界1位となっています。続いて上位10位までを挙げると、デンマーク、ドイツ、スイス、フィンランド、ノルウェー、日本、オランダ、スウェーデン、ルクセンブルグです。
日本は2019年の発表では3位でしたが、2022年は7位まで順位が落ちています。
採点基準
具体的な話をする前に採点基準について整理しましょう。
[廃棄物発生量]
一人当たりの質量が多いほど減点(0~5点)
[リサイクル]
一人当たりの質量が多いほど加点(0~6.6点)
[焼却]
一人当たりの質量が多いほど加点(0~1.6点)
[埋め立て]
一人当たりの質量が多いほど減点(0~5点)
[不法投棄]
一人当たりの質量が多いほど減点(0~10点)
[その他の廃棄物]
一人当たりの質量が多いほど減点(0~10点)
それぞれの項目に対してスコア付けがされた後、最終スコアは一番低い国が0点、一番高い国が100点となるよう標準化されています。
各項目で加点・減点の重み付けがされています。焼却よりもリサイクルが良いとされており、埋め立ては望ましくないが不法投棄よりもマシだとされています。この採点の重み付けは2019年と2022年で異なります。
2019年と2022年の日本の比較
まずは日本の順位がなぜ落ちたのかを見ていきましょう。
2019年と2022年の日本の一人当たりゴミ発生量(処理量)を下表で比較します。
ごみの発生量は減っており、それに合わせてリサイクル量や焼却量、埋め立て量も減っています。若干リサイクル率が下がっていますが、ほぼ変化はありません。
よって日本の順位が低下したのはごみの量が増えたり何かしらの問題が起きたのではなく採点基準の変化によるものが大きいと判断します。
2019年に比べて2022年はリサイクルをより高得点にするよう採点基準が変化しました。細かい数字を出せば、焼却の採点幅は[2019:0~1][2022:0~1.6]であり、リサイクルは[2019:0~4][2022:0~6.6]です。そのためごみ処理量に変化が無くともリサイクル量の多い国のほうが2022年は相対的に高スコアとなります。
日本は他の上位の国々と比較してリサイクルが少なく、多くは焼却されています。そのため、日本の廃棄物排出量は減ったものの順位は低下したのだと考えられます。
日本と他国の比較
ランキング上位の国々と比較すると、日本の廃棄物処理には次のような特徴があります。
■廃棄物発生量は少なく、上位10国のうちでは1位、38国全体でも3位
■リサイクル率は低く、上位10国のうち最下位
■多くのゴミを焼却しており、焼却率は上位10国のうち1位
■埋め立て量は少なく、スイスに次いで2位
総評として、日本はゴミの量が他国と比して少なく、適切に焼却処理を行えている国だと言えます。但しリサイクル率が低いことが欠点です。
SENSONEOの見解紹介
最後に本指標に関するSENSONEOの見解を抄訳して紹介します。
■リサイクル神話
プラスチック廃棄物の高いリサイクル率は誤解を招く可能性がある。この数値はリサイクル工場に到着する廃棄物の量を表しているが、実際には全てがリサイクルされているわけではない。
最終的に再利用されるのは一部であり、残ったものは焼却されている。
(中略)
リサイクル率は誇張されている可能性があり、「Global Waste Index」は世界最大の廃棄物排出国の単なる一指標に過ぎないことを強調したい。この指標で良いスコアを取ったからといって、その国の廃棄物管理に改善の必要が無いとは言えない。
最優先すべきは、廃棄物をできるだけ出さないことである。
結言
SENSONEOの見解からすれば、世界でもトップクラスに一人当たりのゴミ排出量が少ない日本(336kg)はそこそこ評価されても良いのではないかと考えます。
参考として、一人当たりゴミ排出量の世界平均は527kgです。ワースト上位はデンマークの845kg、アメリカの811kg、ルクセンブルクの790kgと、日本の倍以上です。
もちろん上には上がおり、コロンビア(243kg)やコスタリカ(266kg)に比べれば日本はまだ多いとも言えますので、今後も改善は必要です。
また、リサイクル率についても見直して改善する必要があるでしょう。