忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

設計屋は社会の縮図のど真ん中、だからこそ面白い

 技術屋とは単純に言えば技術で飯を食っている人のことを指します。

 公共で語る際は技術屋ではなく技術職と呼んだほうがいいかもしれません。金や利権を得ることに熱心な悪い政治家のことを政治"屋"と呼ぶように、"屋"という俗称は軽蔑の意味を含んでいますので。まあ、私は自身が技術職の人間なので謙遜と自嘲を込めて技術"屋"と呼んでいますが。

 今日は技術屋に関する特に面白みの無い雑談記事です。

 

技術屋の種類

 技術とはすなわち知識です。ものづくりに携わる仕事の中でも実際に手を動かして物を作る職人さんや技能者さんとは少し違い、技術屋は知識を活用することがお仕事です。

 ものづくりには様々なプロセスがありそれぞれに必要となる知識が異なるため、技術屋と一口に言っても幅広い種類があります。例えばハード系であれば大まかに研究・開発・設計・生産技術のように分類することができます。ソフト系はもっと細分化されているようですが私は機械屋なのであまり知らないです。今日はハード系の話だけをします。

【研究】はまったく新しい技術を研究する仕事です。大雑把に言えば10年後商売になりそうなことを考える仕事です。

【開発】は研究によって手に入れた技術を応用して新製品を考える仕事です。大体5年くらい先の飯の種を作る仕事です。

【設計】は開発が考えた新製品を量産できるように直したり、既存製品を改良したりする仕事です。概ね1年後に売れるものを作る仕事です。

【生産技術】は製品を量産する工程や設備を作る仕事です。明日売るものをちゃんと作れるようにする仕事です。

 組織の規模によっては兼任であったりもっと細分化していたりといった違いはありますが、大体はこのような区分です。

 【設計】と【生産技術】は製品を生産する工場の近くや内側に置き、【研究】と【開発】はR&D部門として生産部門からは分離している会社が多いかと思います。

 私はこの分類で言えば【設計】に所属しています。つまり私は設計屋です。

 

上流・中流・下流

 製造業ではものづくりのプロセスを一つの流れとして、上流・中流・下流と各プロセスを表現しています。例えばねじのような要素を作るのが上流、ドアのような部品を作るのが中流、車を組み立てるのが下流となります。もしくは企画が上流、設計が中流、生産が下流です。見る範囲によってどのプロセスがどのあたりに位置しているかを区分しているわけです。

 上下という言葉を使ってはいますが上下関係というわけではありません。ただ、どちらかというと下流のほうが立場が強いです。

 【設計】は実際に手を動かして製品を作る流れとしては上流側ですが、ものづくり全体のプロセスとしてはど真ん中の中流くらいです。よって上流・中流・下流全ての様々な人と触れ合う機会があります。上流と下流はあまり直接的にやり取りをしませんが、中流はどちらともやり取りするのです。

 水が違うせいか、流れの各所に生息している人々は場所によって実に生態が異なっており、多様性に富んでいてとても面白いです。

 上流側の研究・開発をしている人達は理工系の大学を出た人達で、最低でも大卒のバリバリのインテリばかりです。概ね温厚な性格の人が多く、雑談も社会情勢や先端技術についてなど真面目な話が多くなります。

 中流側の設計や管理部門にいる人達は実に多種多様です。大卒もいれば高卒、専門卒もいる、事務職もいれば総合職もいる、フロア全体に響き渡るような大声で電話するおじいちゃんもいればほとんどしゃべらない寡黙な男の子もいる。世間話の好きなおばちゃんもいればやけに仕事の早いお姉さんもいる。一種の人間展示会のような様です。雑談は概ね面白いニュースや衝撃的な話題、芸能や経済情報が主となります。

 下流側の現場、ものづくりをしているラインスタッフには「昔やんちゃしていました、今もちょっとやんちゃしています」というタイプの人、パートやアルバイト、派遣といった人が多いです。真面目な話を世間話でしようものなら顰蹙を買うので、パチスロの勝敗を聞いたり近場の飯屋の話などをしています。

 なんというか、実に社会の縮図という感じです。設計屋はその縮図のど真ん中に位置します。

 

設計は真ん中だからこそ面白い

 研究屋の眼鏡君と現場のあんちゃんはコミュニケーションスタイルも違えばそもそも使う言葉も違う、もはや別世界です。設計屋はそんな違う集団の間で泳ぐ必要があるため、明確に向き不向きがあります。真面目一辺倒なタイプは現場と上手くやり取りができませんし、やんちゃなタイプはインテリとそりが合いません。

 私はそういうのがまったく苦にならないどころかむしろ面白いと思うタイプです。好奇心に不足は無くなんでも興味を持ちますし、知らないことを知るのは楽しいことです。それに元演劇部ですので相手に合わせたペルソナを被るのだって得意です。職業適正で言えばかなり高いと自負しています。ウクライナ問題による経済への影響について話をした後に競馬ですった話を聞いて、芸能情報を仕入れた後に金属卸市況の説明を受ける。そんな脈絡ない日々のコミュニケーションが実に面白いです。

 ちなみに先日はハーゲンポアズイユ流れの式について説明をした後、別の人には分数の足し算を説明しました。さすがに温度差で風邪をひくかと思いました。

 ・・・あ、この駄ブログが脈絡も方向性も無い雑多な記事ばかりになっているのはこんな仕事をしているせいかもしれませんね。という言い訳を思いついたり・・・

 

 

オチ

 以前後輩に言われたことを思い出したのです。

「自分は仕事柄、誰とどんな話題でも話せるよ、コスメとファッション以外ならね」

「ああ、そんな顔してますよね」

 ・・・どういう意味だ、おい。