忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

一つのことに熱中できる人を尊敬している

 好奇心には主に二つの種類、拡散的好奇心特殊的好奇心に分類されます。

 色々なことを知りたいと横に広がっていくのが拡散的好奇心であり、あることに対して深く知りたいと縦に伸びていくのが特殊的好奇心です。

 そんな、好奇心と、尊敬に関する小話。

 

好奇心の種類と知識の特性

 好奇心に関しては以前の記事でも取り上げたことがあります。

(好奇心に関する記事)

少し古いですが、心理学者のD.E.バーラインによる分類では2つのタイプがあるとされます。

 ◆拡散的好奇心(色々なことを知りたいという、横に広がる欲求)

 ◆特殊的好奇心(知識と理解を深めたいという、縦に伸びる欲求) 

拡散的好奇心とは子どもが持つような、知らないことを知りたいという欲求です。子どもは大人に比べて拡散的好奇心が旺盛です。何せ大人よりも見知ったモノが少なく、世の中は知らないことに満ちているからです。対して特殊的好奇心は横では無く縦に伸びる深掘りの欲求です。

 

 拡散的好奇心の赴くままに様々な知見を仕入れる博覧強記な人も良いですし、特殊的好奇心に従い一つのことに熱中し誰にも負けない知見を身に着ける一意専心な人も良いでしょう。どちらが偉くどちらが優れているということではなく、前者はジェネラリスト的であり、後者はスペシャリスト的であるというだけで、ベクトルの違いがあるだけです。

 

 そもそも知識は重力場のような特性を持ちます。

(画像引用元:重力場 - Wikipedia)

 ある事象や学問について知見を深めた場合、その周辺分野についても巻き込まれるように知見を得ることができるものです。

 つまり一つ専門的な深さを持っていればそれを応用して他分野を学習する際の足掛かりにすることができますし、複数の深さを持っていればその中間にある分野についても学ぶことなく一定の深さを得ることができます。

 これを逆に言えば、ただあちこちを浅く齧っただけでは周辺分野を巻き込むほどの深さにはなりません。また一つしか深さを持っていなければその周辺分野しか分からない専門馬鹿になってしまいます。

 よって広く深い知見を持ちたいのであれば、いくつか異なる分野において複数の深さを持つことが望ましいと考えています。

 

特殊的好奇心が強い人を尊敬している

 私は技術屋であり、技術屋はスペシャリストであることを強く求められる仕事です。よって理想的には特殊的好奇心を強く持つ必要があります。

 しかし当ブログを見ていただければ分かるように、私は毎日異なる話題について好き勝手に語っており、私の好奇心は明らかに拡散的好奇心が優位です。

 それに劣等感や負い目を感じているわけではありませんが、自分が持っていないものを持っている人はやはり尊敬に値しますので、特殊的好奇心が強い人を私は尊敬しています。一つの物事を深く追い続けられるというのはそれだけで一つの才能だと思っているほどに。

 

 拡散的好奇心が優位な性格であることは若い頃から自覚的でした。

 教授からは大学院への進学を進められていましたが、正直なところ研究職とは相性の悪さを強く感じていたため、大学院に進んで研究をすることはさっぱり眼中にありませんでした。毎日同じことについて考えて一つのことに熱中して研究をするなんて、私にはとてもとても出来ません。

 

 研究屋と設計屋の違いを大雑把に言えば、一つの分野について世界で一番を取るほど深く考えるのが研究屋、数十の分野を幅広く理解していくつかの分野である程度深い専門性を持っていればいいのが設計屋です。

 私の適正は明確に設計屋にあったことから、端から研究職は選びませんでしたし企業に入社後も研究部署ではなく設計部署を選びました。

 

結言

 工学では様々な分野の知見を組み合わせることが必要であり、拡散的好奇心の強い私はむしろ強い適性があると自負しています。

 仕事が好きで、その仕事に適性がある状態、これに不満を持つのは贅沢というものでしょう。

 ただ、選ばなかった道、ひとつの事に熱中できる人のことを思うと、選ぶ気も無かったくせに何を言っているんだという話ではありますが、少しだけ憧憬を感じるのもまた事実なのです。