当ブログでは国際的な団体の統計データや国際ランキングを時々紹介しています。様々な国際統計やデータ群を見ることが私の趣味の一つであり、せっかく見たものは誰かに紹介したいという気持ちがあるためです。
また何かしらを客観的に比較する際は定性的な情報ではなく定量的な情報を用いるべきだと考える技術屋の職業病でもあります。
定性的と定量的
定性的とは測定して数値化できないものを意味し、定量的とは数値化できるものを意味します。
例えば重さ、何かしらを持ち上げた際にそれが「どの程度重いか」を感覚的に表すのが定性的で、「具体的に何kgの質量を持っているか」を測って数値で表すのが定量的です。それがどの程度重いと感じるかは個々人の筋力と普段持つものの違いによって評価が変わるのに対して、測定可能な質量は個々人の感性から分離された具体的な数値として表すことができます。
定性的な情報は個々人の主観によるものであり、物事それ自体を客観的に比較する際には不適です。
もちろん定性的な情報が不要というわけでは決してありません。個人の範囲においては定性的な情報のほうが重要な場合も多々あります。
例えば10kgの荷物が「重い」と感じる人もいれば「軽い」と感じる人もいるでしょう。しかし本人にとっては他者がどう感じていようと自身が感じる定性的な重みのほうが重要な情報です。何事も定量的であればいいというわけではないのです。
社会人として身近な例とすれば、ストレスや労働時間なども同様です。それにどこまで耐えられるかを考える上において定量的な多寡はまったく意味のある情報ではなく、それは定性的な個人のキャパシティに依存します。
つまるところ、定量と定性、これらは時と場合に応じて使い分けが必要だということです。測定困難な個人の心労や苦痛を定量的な代用測定値で推し量るべきではありませんし、他者と共有すべき情報を主観的な定性値で比較すべきではありません。
もっと単純化して言えば、主観の比較は定性的、客観の比較は定量的な情報を用いるのが良いでしょう。
私が定量的なデータで比較する理由
そういった使い分けの観点からして、日本と他の国を客観的に比較するのであれば定量的な情報、つまり国際的な統計データを用いるのが適しています。
ただ、これは個人の気持ちを否定したいわけではないことをご理解いただけると幸甚です。「日本は凄い、良い国だ!」と思う気持ちも「日本は駄目だ、悪い国だ!」と思う気持ちも個々人の感性と環境によるものであり、それは定性的に取り扱うべき部分だと思っています。
前述の例に挙げたように、主観に対して客観を押し付けることは無意味です。
「残業が辛い」
「何を言ってるんだ。君の残業時間は他の人よりも少ないし、過労死認定される残業時間には到達していない、客観的に見て君の残業時間は問題ない範囲なのだから辛いはずがない」
なんて話は馬鹿馬鹿しいでしょう?
他の人がどうであろうと、平均値や中央値がどうであろうと、個人の感情は個人の主観によって比較測定されるものなのですから。
それと同様に、「日本が良い/悪い」と思っている方に対して数値データを提示してその気持ちを否定したいわけではありません。私はただ、人の主観をどうこうしたいわけではなく、技術屋の職業病的な感性として客観的な比較を見たいだけなのです。
日本の特殊性
ここからは主観の話、定性的な話をします。
正直なところ、様々な分野での統計情報・国際ランキングを見ていくと、客観的な数値としての日本の特殊性はさほどないと感じています。「日本は凄い!」と言えるほど上位ばかりを取っているわけでもなければ、「日本は駄目だ!」と断定できるほど下位にばかりいるわけでもありません。各ランキングが評価している様々な側面に対して、日本は上から下まで様々な順位に位置しています。
つまり、シンプルに言えば普通の国です。
もちろん個別に見ていけば良いところも悪いところもあります。そしてそれがまさに普通です。ありとあらゆる側面で完璧な国家なんて存在しておらず、あるランキングでトップの国が別のランキングでは下位にいることだってあり、それが普通のことなのですから。
結言
繰り返しとなりますが、データを示す記事を書くことで個々人の主観を否定するつもりはありません。私がデータを示す目的はただデータを示したいというだけなのです。そのデータのどこをどう重視するかは人それぞれであり、それは数値で比較する意味はないのですから。
それこそ極端な例として、例えば各国の軍事力を比較するデータがあり、日本がそれで低かったとします。
しかしその同じ数値を見ても「軍事力が低いのは良い国だ」と思うか「軍事力が低いのは悪い国だ」と思うかは個人の感性によるでしょう。良い/悪いの評価基準からは主観を取り除けない以上、他者と比較する意味も、評価基準の優劣を付ける意味もないです。
つまり、まあ、様々な統計・ランキングを見ている限り、日本は苦手なところも得意なところもある普通の国だな、というのが私の主観的な感想です。凄いと言い切るほど、もしくは駄目だと言い切るほどに目立った特殊性はないように感じています。